全文検索、音声付き電子書籍 EXPOで見た電子出版のいま国際電子出版EXPOリポート

東京ビッグサイトで開幕した第19回「国際電子出版EXPO」から、モリサワ、アイプレスジャパン、オプティム、ZITTO、NTTクラルティのブースを紹介する。

» 2015年07月01日 19時30分 公開
[宮澤諒eBook USER]

 7月1日に開幕した第19回「国際電子出版EXPO」。東京ビッグサイトを会場に、7月4日に掛けてさまざまなコンテンツやソリューションの展示や、著名人を招いてのセミナーなどが行われている。記者が気になった幾つかの展示を紹介したい。

国際電子出版EXPO

モリサワは、英語・中国語・韓国語対応の電子配信ツールを提供

 モリサワフォントなどを提供するモリサワブースでは、「MCBook」「MCComic」「MCMagazine」といった電子書籍・電子雑誌の制作ソリューションのほか、2月にリニューアルされた「MCCatalog+」が展示されていた。

 MCCatalog+はもともと、クラウド上にアップロードした印刷物のデータを、専用ビューワに配信できるというサービスだったが、リニューアルにより英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語への翻訳が可能に。オーサリングツール「MCCatalog+ Maker」と高電社の自動翻訳エンジンの連携で多言語コンテンツの作成を簡易に行えるようになっている。

翻訳された文章はテキストウィンドウで表示される 翻訳された文章はテキストウィンドウで表示される
MCCatalog+の編集画面 MCCatalog+の編集画面

 翻訳した内容は、ビューワ上でポップアップテキストウィンドウとして表示されるため、組版と独立した表示が可能。同ソリューションのコンテンツは同社が提供するカタログ・チラシ配信アプリ「Catalog Pocket」に配信され、誰でも無料で読むことができる。

「全文検索」でこれまでにない本探しを提案するアイプレスジャパン

「コミケーション」で検索しても「コミュニケーション」と表示された 「コミケーション」で検索しても「コミュニケーション」と表示された

 アイプレスジャパンのブースでは、6月29日に発表された「全文検索」ソリューション(正式名称は未定)を見ることができた。

 意味辞書を用いた連想ワードをグラフィカルに表示できることなどが特徴。デモでは書誌情報などを対象にこの検索ができるようになっていた。間違った言葉で検索しても、正しい言葉に直したり、類似したワードを表示するといった機能も備えている(Google検索の「もしかして」のような感じだ)。「検索してもヒット0というのをなくしたかった」(説明員)。

 電子書店は、基本的に検索して本を探すという性質上、リアル書店と違い「何となく気になる本を探す」という探し方には向いていない。しかし、この機能を活用すれば、気になる単語を入力するだけでこれまで見たことのない作品に出会える機会が創出されそうだ。

クリックするだけで次々と関連ワードが表示される

 まずは自社の「コンテン堂」に導入(今秋予定)した後、他の電子書店や図書館、一般企業などにも導入提案を行っていきたいとしている。

オプティムが開発を進める「タブホ」の追加機能

 雑誌定額読み放題サービス「タブホ」などを提供するオプティムのブースでは、6月2日の発表会で実装予定が明かされたもののうち、まだ未実装の「シール機能」のデモを見ることができる。

シールは大きく5つのパターン合計150種類を用意している シールは大きく5つのパターン合計150種類を用意している

 ページにシールのような画像を貼ることで、気軽に気持ちをシェアできたり、吹き出しを使って感想をシェアしたりできる。将来的には、「なつかしい」「おどろき」など共通のシールが貼られたページにアクセスできるような機能も考えているという(つまり、シールが1つのカテゴリになる)。6月にはポータルサイトもオープンしたほか、全雑誌横断の全文検索にも対応した。

ZITTOは電子書籍、電子雑誌、そしてテレビ番組まで

『進撃の巨人』の顔はめパネルも展示されている 『進撃の巨人』の顔はめパネルも展示されている

 ZITTOのブースでは、同社が提供する電子書籍配信サービス「いつでも書店」や「雑誌オンラインEX」などの展示が行われていた。

 いつでも書店は、月額制の電子書籍配信サービス。500円プランから5000円プランまで用意しており、別途追加購入も可能。支払いはクレジット決済のほか、楽天あんしん支払い、各キャリアでの決済にも対応している。5月14日にはSo-net会員向けコンテンツサービスに、6月17日にはケイ・オプティコムの「eoスマートリンク」にいつでも書店のサービスを提供し、So-net IDやeoIDでの利用が可能となった。

 また、電子書籍事業からは外れるが、PCやスマートフォン、タブレットから番組を見ることができる「mieru-TV(ミエルテレビ)」も提供している。専用のチューナーなどを取り付けることなく、月額980円(税別)で、「FOX」「キッズステーション」「ディズニー・チャンネル」など29チャンネルから3つを選んで見ることができるというもの。

バリエーション豊かな声のパターンで障がい者の読書を支援するNTTクラルティ

 障がい者が参加する障がい者・高齢者向けサイト「ゆうゆうゆう」の運営や、バリアフリー化支援などを行っているNTTの特例子会社「NTTクラルティ」のブースでは、合成音声を組み込んだ電子書籍が展示されていた。

ハスキーな女性、優しいお兄さん保育士などをイメージした音声で朗読が行われていた ハスキーな女性、優しいお兄さん保育士などをイメージした音声で朗読が行われていた

 「おともじん」と呼ばれるサービスで、コンテンツファイルからNTTアイティ開発の「FutureVoice Crayon」を使って合成音声を作成、合成音声付きのEPUBファイルやDAISYファイルを作成できる。音声は「声質」「口調」を自由に組み合わせることができ、約2万パターンほどあるという(おともじんで制作する場合は、事前にどういった音声にするか決める)。

 著作権の関係で、個人からの依頼はほとんどないというが、デジタル教科書や、自治体の広報誌などで依頼が入ることが多いという。2016年4月には「障害者差別解消法」(「障がいを理由とした不当な差別的取扱い」を禁止する法律)が施行されることもあり、今後は図書館などでも同サービスの重要が高まりそうだ(第16回図書館総合展では、障害者差別解消法施行に向けたフォーラムが開催されていた)。

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