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» 2015年04月10日 12時00分 UPDATE

私設図書館シャッツキステ96冊目:本屋大賞受賞、さまざまな“命”を描いた傑作『鹿の王』

デート企画は無事終了しましたが、連載はもうちょっとだけ続きます。100回以降は新企画も。さてさて、今日はサヤから紹介するようです。

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 新春のにぎわいを感じるこの街に、メイドが営む私設図書館がありました。

 そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。

 今日もお気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってきます。

本屋大賞受賞、さまざまな“命”を描いた傑作『鹿の王』

サヤ

本屋大賞、結果が発表されましたねー。ミソノさんは気になる本ありましたか?


ミソノ

辻村深月さんや、米澤穂信さんなどの作品も気になりますが、その他、ノミネートされたものはどれも素敵な作品の目白押しでしたねー!


サヤ

その中でも私のイチオシはやっぱり『鹿の王』ですね! 異国へ向かう道中に読んだのですが、ページをめくる手が止まらなくて、長い旅路もあっという間でした。


『鹿の王』(上橋菜穂子/角川書店) 『鹿の王』(上橋菜穂子/角川書店)

ミソノ

上橋さんと言うと、『守り人』シリーズ、『獣の奏者』など……やっぱりファンタジーのイメージね!


サヤ

「鹿の王」も異世界を舞台にしたファンタジーです。でも読み終えた後は、ファンタジーを読んだというよりは、とっても壮大なドキュメンタリーを見たような、そんな気持ちになりました。


ミソノ

上橋さん作品特有の、地に足のついた雰囲気が今作も?


サヤ

いつものことながら、異世界が異世界として本の中に存在している感じがするんですよ。だからこそ、現実味が感じられるというか……。「鹿の王」のテーマの一つは「命」だと思うんですけど、その「命」にすごく重さを感じるんです。

狂犬病をもっと恐ろしくしたような伝染病、“黒狼病”にかかって生き残った男と、黒狼病の治療法を探す医術師。二人はそれぞれに黒狼病に関わっていく中で、何のために生きるのか、命とは何かを考えることになります。命が何だというとすごく重苦しいような気がしますけど、人を助けたり逆に助けられたりする中で生まれる絆、人との関わりもすごく丁寧に描かれていて、ほっこりする部分もたくさんありますよ。


ミソノ

上橋さん作品は食事のシーンが印象的だったり、日常の暮らしの描写も楽しいものね。そして登場人物の生き方を追うドラマチックさも!


サヤ

物語は別々に進むんですが、黒狼病の背景にある思惑によって、二人は出会い、物語は一つになります。その思惑がこれまた壮大で。国の存亡にまで関わっていくようなものなんですよ。さっき「命」がテーマのひとつだって言いましたけど、人や生き物の「命」だけじゃなくて、国の「命」も描かれているように思います。


ミソノ

国の命……そうね、古来、多くの国が生まれて、終焉(しゅうえん)を迎えてきたものね。そうやって歴史が刻まれてきた……。


サヤ

人の体がたくさんの見えないもの、内臓や細胞や細菌に生かされ日々新しく変わっていくように、国もたくさんの人や土地に生かされ、支配者が変わり、名前や姿が変わっても生き続けていくんだなぁというのを、物語を通して感じることができました。

こんなに壮大な話をファンタジーの中で描けるのは、上橋さんだからこそなんだろうなと思います。

改めて、本屋大賞受賞おめでとうございます!


本日のメイド

ミソノ ミソノ:いつもニコニコ、図書館を影から支える司書メイド。好きなジャンル:絵本、児童書、旅行記、本、紙、図書館
サヤ サヤ:三度のご飯より小説が好きな新米メイド。司書見習いとして、本棚整理などミソノの仕事をよく手伝っている。好きなジャンル:近現代文学、少女漫画

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