ブクログ吉田氏に聞く「パブー」の今後KDPによる個人出版ブーム、老舗サービスの辿る道は(1/4 ページ)

電子書籍の個人出版サービスであるKindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)が注目を集める中、国内の先駆けと言えるブクログの「パブー」は、いま新たにパブリッシャーとしての道を歩みつつある。パブーを運営するブクログ代表取締役社長 吉田健吾氏に話を聞いた。

» 2013年03月14日 10時00分 公開
[山口真弘,ITmedia]
ブクログ代表取締役社長 吉田健吾氏 ブクログ代表取締役社長 吉田健吾氏

 Amazon Kindle日本語版のサービスインに伴ってスタートした、Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)。自前の書籍をKindleストアを通じて販売できるこのサービスはその料率の高さなどもあって早くから注目を集め、小説では藤井太洋氏の「Gene Mapper」、漫画では鈴木みそ氏の「限界集落温泉」といったベストセラーをこれまでに生み出している。

 電子書籍の個人出版プラットフォームとしては、iPadが登場した2010年にサービスインしたブクログの「パブー」が知られているが、いま「パブー」はKobo、そしてKindleに対するパブリッシャーとして、大きな転換期を迎えつつある。「パブー」の現状、そして今後について、ブクログ代表取締役社長 吉田健吾氏に話を聞いた。

電子書籍の市場が広がっていくタイミングで分社化

―― 前回のインタビューが2年半前、2010年の秋で、当時はまだブクログとして分社化される前でした。分社化されたことで何か大きな変化はありましたか。

吉田 事業的に大きな変化はないですね。ペパボ(編注:親会社であるpaperboy&co.)は元々レンタルサーバから始まっていろいろな事業を手掛けていて、ほとんどがプル型、つまり営業マンを置かずにインターネット上でやっていく形で回してきましたが、ブクログの広告事業では営業的なスタッフが必要になるなど、組織上も違う体制が必要なことが分かってきました。

 ブクログ以外ではJUGEMも広告事業ですが、そちらはアドネットワーク主体で、仕組みで解決できているんですね。ブクログは出版社さんに実際に説明に行くなど人が動くことが多く、ほかにも事業やミッションで異なってくる部分があるかもしれないことを見据えて、電子書籍の市場がこれから広がっていくであろうタイミングで分社化をしたというわけです。

 出版社さんからすると、レンタルサーバの会社と一緒に仕事するというイメージがつきにくいらしいんです。ブクログとの間に入ってくださる広告の担当者や編集の方が社内に説明をする際、何の会社かよく分からないという話があると聞いていたので、ブクログという単位で会社を切り出した方が分かりやすいだろうと。分社化によって、出版社さんから見て「ブクログをやってる会社」「パブーをやってる会社」と分かりやすくなったところはあるかなと思います。

ブクログ ブクログ
パブー パブー

―― 以前のインタビューで、営業を置くスタイルではないという話がありましたが、出版社さんとの付き合いが増えてきたうえで、見直さざるを得なくなったということですね。

吉田 そうですね。ブクログ自体はターゲットが絞れているメディアなので、マスに向けた広告より献本や企画などのプロモーションの場としてご利用いただく方がメリットを提供できると考えています。ですので、「企画を一緒に考える」とか「献本はこうやった方がいい」とか、人が相談に乗れるきめ細かな体制が必要になってくるわけです。社内的には営業ではなくディレクターと呼んでいますね。

―― 献本についてもう少し詳しく教えていただきたいのですが、誰に対する献本ですか?

吉田 ブクログユーザーさん向けです。今だとサイン本のプレゼントなど、3〜4本の企画が走っています。出版社さんからすると、ブクログユーザーへのプレゼントによってブクログの中にレビューが溜まっていきますし、プレゼントの案内自体がメルマガやFacebook、Twitterでも告知されるので、新刊情報に厚みを持たせることもできます。ブクログユーザーさんにも非常に喜んでいただいてますし、それほど高い額をいただいてるわけではないので、出版社さんにも好評です。

―― 出版社から見ると、ブクログは「一緒にキャンペーンを考えてやってくれる会社」「エンドユーザーとつないでくれる会社」という認識なんですね。

吉田 そうですね。献本以外でも、ブクログユーザーさんに書いてもらったPOPを実際の書店に並べる企画や、そのPOPを作家さんと一緒に見に行くツアーをやったりもしています。

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