7月2日、晴天に包まれたこの日の東京ビッグサイトで、国際電子出版EXPO/国際ブックフェアが開催された。基調講演が行われているのと同時間帯に、KADOKAWAがTwitterとの協力で、Twitterのタイムライン上で電子書籍が読める世界初のサービスを発表した。
Twitterのタイムライン上で電子書籍(EPUB)を閲覧できるようにするこの取り組みは、角川アスキー総合研究所がTwitter Japan協力の下で開発したもの。タイムラインに埋め込めるEPUBデータはサービスドメイン「tw-epub.com(Tw-ePub)」上にあるものが対象となる。月内をめどに、サイトへの埋め込みやページを指定した共有も可能にする予定だという。
EPUBビューワはいわゆるブラウザビューワが使われているとみられるが(jsファイルをみると『Light Epub Viewer』という名前になっており、それがMITライセンスであることが分かる)、今回の発表では、これを両社が開発したとされている。
Twitter側ではTwitter Cardの機能を拡張して対応しているが、これはKADOKAWAとの明確な形での独占的な取り組みではないが、ほかの国での展開はこれからニーズを踏まえて検討するとしている。
Twitterを通じて簡単にEPUBを公開できるこの技術により、電子書籍市場の発展と国内文化の海外展開を促進することに活用できるとしており、現時点で既に2万点(KADOKAWA作品以外も含む)を超える作品の掲載依頼があるが、特定出版社に限らずオープンに利用できるサービスにしていく考えだという。将来的には、という前置きはあるが、一般ユーザーにこれを解放する考えも示された。
読者とどう共有していくかが21世紀の出版に求められる
発表会に登壇したKADOKAWA取締役会長の角川歴彦氏は、この日の発表を「胸がワクワクしている」と話し、21世紀の本の読み方はどうなるのか、電子書籍がどんな革新的な方向を示すのかを考え続けてきたと紹介。
その前に、現代ではどの程度な人が書籍を購入しているのかという問題意識から、角川アスキー総合研究所で調査をしてみたところ、年に1回未満、つまり本をほとんど買わない人が約50%だったこと、そして、電子書籍は買わない人の方が全体の91%だったとする結果を紹介。しかし、インプレスビジネスメディアが先日発表した「電子書籍ビジネス調査報告書2014」から電子書籍市場の規模を紹介し、(電子書籍を購入している)9%でこれだけの市場規模になっているとした。
そうした中で、今回発表したTwitter上での電子書籍の試し読みを可能にする仕組みを通じ、読みたくなる、買いたくなる読書体験をソーシャルで共有することがこの取り組みのチャレンジングな部分であると角川氏は話す。
角川氏は制作側のマインドにも言及。「(編集者または出版社が)納得した本をつくるだけでよい時代は20世紀で終わった。これからはどう読んでくれる人を増やすか、読者とどう共有していくかが21世紀の出版に求められる」と話し、KADOKAWA流ソーシャルリーディングと表現できる今回の取り組みについてその重要性を説いた。
その上で角川氏は、このサービスを出版界全体にオープンに提供したいと述べ、出版デジタル機構も同サービスへの参加を前向きに検討しているとした。ただしその後の質疑応答で、先日出版デジタル機構の代表取締役社長に就任した新名新氏が質問を投げかける場面もあった。
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