Amazon Kindle Fireの実機レビュー(1/2 ページ)

Amazonの「Kindle Fire」は、2011年で最も待望されたAndroidタブレットの1つだ。本稿ではKindle Fireの購入を迷っている方のために、ハードウェア、ソフトウェア、ユーザー体験といった観点から分かりやすい実機レビューをお届けする。

» 2011年11月29日 11時56分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 Amazonの「Kindle Fire」は、2011年で最も待望されたAndroidタブレットの1つだ。発売の数カ月前に情報がリークされてからというもの、人々の注目を集め続け、発売された今、1台手に入れようとする人が大挙している。

 1カ月無料のAmazon Primeのメンバーシップを付けるなど、Kindle Fireを購入させる後押しとなる数多くの特典を用意しているAmazon。本稿では、Kindle Fireの購入を迷っている方のために、ハードウェア、ソフトウェア、ユーザー体験といった観点から分かりやすい実機レビューをお届けする。

ハードウェア

 Kindle Fireは表面パネルにゴリラガラスを採用した7インチのタブレットで、画面解像度は1024 x 600ピクセル。頑丈なゴリラガラスのおかげて、不意に地面にデバイスを落としてもへこんだりせず、高い耐衝撃性を備えている。YouTubeなどで検索すれば、さまざまな衝撃を無傷で跳ね返すゴリラガラスの耐衝撃性を示す動画が多数ヒットするだろう。

 CPUにはデュアルコアの1GHz CPU(OMAP 4430)を、RAMは512Mバイトを搭載する。メニュー操作や動画の再生、Webブラウジングなどはスムーズだ。Kindle FireをBarnes & Nobleの「NOOK Tablet」と比較した際、当初Kindle Fireは失敗作で処理が遅いのではないかと心配していたのだが、それは杞憂で、Kindle FireはNOOK Tabletとの比較検証においてほぼ互角の性能を示した。

 ところで、筆者はタブレットのオーディオ機能を比較的軽視している。Barnes & Nobleの「NOOK Color」などに代表される一般的な電子書籍リーダー端末では、本体底面、または背面下にスピーカーを配置することが多い。しかし、これでは手がスピーカーを遮ってしまう。また、背面を下にしてタブレットを置くと、音の広がりもなくなってしまい、非常に残念な思いをすることになる。しかし、Kindle Fireはステレオスピーカーを本体上部に搭載しており、筆者はこれがとても気に入った。オーディオ機能について言えば、Kindle FireはNOOK ColorやAppleの「iPad」を完全に打ち負かしている。

 Kindle Fireのハードウェアデザインはかなりシンプルで、MicroUSB、電源ボタン、3.5mmヘッドフォンジャックといったポートのみ備えている。ボリューム、設定、ページ送りなどの機能の大部分はすべてソフトウェアベースになっている。これによりデバイスは軽量化され、薄く仕上がっている。

 全体的に、Kindle Fireは洗練されていて、ピアノブラックのボディカラーも人目を引く。ポートレート(縦長)モードからランドスケープ(横長)モードの切り替えもiPadより早く、これまでレビューした8割方のタブレットより反応がよい。Kindle Fireは見た目の美しさだけで多くの人の心をとらえるだろう。

ソフトウェア

 Kindle FireのOSはAndroid 2.3にカスタマイズを加えたものを採用している。OSのカスタマイズは細部に及び、高速なパフォーマンスに寄与しているだけでなく、バッテリーの持続時間やセンテンスのハイライト機能など多岐にわたる。

 AmazonはGoogleが考えるAndroid体験を排除し、独自の特色あるユーザーインタフェースを移植し、自社のブランドによりよく統合するよう全体を構成している(Barnes & NobleがNOOK Colorでそうしたように)。企業が自社のガジェットをユニークだと感じさせる取り組みに注力するのはよいことだ。

 ホーム画面はユーザーが開いた最新の10項目を疑似3Dのパノラマ式スライドショーで表示する。電子書籍だけでなく、Webサイト、コミック、動画、音楽などが混在する形で並び、いずれも中断したところにすぐに戻ることができる。

 書籍やAndroidアプリの購入画面などでは、スクリーン下部に常にホームアイコンが表示され、異なる表示オプションが選択できる。アイコンサイズの変更やリストビュー表示はここで選択できる。

 ホーム画面上部にはタブ形式のナビゲーションバーが用意されており、「Newsstand」やライブラリー(本棚)である「Books」、「Music」「Video」「Docs」「Apps」「Web」などのセクションが並んでいる。Booksには幾つかのサンプルとユーザーガイドがプリインストールされているが、MusicやVideoのセクションにはそうしたプリインストールコンテンツは用意されておらず、購入するか手動でロードする必要がある。そのほか、Facebookや電子メール、連絡先、Pulse、Quick Office、IMDBなどユーザーのニーズが高そうなアプリはあらかじめバンドルされている。

 Kindle Fireの特徴は、コンテンツの購入がAmazonのエコシステムと密に統合されている点だ。音楽やオーディオブック、動画やテレビ番組などもこのエコスステムから購入できる。ほかのタブレットだとHulu+やNetflixといったサードパーティーのアプリでこれらのコンテンツを供給しているのだが、Amazonはそうしたものに頼らずとも、直接販売できる十分なコンテンツを持っている。

 AmazonのアプリストアはKindle Fireの発売に合わせて刷新され、レイアウト全体の見直しが図られ、Kindle Fireに最適化されたデザインとなった。アプリの検索は非常に楽で、ユーザーが探したいジャンルへ導くサブメニューが存在する。アプリストアは売り上げトップの無料および有料アプリが並ぶのはAppleのApp Storeと同様だ。売り上げトップ30がトップダウン形式で紹介され、スクロールしなければならないこともある。現在、同社のアプリストアには1000個以上のアプリが並ぶが、中でも注目は「当日無料アプリ」だろう。毎日、Amazonは特定の有料アプリをその日限りで無料提供しており、ユーザーの来訪を促している。Angry Birdsなどの人気アプリも提供され、価格は0.99ドルから10.00ドルで入手できる。

 こうしたAmazonのエコシステムが抱える問題の1つは、動画や音楽、アプリの購入は米国居住者に限定される点だ。米国外のユーザーは、自分でこれらのコンテンツを端末にロードする以外の供給手段を有していない。筆者はカナダに居住しており、われわれの会社のアカウントは米国の請求先および出荷先住所と米国のクレジットカードを利用しているのだが、AmazonはIPアドレスでブロックしているようで、ダウンロードは行えなかった。

 

 こうした問題は、「HIDEMYASS」のようなVPNサービスを利用し、IPアドレスを米国のものに変更することで多少手間は掛かるとはいえ一応は回避でき、米国外でもKindle FireとAmazonのエコシステムを活用できる。ただ、願わくば、Amazonはこのエコシステムの対象リージョンを拡大してほしいところだ。

 次に新機能の1つであるSILKブラウザ。これはユーザーが頻繁に利用するWebサイトをチェックし、ページをキャッシュすることで、高速にロードするというもの。Kindle Fireはネットワーク環境がWi-FIだけなので、Wi-Fiエリア間を移動している間に新たなWebページが常に読み込み可能になっているというのはうれしい。また、ささいなところでは、Webブラウザにタブがあるのもよい。タブ間の切り替えはシンプルで、かつ、適度に大きいのでタブを押し間違えることもない。ブラウザの設定メニューには多くのカスタマイズオプションが用意されている。Flashもサポートされており、Youtubeなどは比較的高速にロードされるし、HD動画をフルスクリーンで楽しむこともできる。

 最後に、Kindle FireのキーボードはAndroid OSを搭載するほとんどの電子書籍リーダーとタブレットのハイブリッドデバイスの中で最も高速かつきちんとレイアウトされたものの1つだ。フルのQWERTYキーボードを持ち、@のような一般的なシンボルを入力するためのオプションも存在する。Amazonはタイピングをより簡単に行えるようキーボードをカスタマイズしたようで、タイピングの即応もよい。小さなキーボードが苦手な筆者も、Kindle Fireのキーボードは苦にならなかった。

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