楽天の子会社であるKoboが電子書籍端末の新モデルを発表。発表会で楽天の三木谷社長は、日本の「漫画」需要に適した新モデルの特長や、今後のコンテンツ拡充の見通しなどを語った。
楽天の子会社であるカナダのKoboは11月1日、電子書籍リーダー「kobo mini」「kobo glo」「kobo arc」の3モデルの国内で発売すると発表した。都内で開かれた発表会には楽天の三木谷浩史社長が登壇。新製品のラインアップに加え、同社が考える製品の優位性や今後のコンテンツ拡充の見通しなどを語った。(関連記事:楽天、Koboの新電子書籍端末を3機種発表――フロントライト付きやAndroidタブレットも)
Koboの日本向け電子書籍サービスは7月19日にスタート。端末第1弾として「kobo Touch」を発売し、電子書籍ストア「koboイーブックストア」をオープンさせた。三木谷氏によれば日本向けサービスの初速は「好調」。Koboは世界各国で電子書籍サービスを展開しているが、日本のユーザーの平均的な作品購入冊数は「世界平均の2倍」(三木谷氏)だという。
こうした中、「日本の方々がさらに気軽に楽しめるように」サービスを進化させると三木谷氏は語る。その施策の1つが端末ラインアップの拡充だ。
kobo gloは、kobo Touchと同クラスの6インチのタッチパネルディスプレイを採用しつつ、解像度はkobo Touchの600×800ドットよりも鮮明な758×1024ドットに進化した。また、フロントライトを搭載し暗い場所でも読めるのが特長だ。寝室や飛行機の中でも、快適に読書ができると三木谷氏はアピールする。1GHzのCPUを搭載(kobo Touchは800MHz)し、端末の反応速度も向上している。さらに、microSDカードスロットを搭載したことで、メモリ容量をユーザーが柔軟に増やせるのも大きなポイントだ。価格は7980円。
kobo miniは5インチのタッチパネルディスプレイを搭載し、「若い女性や子供」にも勧められるコンパクトなボディを採用。CPUは800MHzでmicroSDカードスロットは非搭載と、kobo gloからスペックダウンしている部分もあるが、その分価格は6980円と安くなっている。
カラーディスプレイを搭載するAndroid端末「kobo arc」は、スライドには映されたものの「近日発売を予定している」とアナウンスされたのみで、具体的な発売時期は示されなかった。会場の説明員によると、端末の日本向けローカライズを進めている段階だという。三木谷氏は「タブレット端末と電子書籍端末は別物」という考えで、「電子ブックの中で中核をなすのは白黒端末(電子ペーパー端末)だ」という持論を展開した。タブレット端末は映画や音楽、ゲームなどの用途が中心になるとし、欧米ではそうした使い分けが進んでいると話した。
このほか、アプリを通じたサービスについてもアナウンスがあった。朗報なのが、日本向けAndroidアプリの年内リリースが発表されたことだ。iOSアプリについては時期は明言されなかったものの「近日中に対応予定」と三木谷氏は語った。
koboイーブックストアでは現在、日本語の電子書籍として6万5000冊を配信している。同社はサービスイン時に「3万冊」をうたっていたが、実際には約2万冊しかそろわず、消費者庁から口頭での行政指導を受けていた。このことについて三木谷氏は、「(サービス開始までに準備が)終わるはずだったが、手間が多少かかった。そこはお詫びしなければいけない」と謝罪した。
同社は日本語作品を2012年内に20万冊まで増やす目標だが、達成は2013年にずれこむ可能性もあるという。「あと2カ月で13万5000冊ということになる。大きなかたまりで1万冊・2万冊と入る予定があり、それが上手く入れば年内に達成できる。ずれ込めば1月、2月になる」(三木谷氏)。コンテンツを増やすだけでなく、独占先行配信作品なども積極的に出していく考えだ。
初期のコンテンツ拡充に苦戦したのは、対応フォーマットがEPUBとPDFに限られていたことも影響している。EPUB対応コンテンツを集めることに「手間取ったところは正直いってあった」と三木谷氏は振り返る一方、「現時点では出版社とのコンセンサスはできている。出版社の態勢も整ってきており、これから(EPUBコンテンツが)増えていくと思う」と展望を語った。
kobo Touchは発売当初、PCに接続しなければ端末のセットアップができなかったが、その後PC不要でセットアップできる「Wi-Fiかんたん設定」に対応したモデルが登場。新モデルはWi-Fiかんたん設定に最初から対応し、ユーザビリティを高めたと三木谷氏は説明する。
また、同氏が「最大の差別化」として強くアピールしたのが、kobo gloがmicroSDカード対応を果たしていることだ。日本では「漫画の売り上げが多い」(三木谷氏)が、漫画の電子書籍ファイルはファイルサイズが大きく、端末のメモリ容量を圧迫する。ユーザーが自由に差し替えてメモリを拡張できるmicroSDカードに対応することで、こうした容量の問題を解消できるというのが同氏の主張だ。32GバイトのmicroSDカードに、最大約1500冊の漫画をストックできると三木谷氏は説明する。なお、ソニーの電子書籍リーダー「PRS-T2」をはじめ、microSDカードに対応した電子ペーパー端末は他にもあるが、Amazonが日本で予約を開始した電子ペーパー端末「Kindle Paperwhite」はmicroSDカードに対応していない。
AmazonのKindleが上陸したことで日本の電子書籍市場での覇権争いは一層過熱している。Kindleなどの競合端末に対する優位性を問われた三木谷氏は、国際標準であるEPUB3の採用やデバイスの処理速度の向上、楽天市場との「ポイントを上手く使った」連携などを差別化点として挙げた。さらに、日本の「漫画」事情に合わせたmicroSDカード対応を「最大の差別化ポイント」として再度強調した。
電子ペーパー端末では「漫画を読んでもらうためにはいろんな機能が必要」だと三木谷氏は語る。その1つとしてkobo gloではmicroSDカードに対応し、また解像度の向上やフロントライト対応で漫画が見やすいと同氏は説明する。「kobo gloは漫画を読むのに最適化されている。私も飛行機の中で寝っ転がりながらkobo gloで漫画を読んだが、軽くていい。タブレット端末だと重くて疲れてしまう」(三木谷氏)
「白黒端末(電子ペーパー端末)ではこれまで漫画を意識してこなかった」が、日本向けに漫画が読みやすいカスタマイズを図る、あるいは「日本の仕様を世界基準にする必要がある」とも三木谷氏は語り、「日本が本社がゆえにできることがある」と、日本市場を意識したローカライズに意欲を示した。
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