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電子ペーパーと液晶、眼が疲れるのはどっち? 検眼医「変わらない」

電子ペーパーは液晶に比べて目が疲れない――こんな都市伝説めいた話について、眼に関するプロフェッショナルである検眼医が興味深い論文を発表した。

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 液晶と電子ペーパー――この2つのディスプレイを巡っては、特に後者の陣営からその優劣を主張する声がこれまで幾度となく挙がってきた。

 この2つのディスプレイ技術にはバックライトの有無など表示原理や特性に明確な違いがあるが、こと「目の疲れやすさ」、言い換えれば「眼精疲労」という視点では、液晶は常に不遇な扱いを受けてきたといってよいだろう。Web上で目にする記事でも、短時間での条件下で比較検証した結果を以て電子ペーパーの方が眼精疲労が少ないとしているものもあるし、そもそも眼精疲労が身体疲労と混同して語られていることも多い。読書デバイスとしてのタブレットやスマートフォンが台頭する中、そしてAmazonが「Kindle Paperwhite」や「Kindle Fire HD」を発表し、いよいよ役者が出そろった今、そろそろ日本でも主観的論争は止め、実データを含む議論で語られるべきだろう。

 では、眼に関するプロフェッショナル、Optometrist(検眼医)は宗教戦争にも似たこの動きをどう見ているのだろうか。それを示す興味深い研究がOpthalmic and Physiological Opticsに9月に掲載された論文で触れられている。これによると、有害なのはディスプレイ技術というよりはむしろディスプレイの低解像度だというのだ。

 この論文はある研究室での調査結果がまとめられたもの。10人の被験者から成るグループが液晶(初代iPad)と電子ペーパー(ソニーPRS-600)のどちらかで数時間読書し、その後、文字検索タスク、読書スピード、瞳孔対光反射といった客観的方法によるテストのほか、眼精疲労と全般的疲労の度合いについて主観的な質問を行っている。

 その結果は、2種類のディスプレイでの読書に大きな差は認められず、それぞれのディスプレイでの読書の影響は主観的尺度、客観的尺度の両方で非常に類似しているとある。眼精疲労に関する質問結果は、液晶ディスプレイの方が若干スコアが高いもののほとんど同じで、読書スピードについては実質的には同一だったという。

 唯一大きな差となったのは全般的疲労。液晶ディスプレイで読書した被験者は電子インクディスプレイの被験者よりも高い疲労度を報告したというが、これはiPadとPRS-600の重量を勘案する必要があるだろう。

 この結果はこれまでの常識を覆すような内容だ。過去の同種の研究とは大きく矛盾している。もちろん、過去の研究も根拠があるものには違いないが、この論文では、過去の研究の多くは最新のテクノロジーを考慮していないことを指摘している。その最たる要素がディスプレイの解像度だというのだ。この論文で用いられたのが新しいiPadのRetina Displayだったなら、さらに論を補強できただろうにとは思うが、ディスプレイの高解像度化はユーザー体験を確実に改善しているようだ。

 新たに出てきたこの研究結果1つを取り上げて、電子ペーパーと液晶に「眼の疲れやすさ」には差がない、とするのは早計だが、現代ではそこに大きな差はないのかもしれない。直射日光下で快適に読書を楽しみたい、などのニーズに合わせて適切な製品を選択したいところだ。

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