Kindle Fire HDについて知っておくべきすべてのこと

Amazonが取りそろえたタブレット群は、競合をくすぶらせるに足るだけのデバイスだろうか。

» 2012年09月20日 11時00分 公開
[Sovan Mandal,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 大きくメディアに取り上げられたAmazonのイベントが終わり、われわれがこれから1年ほどをかけて消費するAmazonが取りそろえたハードウェアへの理解は深まった。そのハードウェア――7インチと8.9インチのKindle Fire HD、そしてKindle Fire――は印象的だ。7インチのタブレット領域に留まるのではなくそこからあえて打って出て、ビジネスでも強大なiPadを含む巨人たちへ挑戦するに当たって、Amazonの自信は深まりつつあるという証言を支持するに値する。

 これは重要な問いにわれわれを直面させる。それは「新型Kindle Fireが競合をくすぶらせるに足るだけのデバイスか?」という問いだ。それを以下で明らかにしよう。

Kindle Fire(7インチ)

 初代Kindle Fireはかなりの値引きにより改めて命を吹き込まれた。価格は159ドルに下がり、昨年のホリデーシーズンに世界中のタブレットを求める人々が群がった高品質のタブレットデバイスとしては非常識なほど低価格だ。しかし、今年のホリデーシーズンで低価格のタブレットを購入しようとする人々の注目を引くためにAmazonが当てにしているのは低価格だけではない。

 エントリーモデルの新型Kindle Fireは見た目こそ初代と変わらないが、内部は順当にスペックアップしている。初代と比較して高速のプロセッサ(1.2GHz)を搭載し、RAMの容量は倍増(1Gバイト)し、処理能力が40%増大したという。Amazonはパフォーマンスの改善だけでなく、バッテリーも9時間持つとしている。内部メモリは変わらず8Gバイトで、ユーザー領域として利用可能なのは約5.5Gバイトだ。ただし、無料の無制限クラウドストレージがすべてのAmazonコンテンツに対して提供される。Webへの接続はWi-Fi経由となっている。

Kindle Fire HD(7インチ)

 このデバイスは初代Kindle Fireが鎮座していた場所を明け渡される形で完全に新規開発された。その見た目は、初代よりもやや曲線的だ。爽快なほど新しいが、外観デザイン以外にもわれわれを夢中にさせる新機能がふんだんに盛り込まれている。

 例えば、Amazonタブレット史上、かつてないほど鮮やかな表示の新型HDディププレイはその一例だ。1280×800ピクセル、216ppiの解像度を持ち、この市場領域のリーダーであるNexus 7と同じ。ディスプレイは底面のLCDスクリーンとタッチスクリーン層を密着させラミネート加工することでグレアを抑え、より明りょうでシャープな表示品質を得た。さらに、Kindle Fire HDはより豊富な色調を再現するためIPS技術だけに依存するのではなく、高度分極フィルターをLCDパネルに直接適用することで、より広い視野角を確保しつつ同等の色の深みを維持している。

 このほか、Amazonが大きな労力を費やした機能としてWi−Fi機能が挙げられる。デュアルバンド、デュアルWi-Fiアンテナを搭載し、Amazonによるとインターネットに常にシームレスに接続できるという。同社は今回のモデルがデュアルWi-FiアンテナとMultiple In/Multiple Out(MIMO)技術を搭載する世界初のタブレットだとしており、HDコンテンツのストリーミング時などに優れたパフォーマンスを発揮する。

 このデバイスはTI OMAP4460デュアルコアプロセッサ(1.2GHz)を搭載し、2倍のコアを持つTegra 3と比較して40%以上効率性に優れているという。また、PowerVR 3Dグラフィックスコアを搭載し、より滑らかなパフォーマンスを実現している。

 OSにはAndroid 4.0 ICSを搭載するが、AmazonはこのOSを自社のエコシステムと完全に調和させるために、前回同様OS部分にかなりの修正を加えている。ストレージ容量は16Gバイトまたは32Gバイトで、ユーザーのすべてのコンテンツに対して無料の無制限クラウドストレージが用意される。バッテリーライフは11時間とのことで称賛に値するが、この点について最終的な判断を下す前に実生活下でのテストが必要だろう。

 Kindle Fire HDのもう1つの素晴らしい機能は、より優れた聴体験を実現するDolby Digital Plus技術を利用するデュアルスピーカーだ。もちろん、小さなスピーカーでは極上のオーディオ品質を提供することはできないが、とはいえそれが果たす仕事はかなり上質だ。さらに、2つのスピーカーを搭載することで、Nexus 7の提供する機能よりもずっと優れたものになるだろう。タブレットはminiUSBとmicroUSBをサポートするが、microSDメモリーカードはサポートされない。

 Kindle Fire HDは16Gバイトモデルが199ドル、32Gバイトモデルが249ドルとNexus 7と同じ価格設定だが、内部メモリの搭載量はNexus 7の2倍となっている。

Kindle Fire HD 8.9

 Amazonがより大きなサイズのタブレット領域に初めてターゲットを定めたことで、このデバイスは真の驚きをもたらすパッケージだと考えられているが、Amazonは購入者を十分確保するためにこのデバイスを低価格に設定した。しかし、このタブレットも多くの機能を持ち、全体として魅力的なタブレットを飾るに足る十分な機能を有している。

 8.9インチのディスプレイは1920×1200ピクセル、254ppiの解像度を持つ。新しいiPadの264ppiに対して勝るとも劣らない数値だ。ディスプレイは7インチ機種と同じ技術を利用しており、グレアは減り視野角は広がった。

 タブレットはTI OMAP 4プロセッサ(1.5Ghz)、Imagination PowerVR 3Dグラフィックスコア、1GバイトRAMを搭載し、スムーズなタブレットパフォーマンスを実現している。ストレージオプションは32Gバイトと64GバイトでWi-Fiモデルと4Gモデルの選択肢がある。

 Kindle Fire HD 8.9は7インチ版と共通する部分が多く、デュアルバンド、デュアルアンテナWi-Fi機能、Amazonのエコシステムに最適化されたAndroid 4.0 ICS OSなどが含まれる。また、miniUSBとmicroUSBをサポートする。

 しかし、Amazonが何度も繰り返すのはタブレットの対iPadのコスト効率だ。Amazon 4G版タブレットは年間50ドルのキャリア手数料(追加手数料)を支払うことで、毎月250Mバイトのデータ通信が可能だ。話がうますぎるようだが、落とし穴が存在する。豊富なマルチメディア機能を誇るタブレットデバイスに対して、今日の世界で250Mバイトは取るに足らない。ミュージックビデオを数曲ダウンロードすれば、すぐにそれを超えてしまう。

 それとは別に、タブレット価格は同等のLTE版最新iPadと比較してかなり安いことが分かる。4G版Kindle Fire HDは32Gバイトモデルが499ドル、64Gバイトモデルが599ドル。一方、(より大きなディスプレイを持つ)LTE版最新iPadの32Gバイトモデルが729ドルだ。4Gネットワークの年間手数料が追加で230ドル掛かり、最新iPadの所有コストは年間959ドルとなる。Amazonの場合は400ドル以上安く、デバイス価格が499ドル、キャリア手数料が50ドルで年間549ドルとなる。

 同様に、Wi-Fi版Kindle Fire HD 8.9は16Gバイトモデルが299ドル、32Gバイトモデルが369ドルとなっている。こちらも16Gバイトモデルが499ドル、32Gバイトモデルが599ドルのWi-Fi版最新iPadと比較するとかなり安価だ。最新iPadと比較すると200ドル以上の節約になる。

 新世代のKindle Fireによってタブレット領域全体が再構成されるのは間違いないだろうが、その影響範囲はもう少し様子を見る必要がある。Good e−Readerチームがサンタモニカに滞在した際に収めたこれらのタブレットの実機レビューはGood e−Reader YouTubeチャンネルで確認してほしい。

 なお、米国、英国外に居住している場合、Amazon、Best Buyなど大手小売企業からこれらのデバイスを入手することはできない。われわれの小売WebサイトShop e-Readersなどで入手することは可能だ。

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