コスプレ、特撮、同人……オタクの実態を描いたマンガ10選(1/2 ページ)

夏コミ前にオタクたちが主人公のマンガを集めてみました。オタク文化に興味はあるけれど薄くしか知らない、という人のための用語集つきです。

» 2015年08月13日 12時30分 公開
[ぶくまる]
ぶくまる
コスプレ、特撮、同人……オタクの実態を描いたマンガ10選

 夏本番! 今週末はオタクの一大イベント・夏コミ※1 が開催されますが、参加される方は暑さ対策など万全でしょうか?

 2014年の冬コミ参加者は56万人と、巨大イベントへと発展したコミケですが、その裏にはオタク人口の爆発的な増加があります。今回は、そんなオタクたちが主人公のマンガを集めてみました。

 「オタクと恋愛」「隠れオタ」「オタクの日常」「同人活動」の4テーマを軸に、個性あふれる10作品をご紹介。オタク文化に興味はあるけれど薄くしか知らない、という人のための用語集つきです。

オタクと恋愛

 二次元があれば恋愛なんて必要ない! そんな方もいらっしゃるかと思いますが、恋とは問答無用で「落ちて」しまうもの。突然の萌え※2 に抗えないように、誰かを好きになる気持ちは、なかなか自分では止められません。ここでは、そんなオタクたちの恋愛事情を扱ったマンガをご紹介します。

無器用なオタクカップルがかわいい!『ヲタクに恋は難しい』

ヲタクに恋は難しい: 1

ヲタクに恋は難しい』 ふじた/一迅社

 ダ・ヴィンチ×niconicoのマンガ賞「次にくるマンガ大賞2014」で、“本にして欲しいWebマンガ部門”第1位となり、イラストSNSのpixiv※3 でも話題となった作品。

 隠れ腐女子※4 のOL・成海(なるみ)と、クールなイケメンながら重度のゲーヲタ(ゲームオタク)である宏嵩(ひろたか)。オタク同士だからこそ楽な部分もあれば、オタク同士ゆえに悩む部分もある。そんな不器用な2人をメインに、サブキャラたちの恋愛事情やオタクライフを絡めて描いた胸キュンラブコメディ。

 乙女ゲーの分岐は間違えないのに、恋人の選択はいつも間違えてしまう成海。「恋人にするのはもったいない、だってだいじなオタク友達だから」と、幼馴染で同僚の宏嵩との恋愛を否定するものの、付き合い始めてからの成海を見ていると、まさに相性ぴったりの2人と言わざるを得ません。一緒にゲームをしたり、コミケに行ったり、オタ友たちと盛り上がったり……普通のOLとして擬態※5 している時より、ずっといきいきしている成海の姿に、趣味を理解してくれる相手との恋愛っていいものだなあとしみじみ実感させられます。

 また、あまり嫉妬心などを表に出さないクールな宏嵩ですが、成海がコミケで参加者と話している姿を見て「あ、これジェラシーだ」と気づくシーンは必見。好きなサークルさん※6 相手だと、彼と話すよりもテンション上がっちゃう! なんて経験、思わず「あるある」とうなずいてしまう方も多いのでは?

 成海&宏嵩のカップルはもちろん、友人の小柳&樺倉カップルが、これまた正統派ツンデレペアで可愛いので、そちらもオススメです。

『ヲタクに恋は難しい』を立ち読みする

キュートな恋模様に胸キュン! 『腐女子っス!』

腐女子っス!(1)

腐女子っス!』 御徒町鳩/KADOKAWA/アスキー・メディアワークス

 コスプレイヤー※7 ・ユキ、同人作家※8 のマンガ描き・めぐみ、同人小説書き・えりは、同じ高校に通う仲良し“腐女子高生”3人組。萌えに創作に邁進していた彼女たちに、突然舞い降りてきた「恋」。果たして、恋とオタ生活は両立できるのか? 思春期の少女&少年たちの揺れる心を瑞々しく描いた意欲作。

 本作の良いところは、オタクや腐女子を特別な存在として扱っていないこと。恋に悩んだり、進路に迷ったりする姿は、普通の女子高生と変わりません。ユキ、めぐみ、えりの3人は、漫画部に所属してはいますが、自分が腐女子なことを、ことさら強調したりはしません。基本的に、擬態ができている腐女子です。

 でも、だからこそ、彼女たちは自分の趣味を恋人に伝えることをちゅうちょします。

 「オタクだと知られたら、嫌われるかもしれない」「こんな自分をさらけ出したら、引かれるかもしれない」

 そんな彼女たちの葛藤を、作者は繊細かつリアルに描き出します。オタクにとっては、趣味と恋愛との両立も重要な問題なのです。例えば、漫画家を目指すめぐみは、非オタである彼氏に対して、知らず知らずのうちに壁を作ってしまいます。「オタクじゃない人に話しても仕方ない」とめぐみは考えますが、彼氏はそんなめぐみの態度に不安を感じ、ぎくしゃくしてしまいます。

 恋愛ものとして胸キュン度の高い本作ですが、高校生活の楽しさや、女同士の友情、創作を志す者の悩みと成長なども描かれており、青春マンガとしてもオススメです。

『腐女子っス!』を立ち読みする

隠れオタという生き方

 オタクが最も恐れると言っても過言ではない「オタバレ※9」。前述の2作でもそういったシーンはありますが、ここで紹介する2作品は、「オタバレ」に関するシビアな現実を、時にコミカルに、時にシリアスに描いています。

特撮オタのOLが送る爆笑コメディ! 『トクサツガガガ』

トクサツガガガ(1)

トクサツガガガ』 丹羽庭/小学館

 仲村さんは26才のOL。毎日手作りのお弁当を持ってくるせいか、彼氏に尽くすハイレベル女子力の持ち主だと思われている。が、実は女子力ならぬ、女「死」力ほとばしる「特オタ(特撮オタク)」。

 辛い時も、苦しい時も、大好きなシシレオー(特撮ヒーロー)のことを思い出せば勇気百倍。そんな仲村さんの、ちょっぴりおかしくて切ない特オタライフ!

 ひとくちに「オタク」といっても、マンガやアニメが好きな人のことばかりを指すわけではありません。主人公の仲村さんは、いわゆる「特撮オタク」。特撮と言ってもSFXのことではなく、変身して戦う「特撮ヒーローもの※10」を指します。

 特撮って子供が観るやつでしょ? とあなどるなかれ。今の特撮は、子供と一緒に観ているお母さんの方が思わずハマってしまうほど、奥が深いんです。

 仲村さんは、小さいころからの特撮ファンなのですが、女らしくあれと言う母親のせいで、好きなものを封印してきた過去があります。その反動もあり、一人暮らしになったいま、仲村さんの部屋はすっかりオタ部屋に……。ですが、好きなものを否定され続けた記憶は、いまも彼女の心を縛りつけています。

 「好きなら堂々としてればいいのに」

 「隠すってことは、やましい気持ちがあるんじゃないの?」

 何気ない一般人の一言に、人知れず傷ついた経験がある方もいらっしゃるかもしれません。

 本気で好きだからこそ、知られたくない。言えば馬鹿にされるかもしれない。自分がけなされるのはともかく、好きなものを辱められるのは耐えられない。オタクなら誰しも感じたことのある葛藤に、仲村さんもまた陥ります。ひょっとしたら、意外にさらっと受け入れてもらえるかもしれない。そんな考えが頭をよぎりつつも、仲村さんは、やはり隠れオタとして生きていくことを選びます。

 そんな重い部分も描かれる本作ですが、基本はコミカル。要所要所で出てくる特撮ヒーローたちの名シーン、名セリフ(主に仲村さんの脳内再生)に、胸が熱くなることもしばしば。それに励まされる仲村さんの姿がまた、おかしいやら可愛いやらで、思わず頬がゆるゆるになってしまうことも。

 特撮は興味ないという方にこそ読んでほしい、元気が出るマンガです。

『トクサツガガガ』を立ち読みする

コスプレ界の深淵に迫る問題作! 『コンプレックス・エイジ』

コンプレックス・エイジ 1巻

コンプレックス・エイジ』 佐久間結衣/講談社

 第63回ちばてつや賞に入選した読切作品がネットで話題沸騰となり、その短編を下敷きにした連載作が、この『コンプレックス・エイジ』です。

 片浦渚は26歳の派遣社員。彼女にとってコスプレは人生のすべて。大好きなキャラクターになりきるために努力を惜しまない渚だが、年齢と体格が理想とのズレを生んでいく。仲間との関係や、家族や会社の同僚へのカミングアウトなど、コスプレイヤーのリアルな実像を暴き出す問題作。

 主人公・渚にとって、コスプレは単なる自己表現や趣味ではありません。まさに、生きる意味そのもの。だからこそ、完璧でないことが許せず、原作をよく知らずにコスプレをする相手を痛烈に批判したり、衣装のディテールが原作と異なっていたことに気づいて、徹夜してまで衣装を作りなおしたりと、一般人から見れば「どうしてそこまで……」と思うことに、とことん執着します。

 渚は普段、派遣OLとして働いていますが、仕事に対しては何の情熱も持っていません。そのことを正社員の葉山に見破られ、嫌味混じりの𠮟咤(しった)を受けます。しかし、嫌な女だと思っていた葉山と、渚はイベント会場でバッタリ出会ってしまいます。実は、彼女も同じコスプレイヤーだったのです。一気に打ち解け、ともに撮影旅行へ出かける渚と葉山。そんな矢先、葉山のコスプレ写真が同僚に見つかるという事件が……。

 読み始めは、渚に対して反感を抱く読者も少なくないかもしれません。自分がこうありたいという理想を体現したような年下レイヤーの出現に、焦りと嫉妬を抱く彼女を痛々しいと感じ、目をそむけたいと思う方もいるかもしれません。ですが、コスプレを巡る親とのいさかいや、恋人とのすれ違いなど、残酷な現実に幾度も直面する渚は、それでもひたむきに「好き」を追求しようとします。そんな彼女の姿に、いつしか心打たれ、応援したくなる人も多いのではないでしょうか。

 華やかで楽しそうに見える世界の裏側を痛烈に描いた本作は、一度読み始めたらページをめくる手が止まらなくなるはずです。

『コンプレックス・エイジ』を立ち読みする

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