FEATHERは「かしこ本」――大桃美代子、SFを語る

発売前に2000冊の無料配布イベントを行うなど、話題を振りまくSF作品『FEATHER』。そのPR大使を務めるタレントの大桃美代子さんに聞いた。

» 2015年03月23日 12時52分 公開
[西尾泰三eBook USER]

 先日eBook USERで著者インタビューをお届けした新機軸の長編SF作品『FEATHER 〜世界は、ひとつじゃない。』(以下FEATHER)。

 本作はさまざまな部分で規格外の取り組みとなっているのも注目したいポイントだ。アニメ化やプロモーションビデオの制作なども予定されているほか、作品のPRを担当するタレント陣の参画も、処女作としては異例の取り組みといえる。

 ここでは、PRを担当するタレントの一人、大桃美代子さんに、なぜFEATHERのプロジェクトに参加しようと考えたのかを、自身が考えるFEATHERの魅力とともに聞いた。

大桃美代子さん 大桃美代子さん

ひとつの作品を作り上げていく戦略に興味あり

FEATHER 〜世界は、ひとつじゃない。1巻書影 FEATHER 〜世界は、ひとつじゃない。1巻書影

―― 大桃さんは今回、FEATHERのPR大使となっていますが、ずばり、この作品のどこに引かれて大使を引き受けたのですか?

大桃 わたしがSFが好きだというのもありますけど、こうやってひとつの作品を作り上げていく戦略に興味があったんです。今回FEATHERの刊行に当たっては、さまざまな仕掛けが用意されているとお聞きしていますが、それを中で見てみたいなと。

―― SFがお好きだったのですね。SFといえばどういった作品、作家をイメージしますか?

大桃 レイ・ブラッドベリの短編集『ウは宇宙船のウ』も好きですが、タイムマシン、超能力、数学的な話も出てくる光瀬 龍さんの『百億の昼と千億の夜』もお勧めです。

 あとは、幼いころから「機動戦士ガンダム」をはじめ日本サンライズ(現・サンライズ)が制作したアニメはほぼ見ていましたし、松本零士さんの世界も大好きです。超能力ものも大好きで、松本零士さんの『1000年女王』や筒井康孝さんの『七瀬ふたたび』、ガンダムの“ニュータイプ”もいうなれば超能力ですけど、そういうのにも引かれますね。そのほかは、小松左京さん、新井素子さんの作品が印象深いです。

―― 今挙げていただいた方々の作品と比べて、『FEATHER』の印象は?

大桃 タイムトラベルの要素があって骨太のSF作品であることはもちろんですが、作者の七村さんは、文化的なものにも造詣の深い方で、そうしたものが1つのストーリー上にあるのが面白いです。これからの話ですが、裏にはイスラム原理主義的なものも入っていたりして、そういう宗教観がどう物語に絡んでくるのかも楽しみです。

 今、日本だと書店のSFコーナーはひところに比べてかなり狭くなっていますよね。でもそれはSFが合わないというわけではなく、過去には『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』が流行ったり、そのころに筒井さんの『七瀬ふたたび』が発表されたりと、すごくSFがはやっていたんです。それがいまエポックメイキング的に空いているので、ニッチなところではまれば導火線に火が付くようにまた新しい展開になっていくんじゃないかと思います。

 あと、個人的には、コンサルティングの話がたくさん出てくるのがいいですね。「コンサルの会議ってこんな感じなんだ!」みたいに勉強になります。

SFは、異なる価値観を想像するドア

―― ところで、大桃さんは普段、本は結構買われる方ですか?

大桃 情報を探すときは主にネットを利用するようになってしまったので、昔と比べると本を買うことは減りましたね。以前は「大宅壮一文庫」にいってコピーとって、体に染みこませるようにして読んだりしていたんですけど。

 ネットで手軽に調べられる分、情報が断片的で、簡単に忘れてしまうようになりました。ネットの情報は嘘の情報も多くて、それでいいのかっていうとよくはないんですが、時間がないときはそれをよしとしてしまいますね。

―― 最近読んだ本の中で気になったものは?

大桃 『日本と朝鮮半島2000年』です。自分が出演したドキュメンタリーが書籍化されたもので、そこから派生して『日本の中の朝鮮をゆく』という本も九州編、奈良・飛鳥編ともに取り寄せたところです。後者は韓国でベストセラーになった本が日本語訳されたもので、歴史を追いながら各地を見ていく旅の本です。歴史が好きなので、これをなぞる旅をしてみようかなんて思っています。

―― 大桃さんは韓国に語学留学に行かれたり、韓国への造詣も深いですよね。韓国ではSFは盛り上がっていたりするのでしょうか。

大桃 いま韓国のドラマはSFのエッセンスを取り入れたものがすごく流行っているんですよ。少し前だと『星から来たあなた』という作品が人気になったり、日本でも人気だった『JIN-仁』もリメイクされていますね。FEATHERもいつか韓国でドラマ化されるんじゃないかって勝手に思ったりもします。

 こうしてSFが人気なのは現実が辛いからだと思うんです。SFって、自分が持っている価値観や生きている時代以外の光景を想像するドアというか入口で、本やドラマってちょっとした短い時間で夢を見るものじゃないですか。現実がシビアだから、せめてそんな時間だけでも別の世界をファンタジーとして受け入れたいという感じなんじゃないでしょうか。日本はいま、夢を見ることからすでに諦めちゃっているのかもしれないですね。

FEATHERは間違いなく「かしこ本」

―― SFを求める環境要因みたいなものがあるのかもしれませんね。ところで、大桃さんは電子書籍は利用されていたりしますか?

大桃 Kindleを試したことはあるんですが、本を読むというより「情報を得た」という感覚になっちゃうんですよね。ページをめくるのと画面をスライドするのは違うのかも。個人的には、本を手にとって読むのが好きです。

 でも軽くて、何冊も持ち運びできたりするのは電子書籍の便利なところですよね。あと、文字の拡大ができるのも読みやすくていいですね。目が悪くて文庫本が読みづらくて避けていた人でも、これなら楽しめますからね。

 個人的には、もっと検索機能が使いやすくなればいいなと思います。特に『FEATHER』は難しい単語もたくさん出てきます。関西では「アホか かしこか」って言葉があるんですが、FEATHERは間違いなく「かしこ本」なので、そういう本を読むときには検索機能は重要ですね。

―― 大桃さんは著書もたくさん出されていますけど、ほかの作家が書いた作品を読んで自身の執筆意欲は刺激されますか?

大桃 されます。この前、私がデビューしたときからの大先輩にお会いしたときに、私がやっている地域再生の活動のことや農業の話を本にしなさいといわれて、どうしようかなあって思っていたところだったんです。

 地域で農業をがんばっている若者たちを取材する機会があったんですが、その中で、自分たちの地域で作れない食材をほかの地域の方と物々交換したいというニーズがあるのを知って。お金じゃなくて物が回って人が交流するサービスができたらいいなって思っていて、それをシステム化、ブランディングしていく戦略も考えていきたんです。そういうことをやりたくて大学院に行ってマーケティング戦略の講座を受けたこともあるんですが、いざ行動に移すのは思い切りがいるんですよね。

―― なるほど。大桃さんが先ほどコンサルの話に興味を示していたのはそういう背景もあったんですね。元経営コンサルタントの七村さんが仕掛けているさまざまな戦術は大桃さんにも得るものが多そうですね。

大桃 そうですね。私はいつもアイデアだけで進んでいくんですけど、この前とある製作会社の常務さんに、「うちが欲しい人材に求めるのはひとつだけ、逆算ができる人間、それだけ」といわれたんです。予算から逆算して作れる人間だけが必要だと。ああ、これが経営陣の考えなんだって。地域活動に関していうと、まだまだ逆算できる人が少ない印象で、農業こそコンサルが必要だと思うんです。七村さんはそうしたご経験も豊富で、それが作品にも生かされているので、とても参考になるんです。

―― 最後に、PR大使として、FEATHERのキャッチフレーズをつけるとしたら?

大桃 えーなんでしょう。『暮らすように世界を巡るSF〜お互いの距離感覚が現代を映す〜』かな。ぜひ読んでみてください。

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