最後に、読みやすさの検証です。
従来のAndroidアプリ、iOSアプリ(iPhone・iPod touch・iPad)、専用電子ペーパー端末Kindleシリーズ、専用液晶タブレットFireシリーズに加え、前述のとおり「Kindle for PC(Windows 7/8/8.1)」と「Kindle for Mac(OS X 10.9.5以降)」の日本語対応版がリリースされました。
また、Webブラウザベースの「Kindle Cloud Reader」も提供開始されました(コミックと雑誌のみ閲覧可能)。対応ブラウザは、Internet Explorer 10以上、Firefox 10以上、Chrome 20以上、Safari 5以上、iPad版Safari(iOS 5以上)です。ChromeかFirefoxであればLinuxでも閲覧可能となり、Windows・Mac対応と合わせ、対応デバイスの種類はトップクラスです(☆+0.5)。
Kindle Cloud Readerはプログレッシブダウンロード(ダウンロードしながら読める)に対応していますが、ダウンロードしながら閲覧すると光回線でもページめくりが追いつかないことが多く、「遅い」「重い」と感じられてしまいます。ただ、ダウンロードが完了すればオフラインでも閲覧可能で、ストレスなく読むことができ、一度本を閉じても再ダウンロードは不要です。
1つのアカウントに登録できる端末の台数制限はありませんが、1つのコンテンツをダウンロードできる台数には制限があります(DRMフリーで配信されている場合を除く)。制限に引っかかってしまった場合は、ダウンロード済みのコンテンツをいずれかの端末から削除するか、端末登録を解除すればOKです。端末登録は、アプリのメニューか、Webの場合はアカウントサービスの[コンテンツと端末の管理]→[端末]からいつでも解除できます。
前回のレビューと同様、端末の同期設定(Whispersync)は初期状態でオンになっており、最後に読んだ本や最後に読んだ位置、ブックマーク・ハイライト・メモなどは自動でほかの端末と同期されます。
フォントサイズ・種類(明朝とゴシック)・行間・余白・文字色と背景色の変更、目次やブックマーク、全文検索、メモ・複数色のハイライト・辞書・ウェブ検索といった従来通りの機能は、ほぼどの端末でも可能になりました。これら基本的な読書機能の充実度も、トップクラスです(☆+0.5)。
今回のレビューでは、新機能「Word Wise」と「X-Ray」について掘り下げます。どちらもほかにない機能ですが、端末やコンテンツによって非対応な場合があるため、2つ合わせて加点とさせていただきます(☆+0.5)。
Word WiseはKindle洋書の一部(本稿執筆時点で8万9997点)が対応している、難解単語に同義語を自動的に表示する機能です。表示設定にすると、英英辞典が本文中に編み込まれているような状態になります。ヒントの頻度は調節ができます。洋書を読む際には、とても便利な機能です。Kindle Voyage、Kindle Paperwhite(第2世代)、Kindleと、Androidアプリ(4.11.0以降)が対応しています。
読書中に対応書籍のX-Rayを表示すると、特定のトピックや登場人物、重要な場所などの解説と、本の中で出現する章や箇所を表示できます。背景情報、人物情報や、Wikipedia情報も参照できます。X-Rayは、「書籍の骨格」をレントゲンのように表示する機能という意味です。こちらはKindle Voyage、Kindle Paperwhite(第2世代)、Kindleと、Kindle Fire HD(第3世代)、Kindle Fire HDX、Fire HD 6 / Fire HD 7、Fire HDX、Kindle for iOSが対応しています。
電子ペーパー端末にのみ搭載されている機能として、ライブラリ(購入済み書籍)全文からの串刺し検索があります。筆者は最近までこの機能に気づいていなかったのですが、Kindle Paperwhite(2012)から使えていたようです。持っている本が多くなるほど威力を増す機能で、他の端末への対応が強く望まれるところです。
他には、一部の書籍が読み上げ機能(Text-to-Speech)に対応していますが、現時点では日本語書籍はすべて非対応で、Fireタブレットの一部(Kindle Fire、Kindle Fire HD、Kindle Fire HDX、Fire HD 6 / Fire HD 7、Fire HDX)だけが対応しています。
評点:☆4.5
大きなウィークポイントだったラインアップと対応デバイス(WindowsとMac)が拡充されたことで、死角がかなり少なくなったと言えるでしょう。定期刊行物を配信する「ニューススタンド」や定額読み放題の「Kindle Unlimited」などが、日本にはまだ未導入ということを思うと、まだまだ成長の余地を残しているのが凄いところ。
反面、他の電子書店がマルチデバイス対応、クラウド本棚、携帯キャリア決済などの対応を進めていった結果、Kindleストアの中では比較的進化の遅い「保管しやすさ」「買いやすさ」が相対的に低評価になりつつあります。
フリーライター。日本独立作家同盟代表で、『月刊群雛』と『群雛ポータル』の編集長。ITmedia eBook USER、INTERNET Watch、ダ・ヴィンチニュース、マガジン航などに寄稿。ブログ『見て歩く者』で、電子出版、ソーシャルメディア、著作権、書評などを執筆。著書『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』が4月24日に発売。
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