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E Ink RegalとCartaの真実

電子ペーパーはもう終わった――そんな声が少し前にはささやかれていたが、技術革新が進み、息を吹き返しつつある。ここでは、2013年時点の電子ペーパーを概観してみよう。

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 9月4日、E InkはCartaと呼ぶディスプレイ技術を発表した。E Ink Cartaディスプレイは新配合、新技術ベースの電子インクを採用し、前世代のE Inkディスプレイに対してコントラスト比で50%、反射率で20%アップしており、いちじるしく向上した読書体験を提供する。

 Cartaディスプレイは双安定電子ペーパー技術を利用しており、従来のE Inkディスプレイと同じく消費電力は極端に少ないが、過去最高のコントラスト比を誇る。新型KIndle PaperwhiteはCartaを採用しているが、電子読書業界にとってPearl、Mobius、Cartaが意味するものとは何だろうか。

 これから、あまりなじみのない用語が幾つか登場するかもしれない。以下は商業的に成功した電子書籍リーダーのほとんどで利用されている電子ペーパーを概観する。

 Pearlはここ数年来、デファクトスタンダードとなっているディスプレイだ。kobo glo、Kindle 4、NOOK、ソニーはすべて自社の過去数世代の電子書籍リーダーにこのディスプレイを利用している。この技術は現在やや旧型化しており、1024×758ピクセルの解像度を持つPearl HDが取って代わっている。

 E Ink Mobiusは数カ月前に発表され、より軽量で頑丈な製品開発を可能にするTFT(薄膜トランジスタ)技術を利用している。Mobiusは同等のガラスベースのTFTより50%以上軽量だ。これはより大型のディスプレイ領域が必要なモバイル製品ではとりわけ重要な技術だ。ソニーのスタイラス入力をサポートする13インチの新型デバイスSlateはこの技術を利用している。軽量・柔軟性に最適化されたディスプレイと考えていただきたい。現在、ソニーは日本での一連のテストでこの技術を利用する唯一の企業だが、テスト状況についてソニー・E Inkのいずれもコメントする予定はないようだ。

 Amazonの新型Kindle PaperwhiteはRegal、Cartaの技術を両方利用している。これによりページ送りが高速化され、ページリフレッシュはこれまで業界標準の6ページごとではなく、章ごととなる。今月末に出荷される新型kobo auraはCartaを採用していないが、RegalのWaveform技術は採用している。Regalは数ページごとに必要とされていたページリフレッシュを劇的に減少させる。これによりページ送りがよりスムーズになり、読書に集中できるのでユーザー体験向上につながっているというわけだ。

 RegalはPearlとCartaに対応するが、Mobiusには非対応だ。これは、Mobiusを利用する電子書籍リーダーはより優れたコントラスト比とリフレッシュレートを利用できないことを意味している。E InkもMobius技術は電子書籍リーダー業界での利用よりはむしろ、サイネージ・ウェアラブルデバイスの領域でより関心を持たれるであろうことを認めている。新型スマートウオッチが間もなく発売されるはずで、長年のパートナーであるセイコーが新製品ラインを開発中とうわさされている。ディスプレイにE Inkを採用した初のスマートフォン、Onyx Android Phoneは10月末に製造に入り、11月末に発売予定だ。

 ここまで紹介していないディスプレイ技術がTriton 2電子ペーパーだ。現在、PocketbookとEctacoの2社のみがこの電子ペーパー技術を利用しているが、標準以下のハードウェアと嘆かわしいソフトウェアのおかげで、Triton 2はほとんど無名に甘んじている。

 このTriton 2はRegalに対応しているのだろうか。対応していれば、確実に安定した電子書籍リーダーを実際に生み出すかもしれない。Triton 2の成功はE Ink側が推奨するハードウェアに掛かっている。E InkはTritonとカラー電子インク技術一般に対する代表的デバイスをまだ生み出せていない。

 現在の電子書籍リーダー業界は流動的で、さまざまなディスプレイ技術が過去4カ月に出現してきている。多くの企業が現在、旧型の技術をベースに新製品をリリースしている。その一例が水死体のような印象すら受けるソニー PRS-T3だ。Wexler、Icarus、Onyx、Bookeenはいずれも来月新型リーダーを発表する。これらの企業は欧州とロシアでの製品展開に集中しており、FCCへの申請をほとんど行わないため、どのような製品を開発中なのか今のところは分からない。

 新型Kindle Paperwhiteは最新世代のハードウェアを利用しており、最新のEPD(マイクロカプセル型電気泳動ディスプレイモジュール)と電子ペーパーディスプレイを利用しているという点で注目すべきデバイスといえる。kobo AuraはPearl HDとRegalの両方を利用しており、徹底的なレビューの結果、現在市場で最も優れたリーダーであることが分かっている。今月末の新型Kindle Paperwhiteの発売後にページ送りのスピード、読書体験、パフォーマンス全体をテストするのが楽しみだ。

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(翻訳責任について)
この記事はGood E-Readerとの合意の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。

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