Jコミの「絶版マンガ図書館」を継承・リニューアルする形でサービス開始。絶版作品だけでなく、インディーズからの作品投稿も受け付けるサービスに進化した。
漫画家・赤松健さんとヤフー子会社のGYAOは8月3日、無料でマンガを配信する「マンガ図書館Z」を開始した。同サービスは、赤松さんが代表を務めていたJコミの「絶版マンガ図書館」を継承・リニューアルする形で展開されるもの。6月には新会社「株式会社Jコミックテラス」が設立され、赤松氏は同社取締役会長に就いていた。
マンガ図書館Zの前身であるJコミ(2014年に絶版マンガ図書館にサービス名称変更)は、市場で入手困難となった絶版作品などを広告付きで無料配信するサービスとして2011年に正式公開。その後、電子透かしの入ったマンガ(PDF)の限定販売とクラウドファンディングを組み合わせた「JコミFANディング」や、プリンドオンデマンドサービス「Jコミで印刷できるってよHD」などの取り組みを行ってきた。
赤松氏は現在『週刊少年マガジン』で『UQ HOLDER!』を連載中であることなどから十分に手が回らない状況だという。このため、大きな資本を入れることで赤松さんの負担を軽減し、持続性のある事業として運営していきたいと事業を引き継いだ狙いが語られた。
絶版マンガ図書が提供してきたサービスはマンガ図書館Zに継承され、出版社が取り扱わないマンガ作品を電子書籍化し広告付きで無料配信していく。作品をアップロードすると、その作品が出版社から現在刊行されていないかなどをhon.jp提供のデータベースと照合、問題がなければ公開される仕組みで、こうした法的な部分もしっかりケアすることで海賊版の撃滅を推し進めたい考えだ。
またビューワには作品内の吹き出しをある程度自動認識し、吹き出し内の文字をBing翻訳で51カ国語に自動翻訳できる機能も用意された。
ビューワでの無料閲覧に加え、「電子透かし入りPDF」のダウンロード販売(作者ロイヤリティーは40%だという)のほか、作家の許諾が得られた場合はKindleストアでの有料販売も手掛けるとし、今秋にはプリントオンデマンド販売も予定しているという。作品内で配信される広告収益は作家へ100%還元、販売収益も最大限作家に還元する方針は変わらず。
また、月額300円のプレミアム会員になると、広告が非表示になるほか、成人向け作品の閲覧、ダウンロード販売されているものの中から月1点を無料でダウンロードできるようになる。なお、マンガ図書館Zのユーザー登録は現時点でYahoo! IDとは独立したものとなっている。
会員種別 | 非会員 | 無料会員 | プレミアム会員 |
---|---|---|---|
月額料金 | 無料 | 無料 | 300円(税抜き) |
サイト閲覧 | ○ | ||
作品閲覧 | ○ | ||
成人向け作品閲覧 | × | × | ○ |
本棚機能 | × | 7冊まで | 5000冊まで |
作品アップロード | × | ○ | ○ |
作品閲覧時の広告表示 | ○ | ○ | × |
これまでと大きく変わったのは、インディーズ作品の投稿も受け付けるようになったこと。赤松氏は常々、「出版社とは戦わない」と明言しており、この日もそうしたつもりはないと改めて明言した上で、出版社が持つ新人育成の機能が弱くなってきていると感じる部分もあると説明。comicoやマンガボックスなど、インディーズの作品投稿機能は多くの無料コミックサービスが用意しているが、差別化として、インディーズ作品にも広告が入り作家は広告収入が得られること、プロ作家がチェックしてくれる有料オプションも提供する考えが示された。
「他社(サービス)のインディーズ作品はうち(マンガ図書館Z)が取る」(赤松氏)
広告収入は基本的に作家に100%還元する方針は従来通りのため、GYAOはビジネスとしてどうとらえているのかを問われると、Jコミックテラス代表取締役社長の寺岡宏彰氏は、「GYAOやヤフーの中では変わったサービス」とマンガ図書館Zを評し、ビジネス面での性急な収益化は「正直見えていない」としながらも、今後、人気の作品をYahoo!ブックストアのみに配信する考えやグローバル展開への期待を語った。寺岡氏は、GYAOが運営するYahoo!ブックストアとは異なる領域をカバーすることでユーザーの期待に広く応えたいとも話す。当面の取り組みとしては、サイトをスマホに最適化した後(9月予定)、アプリ化などの検討も進めていくとしている。
赤松氏は、マンガ図書館Zの夢について、最終的には国会図書館に(マンガ図書館Zの)管理システムが採用されることだと話し、海賊版をなくし、読者・作家・出版社の三方良しなサービスにしたいと抱負を語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.