Amazon、二次創作作家に免罪符と利益を与える「Kindle Worlds」発表

Amazon Publishingがファン・フィクション作家向けの出版モデル「Kindle Worlds」を発表。原作の著作権者から許諾が得られている作品の二次創作作品を販売し、その利益を原作の著作権者とレベニューシェアするモデルとなっている。

» 2013年05月23日 14時30分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 Amazon Publishingは5月22日(現地時間)、ファン・フィクション作家の作品を扱う新しい出版モデル「Kindle Worlds」を発表した。サービスの開始は6月を予定している。

 ファン・フィクションは、日本だと「二次創作」などの言葉が当てられるが、これまで、そうした存在を原作の著作者が許諾することはまれだった。Kindle Worldsはそうした活動に免罪符と利益を与え、かつ原作の著作者に利益還元の道を示している。

 Kindle Worldsは「許諾が取れている作品(これは本だけでなく、映画や音楽、ゲームなども含む)を利用した二次創作作品(主に文字ものが想定されている)をKindleストアで販売し、売り上げは手数料を除き原作著者と二次創作作家の双方でレベニューシェアする」というもの。現時点ではWarner Brosとの契約締結が発表されており、『Gossip Girl』や『Pretty Little Liars』『Vampire Diaries』などの有名作品を基にした二次創作がKindle Worldsに登録することで問題なく行えるようになるという。

 こうした二次創作では原作の尊重と、原作の著者にどう利益を還元するかが常に課題になるが、基本的なガイドラインとしては過度な性や暴力表現を含むもの、人種差別などにつながるような不快な内容、そしてポルノ的な内容はNGで、細部は都度判断、という様子の内容になっている。

 原作の著作者への還元については、実際にどの程度還元されるのかは明らかになっていないが、二次創作作家のロイヤリティーの方は作品の文字数に応じて大きく2つに分けられている。1万ワード以上だと売上の35%が、通常1ドル以下で販売される5000〜1万ワードの作品だと20%だ。なお、Kindle Wolrdsで出版されるものの価格帯は99セントから3.99ドルが想定されている。

 Amazon Publishingは、Amazonが自社で抱える出版レーベル。Amazonは個人出版プラットフォームとしてKDPも用意しているが、それとは別軸で、出版社の機能を内部に複数用意している(これらが販売される際の発行者は『Amazon Publishing』になっていることが多い)。最近では「Little A」「Day One」などのレーベルを立ち上げている。

 そうしたレーベルの拡大と両輪で、長編から短編、あるいは読み切りから連載ものといったユーザーニーズに沿ったコンテンツ作りをさまざまな施策で支援してきた。それは例えば「Kindle Singles」「Kindle Serials」などだが、Kindle Worldsもそうした施策といえる。位置づけとしては個人出版と出版社の中間付近のポジションで一定の質を担保しようとしているように見える。

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