電子書籍を盛り上げるコミュニケーション――「LINEマンガ」の取り組みを聞く:まつもとあつしの電子書籍セカンドインパクト(2/3 ページ)
2013年、電子書籍は新たな局面に直面していた。そんな変化の最前線を行く人々にその知恵と情熱を聞くこの連載。今回は、リリースから1カ月で100万ダウンロードを突破しさらに突き進む「LINEマンガ」の担当者、村田朋良さんに聞いた。
LINEマンガにおけるソーシャルリーディング
―― KindleやKoboなど主要な電子書籍サービスには、ソーシャルリーディング=他の読者とコメントなどの読書情報を共有する機能が備わることが多くなってきました。LINEマンガはスタンプやトーク、タイムラインでのリコメンデーションで、それをシンプルに実現しているのではないかと感じます。
村田 FacebookやTwitterへの読書情報の投稿・共有は基本的にオープンな「ソーシャルグラフ」に対するものですが、LINEは「リアルグラフ」つまり実際の家族や友人とのつながりがベースになっています。外から見えない、クローズドな場への投稿なので、ソーシャルリーディングと言われるようなコミュニケーションが活発に行われているのでしょう。
―― 確かに、「いまこんな作品を読んでいて、こんな風に感じた」という情報は、かなりプライバシー性の高い情報ですね。
村田 友だちだけでなく、友だちの友だち、あるいはネット全体への共有など公開範囲がさまざまな場への投稿というのは気を遣います。読書情報や感想の投稿に際しては心理的なブレーキが働くことがあるかもしれない。LINEへの投稿はクローズドなメールのやり取りに近いので、送られてくる情報に対しても、安心感や信頼感のようなものがあるのではないでしょうか。
―― 感想やコメントではなく、マンガキャラクターのスタンプによって、LINEでのコミュニケーションの中に自然に読書情報が加わってくるのは画期的だと感じました。このスタンプの利用状況はいかがでしょうか?
村田 毎月4作品前後がスタンプ付きマンガとしてリリースされ、売上・利用状況とも順調に推移しています。新しいスタンプ付きマンガが公開されると、LINEマンガユーザーのアクティブ率も高まりますし、ネット上での言及も増えます。このマンガのこのキャラクターのスタンプが欲しいという声もよく耳にしますね。紙の本は既に持っているけれど、スタンプがほしいので改めてLINEマンガで購入したという声もあります。
外部調査結果によると、国内のLINEユーザーの中で最もアクティブなのは10代〜20代の若年層だという結果が出ており、一般的に電子書籍のメイン層から外れていたのですが、そういったユーザーが積極的に利用している状況がうかがえます。実際のLINEマンガでの売れ筋も、他の(PC・スマホ向け)電子書店に比べると「若いな!」という印象を受けます(笑)。
ARPU(ユーザー一人当たりの月間売上高)も順調に増えています。これまで電子書籍をあまり利用してこなかった方たちが、LINEマンガやスタンプをきっかけにして電子書籍の楽しさや利便性に触れ、継続的に購入を続けて頂いている様子がうかがえますね。
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