君は知っているか? 名古屋を愛しすぎる男のうんちくを 『マンガ うんちく名古屋』棚園正一に聞く

どこからともなく現れては、うんちくを語り倒す男を描いたマンガ「うんちくシリーズ」の名古屋編が発売。作画は名古屋在住の漫画家・棚園正一さん。『学校へ行けない僕と9人の先生』の棚園さんじゃないですか。お話を聞いた。

» 2015年07月17日 06時00分 公開
[西尾泰三eBook USER]
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私は雲竹雄三。人は私をミスター・ナレッジ(うんちく)と呼ぶ ©棚園正一/KADOKAWA

 私は雲竹雄三。人は私をミスター・ナレッジ(うんちく)と呼ぶ。知っているか――。

 KADOKAWAより発売中のマンガ「うんちくシリーズ」に登場する雲竹雄三は、どこからともなく現れては、うんちくを語り倒すトレンチコートの男。そのうんちくがすさまじい。

 公式Twitterアカウントで語っているうんちくも、フランス書院文庫編集部のTwitterアカウントばりにハイレベルなうんちくばかりだ。


 マンガ「うんちくシリーズ」はこれまで、鉄道、書店、ラーメン、吉野家、プロ野球などさまざまなテーマで刊行されているが、テーマごとに違う作家がイラストを手掛け、それぞれの味が出ているのも面白さの1つ。

7月17日発売の『マンガ うんちく名古屋』 7月17日発売の『マンガ うんちく名古屋』

 そんな同シリーズの最新刊として7月17日に発売されるのが『マンガ うんちく名古屋』。「コミックエッセイ劇場」では数話を読むこともできるが、名古屋を舞台にさまざまなうんちくをこれでもかというほど詰め込んだ本書を描き下ろしたのは、名古屋在住の漫画家・棚園正一さん。

 棚園さんといえば、不登校だった実体験を基にした『学校へ行けない僕と9人の先生』(双葉社)はeBook USERでも何度も取り上げた。棚園さんが、こんな作品も描くだなんて。きっと相当な名古屋愛にあふれた作品に違いない。棚園さんにお話を聞いた。

うんちく、それは慣れ親しんだ土地も新鮮に感じられる知識の泉

―― 棚園さんお久しぶりです。『マンガ うんちく名古屋』は、『学校へ行けない僕と9人の先生』とは打って変わったテイストで驚きました! どの回も濃密な名古屋うんちくが語られていて味わい深いですね。これって棚園さんはほとんど知っていたりするうんちくなんでしょうか。

「これは味噌煮込みうどんではない 『ころ』だ」(ニヤ) お、おう お、おう ©棚園正一/KADOKAWA

棚園 名古屋で生まれ育ってきたはずなのに、あまり知りませんでした(笑)。マンガの内容の2割程度です。既に知っていたうんちくも「なぜそうなったか?」など、細かいエピソードまでは知らなかったので、とても勉強になりましたね。

 生活の場所になっていた名古屋の街が、どこかの旅行先に滞在しているような新鮮な気持ちになりました。名古屋名物もうんちくを知ってからだとおいしさが増したような気がします(笑)。

 当たり前に過ごしている環境も、捉え方ひとつでこんなにも変わるんだなと面白い発見でした。

―― 本書でも出てくる名古屋市名東区にあった全国初のマンガ喫茶「ザ・マガジン」や漫画空間の話など、棚園さんのオススメも盛り込まれているように感じました。棚園さんが最も親近感がわいた名古屋うんちくは?

棚園 「三越の壁に化石が埋まっている」といううんちくです。現代のデパートと古代の世界がつながっている事実が形になっていてロマンを感じます。掘り下げるとドラマになりそうなエピソードも多いので、これから描いていく自分の漫画にも反映できればと。

第8話『名古屋嬢ナナちゃん』より ©棚園正一/KADOKAWA

―― 自分の解釈を踏まえてストーリーに仕立てられたんですよね。苦労された点、あるいは楽しんでやれた点などは?

棚園 既に完成されているキャラクターを使って描くというのは初めてで、最初は勝手が分からず主人公の雲竹雄三が淡々とうんちくを語っていくという……何というか、メリハリのない話になりがちでした。「名古屋を愛しすぎる男」という雲竹雄三の一本筋が決まってからは、イキイキと雲竹が動き出して、とても描きやすかったです。

 自分がゼロから生み出したキャラクターではないんですが、バカバカしくて大好きなキャラクターになりました。実際に近くに居たら疲れそうですけど(笑)。

作中の景色はすべて実際のもの。「あ、ここは」と気づくことも少なくないはず 作中の景色はすべて実際のもの。「あ、ここは」と気づくことも少なくないはず ©棚園正一/KADOKAWA

―― 確かに(笑)。作中の景色は実際のものだったりするんですか?

棚園 はい。作中に登場する景色はすべて実際の景色です。カメラ片手に自分で資料写真を撮って回りました。その場所を知っていたり、実際に訪れた読者の方々が「この場所で雲竹が喋りまくっていたなー」とか感じてもらえればうれしいです。

 自分も現実世界を舞台にしたいろいろな漫画や映画に触れて思うのですが、そういった瞬間って創造の世界と現実の世界がつながっているようでワクワクするんですよね。実在の世界を舞台にする作品の大きな魅力の1つだと思います。

―― 個人的には第3話の最終ページ、台詞回しなどが『学校へ行けない僕と9人の先生』を感じさせてぐっときました。第6話にも棚園さん自身がメタ的に登場していて和みます(笑)。

雲竹雄三と相まみえる棚園さん(第6話より) 雲竹雄三と相まみえる棚園さん(第6話より) ©棚園正一/KADOKAWA

棚園 どこかに登場させたいなーとは思っていました。ただ「うんちく名古屋」の作中だと「学校へ行けない僕と9人の先生」の棚橋くんのキャラクターのままでは、雲竹と絡んでも気おされてしまって何も喋らないので、多少気を強くしました(笑)。

―― 棚園さんからもミスターナレッジばりの名古屋うんちくを1つお願いしたいのですが。

棚園 名古屋市内にはトヨタの創業者である豊田佐吉さん、初代社長である豊田利三郎さんなど、トヨタ創業期の豊田一族の家が集まっていたそうです。さらに、その近所にはソニーの創業者である盛田昭夫さんの家もあり、互いに交流があったとか。そういったところにも、モノ作り愛知の原点があるような気がします。

―― また1つ名古屋に詳しくなれました(笑)。ご相談なのですが、この作品の宣伝イラストをeBook USERの読者向けにお願いできませんか?

棚園 がんばりましょう(下記イラスト)。名古屋に興味がある方も、そうではない方も十分に楽しんで頂ける内容だと思います。ぜひとも読んで頂ければうれしいです。

棚園さんが描き下ろしてくれた「うんちく名古屋」POPがこちら! 棚園さんが描き下ろしてくれた「マンガ うんちく名古屋」POPがこちら!

―― こんなにガッツリ描いていただけるなんて! ありがとうございます! 原画、味がありますね。そういえば棚園さん、原画展も企画されているとか。

棚園 はい。9月ごろに名古屋大須にある友人の服屋の2階で小さな原画展をやります。詳細などは自分のブログTwitterで更新していくつもりです。本当にこじんまりとした展覧会ですが、ぜひとも足を運んで頂ければうれしいです。

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