足掛け3年の集大成「もう間違われてもいい」昭文社×旺文社コラボ

» 2015年04月01日 14時05分 公開
[宮澤諒eBook USER]

 「請求書が間違えて送られてくるんですよ」

 「就職説明会で間違えて出席されるなんていうのはもうデフォですね。そのまま入社した社員もいますから」

 ここまで名前を間違われやすい出版社がほかにあっただろうか。そう、一部の人にはもはや恒例のネタとなっている昭文社旺文社の話だ。

 両社は2013年から、間違われることをネタにしたコラボ企画「どっちがどっち?」キャンペーンを展開。2014年のエイプリルフールには、Twitterのアカウントはそのままにアイコンのみを入れ替えてつぶやき、多くの人を混乱の渦に陥れた(関連記事)。

 2015年も同様の取り組みを実施中。旺文社はガイドブックを発行する昭文社らしく山形旅行の様子を一日かけてツイート。昭文社は旺文社が提供している英単語学習アプリを使って勉強する様子をツイートしていくとのこと。

 地図やガイドブックで知られる昭文社と、教科書や参考書で知られる旺文社。ジャンルが異なる2社がなぜここまで間違えられてしまうのか。そして本人たちはそれを一体どう思っているのか。Twitterの中の人たちに聞いてきた。

昭文社の竹内渉さん(写真=左)、旺文社の池田隆大さん(写真=右)

 「昔から間違えられてきたこともあって、Twitterアカウントを開設した2010年ごろから昭文社さんとは仲良くしています」。そう語るのは旺文社デジタル編集部アカウントで中の人を1人で担当している池田隆大さん。昭文社以外にも、さまざまな企業とコラボレーションを企画してきたやり手だ。

 「昭文社のものを旺文社として間違われるパターンが圧倒的に多いですね。弊社の地図に対してのクレームが旺文社さんにいったりするので、そういうときはちょっとだけ気が楽です(笑)」。笑顔でそう語ったのは、昭文社アカウントの中の人を担当する竹内渉さん。

 旺文社として間違われるケースは本当に多いらしく、昭文社のガイドブックに掲載された飲食店からのお礼が旺文社に届いたり、昭文社の公式サイトへアクセスした人の数%が、旺文社で検索した人だったといったこともあるという。

 「iOSがバージョンアップした時にAppleの地図がひどいって話題になったことがありましたけど、Appleひどいだったのが、昭文社さんの『まっぷる』ひどいになって、挙句の果てにはなぜか旺文社のせいにされたこともある」(池田さん)

 「ニュースリリースを出しても、Web媒体だとよく間違われたりします。以前は律義に訂正のお願いをしていたんですけど、最近ニュースに関してはもういいかなって諦めてます」(竹内さん)

 昭文社の総務部は、旺文社の郵便物が間違って届いたときのために住所や電話番号を把握しており、すぐに旺文社に送るようにしているという。正直迷惑ではないのだろうか。いま一度自社をPRして、世間に認知してもらうべきなのではないだろうか。

 「もう間違われてもいいのかなと思っているんです。何か害があるわけでもないですし、ジャンルが違う出版社がコラボすることでいろんな人の目にとまって、結果として読書人口が増えたりだとか、市場拡大になるんだったらそれはそれで」(池田さん)

 「私も同じですね。これでいいと思います」(竹内さん)

 もはや間違われるのが当たり前になっているようだ。懐が広いというべきか、お人よしというべきか。

 「どっちがどっちキャンペーンをきっかけにして、出版社同士が一緒になって盛り上げていこうという空気が生まれた気がするので、やってよかったと思います」と、池田さん。

 なお、現在開催中の「どっちがどっち?」キャンペーン。3年目の今年で最後になるらしい。今後は、「旺文社編集部がお勧めする合格祈願ツアー」や、2020年の東京オリンピックに向けて訪日外国人向けサービスを提供するなど、Twitter以外でのコラボをしていきたいと語った。

山形のお土産を手に笑顔の2人

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