教科書では分からない、歴史の面白さを伝えてくれる「歴史漫画」。今回は、数ある歴史漫画の中から、徹夜必至のオススメ作品を選びました。
日本史、中国史、世界史、そして勉強に役立つ学習漫画の4つのカテゴリから厳選した15作品です。記事の最後には「歴史漫画年表」も収録。歴史漫画を網羅したい方は必見です。
歴史漫画、まずは日本編です。今回は飛鳥時代、戦国時代、江戸時代、幕末から、それぞれオススメの作品をピックアップしました。
大化の改新を起こした中大兄皇子(後の天智天皇)と、その弟である大海人皇子(後の天武天皇)の生涯を描く本作。「新説・日本書紀」の副題どおり、従来の概念を覆すような、新鮮な歴史観や人物像が盛り込まれています。
青年誌らしいハードな表現も多いのですが、何と言っても見どころは中大兄と大海人の壮絶な兄弟げんか。冷酷だが精神的に不安定な中大兄と、好青年ながらなかなかの策士である大海人。どこか同性愛的な感情を含んだ彼らの関係を見て、山岸凉子先生の名作『日出処の天子』を思い出す方もいるのでは。
古代史を深く学びたい方にも、ドロドロの愛憎劇を楽しみたい方にもオススメです。
『花の慶次 ―雲のかなたに―』 隆慶一郎・原哲夫・麻生未央/ノース・スターズ・ピクチャーズ
時代小説家として有名な隆慶一郎先生の『一夢庵風流記』を原作に、『北斗の拳』の原哲夫先生が漫画化。
主人公は「傾奇者(かぶきもの)」と呼ばれる前田慶次。今でこそ各種ゲームなどに登場し、人気を博している慶次ですが、昔は無名の一武将に過ぎませんでした。そんな彼の知名度を大きく引き上げたのが、この作品です。
主人公の慶次はまさに「男がほれる男」。風のような自由さと、少年のように純粋な心、弱きを助け、強きをくじく男っぷりのよさ……などなど、関わる人間を次々とほれさせていくのもうなずけます。
アクション漫画としての評価も高く、難しい話抜きで楽しめるのも本作の魅力です。
『風雲児たち』 みなもと太郎/リイド社
幕末を生きた風雲児たちを描きたい。そのためには、400年前の関ヶ原から始めなくては……という思いから描かれた本作は、1979年の連載開始から30年たった今も連載が続いている長寿作品です。2010年に『風雲児たち 幕末編』が、第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・優秀賞を受賞したことでも話題になりました。
ギャグ漫画らしく、笑えるシーンが盛りだくさんなのですが、本作の凄さはその深い歴史観と、キャラクターの魅力にあります。教科書に出てきた人物も多く取り上げられるのですが、一人一人がみな、血の通った人間として描かれているので、無味乾燥な「歴史の勉強」とは全く異なる感覚で読み進めることができます。
一見すると関係なさそうな出来事が、実は大きな歴史の流れに大きく関わっている……という新鮮な驚きを与えてくれる本作。歴史好きの方には、ぜひ読んでもらいたい作品です。
『大奥』 よしながふみ/白泉社
2010年に二宮和也・柴咲コウで実写映画化、2012年に堺雅人・菅野美穂で実写ドラマ化&映画化された本作。
作者のよしながふみ先生は、『西洋骨董洋菓子店』や『きのう何食べた?』などでも有名ですが、もともとはBLを中心に活動されていました。昔から、お話作りの上手さに定評がある漫画家さんですが、本作でもそのストーリーテラーぶりを遺憾なく発揮しています。
独自の解釈を交えつつも、基本は史実に忠実。ただ、「もしも徳川将軍が男ではなく女だったら」という大きなうそを一点紛れ込ませることで、今までわたしたちが知っていた歴史というものを、鮮やかに塗り替えてみせる……その手腕はまさに見事の一言です。
為政者として生きねばならない女の苦悩と悲哀、そして、それを支える男たちの思いなど、登場人物の心情を繊細に、ドラマティックに描いているのも本作の特徴。
現在も『MELODY』にて絶賛連載中の本作は、卓越した人間ドラマを味わいたい方におすすめです。
『アサギロ〜浅葱狼〜』 ヒラマツ・ミノル/小学館
『ゲッサン』にて現在も連載中の本作は、新選組を主軸とした群像劇です。近年は乙女ゲームや少女漫画などでも取り上げられることが多い新選組ですが、本作はあくまで硬派。史実をベースに、歴史ファンが楽しめる上質のエンタメ作品に仕上げられています。
主役は沖田総司となっていますが、他の新選組メンバーも決して脇役に回ってはいません。器の大きさと並外れた度量を感じさせる近藤勇や、涼やかな美形の土方歳三など、新選組の中核をなすメンバーの存在感が素晴らしく、彼らが今後どう活躍していくのか、続きが待ち遠しくなるはず。
また、画力と構成力の高さも本作の魅力。少し独特な絵柄ですが、剣術のシーンなどは圧巻の迫力。骨太の歴史漫画をお探しの方に、ぜひ読んで欲しい作品です。
中国史といえば、やはり三国志のイメージが強いですが、『キングダム』をはじめとした春秋戦国時代を扱った作品も負けてはいません。ここでは、その2つの時代を扱った作品をご紹介します。
『キングダム』 原泰久/集英社
舞台は中国・春秋戦国時代。戦乱の世を終わらせ、中国を統一するという目的を掲げる政(後の始皇帝)と、低い身分でありながらも、大将軍になるという野望を胸にまい進する信の物語。
主人公が己の才覚のみを駆使し、底辺からのし上がっていくという、成長ドラマ的な面白さはもちろん、本作の一番の魅力は、個性的すぎる登場人物にあります。まず、どの人物もみんな「濃い」! 勧善懲悪などありえない戦乱の世だからこそ、誰もが己の信じる道を目指そうとします。熱い魂を秘めているという意味では、敵も味方もみな同じ。徹底して「人間」を描いているからこそ、彼らの生や死がリアルな実感を伴って胸に迫ります。
また、迫力ある戦闘シーンや、ピンチからの逆転劇など、単純にわくわくするシーンも盛りだくさん。テレビ番組「アメトーーク!」の「キングダム芸人」でも取り上げられ、ますます熱い盛り上がりを見せる本作は、現在も『週刊ヤングジャンプ』にて連載中です。
『赤龍王』 本宮ひろ志/サード・ライン
四面楚歌の故事でも有名な「項羽と劉邦」の戦いを『サラリーマン金太郎』の本宮ひろ志先生が描いた本作。史実に忠実ながらも、本宮先生らしい「熱い」男たちの描写が胸に迫ります。
百姓育ちであり、粗野でがさつだが、器の大きさとカリスマ性を感じさせる劉邦。卓越した武力と冷酷さを持ちながらも、妻・虞美人に対する真摯(しんし)なまでの愛が胸に迫る項羽。この項羽の存在こそが、この作品の魅力でもあります。『北斗の拳』のラオウのような悪の魅力と言えば分かりやすいかと思いますが、最強であるがゆえの孤独や悲哀を秘めたその姿は、まさに男がほれる男。
ほかにも、劉邦を支える軍師・張良や、天才兵法家・韓信など、魅力的な脇役も大勢出てきます。虞美人を巡る三角関係は、女性もグッとくるかも? 全9巻、完結済です。
『蒼天航路』 王欣太・李學仁/講談社
三国志といえば、善玉である「蜀」の劉備が、悪玉である「魏」の曹操と戦う……といったイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。そんな従来の三国志のイメージをくつがえし、曹操を主人公に据えた本作は、「正史」(※三国志には、史実をもとにした「正史」と、大衆向けに書かれた「演義」の2種類があります)をベースとしながらも、作者独自の解釈を取り入れ、新たな三国志を作り上げています。
卓越したストーリー展開、迫力あるアクション描写、巧みな演出など、オススメする理由はたくさんありますが、何より魅力的なのは、その個性あふれるキャラクター! 主人公・曹操の完璧超人っぷりにほれるもよし、隻眼の武将・夏侯惇のおとこ気にしびれるもよし(彼が一兵卒となって戦に出るエピソードは必見!)、天才軍師・郭嘉や荀紣の最期に涙するもよし……。
また、従来はただの「いい人」に描かれがちだった劉備のダメ男っぷりや、悪を極めた末に、王の風格さえ漂わせる董卓など、従来のイメージを覆すキャラ造形も『蒼天航路』ならでは。
全36巻という長編ですが、ぜひ時間を作って読んでいただきたい作品です。
『三国志魂』 荒川弘・杜康潤/コーエーテクモゲームス
『鋼の錬金術師』や『銀の匙 Silver Spoon』でもおなじみ、荒川弘先生が描く三国志4コマがこちら。本作は「劉備や孔明の名前は知ってるけど、三国志についてはよく知らない」「三国志に興味があるけど、長編を読むのはつらい」という方に最適です。
史実のエピソードごとに、右ページに解説、左ページに漫画という構成で進んでいきます。解説も堅苦しいものではなく、荒川弘先生と共著の杜康潤先生の対談形式になっているため、初心者でも面白く読めること間違いなし!
登場人物の多い三国志ですが、本書は各ページの端に「初登場」と「お悔やみ」という欄が設けられており、誰が活躍し、誰が退場したのか、すぐ分かるようになっています。
4コマ漫画は等身低めのギャグ絵ですが、時折挿入される本気の荒川絵が大変かっこいいので、渋いおじさま好きの方にもぜひご覧いただきたいです。
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