木製給水塔の写真を集めたマニアックな写真絵本『屋上のとんがり帽子』私設図書館シャッツキステ93冊目

デート企画は無事終了しましたが、連載はもうちょっとだけ続きます。100回以降は新企画も。さてさて、今日はミソノから紹介するようです。

» 2015年03月20日 12時00分 公開
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 そこかしこに花のつぼみがふくらみはじめたこの街に、メイドが営む私設図書館がありました。

 そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。

 今日はミソノからメイドへ、本をおすすめするようですよ。

木製給水塔の写真を集めたマニアックな写真絵本『屋上のとんがり帽子』

ミソノ

レイラさんは街を歩いているときに、建築物が気になった事ってありますか?


レイラ

「凝った作りの窓ねー」と見上げたりするわね。


ミソノ

最近、街歩きを楽しむ人の中には、建物に付属している“おまけ”を楽しむ方もいらっしゃるようです。


レイラ

おまけ?


ミソノ

ほら、雨どいばかりを写真に撮ったり、ホウロウの看板が気になったり……。


レイラ

ああ! ビルのはしっこについている水道の蛇口「外蛇口」とか。いろいろ聞くわねー。ふと目について「あれ……何であんなところに」と思うような出会いをすると、さぞや気になるでしょうね!


ミソノ

異国にも、やっぱりそんなものがあるみたいで……レイラさん、このビルのてっぺんについている建物、何だと思いますか?


『屋上のとんがり帽子(たくさんのふしぎ傑作集)』(折原恵/福音館書店) 『『屋上のとんがり帽子(たくさんのふしぎ傑作集)』(折原恵/福音館書店)

レイラ

表紙にも出ているこれ? ビルの屋上にプレハブが増築されているみたいね。でもそれにしては窓もないわ。


ミソノ

これ、木製なんですって。


レイラ

うーん、大きな鳥の巣? あ、鳩の小屋かしら!


ミソノ

うふふ。なにかが留まったり、出て行くという部分は当たりですが、残念、この中にたっぷり入っているのは水なんです。


レイラ

あー! 給水塔ね。ビルの上に水をためているタンクってよく見るけれど、木造ってレトロねぇ。


ミソノ

ニューヨークでは、この木製の小屋の形をしたタンクがたくさんあるんですって。木製だと、気温の変化によって影響を受けにくく、何よりお水がおいしいのだとか。今でも1万個が存在しているとのことなので、現役ですよ!


レイラ

ふむふむ、100年ほど前にニューヨークに移民船が多く到着するころから作られ始めた、と。あら、作業風景も載っているわ。


ミソノ

この本は子ども向けの写真絵本なので、大きなサイズでたっぷりの写真が見られます。実際の作業風景や、給水タンクの仕組みが載っているのも嬉しいです。添えられている文章は決して長いものではありません。でも、木製給水塔の会社が起業したころの話にも触れられ、現在の情景と過去の成り立ちを重ねて読むことで、異国の給水塔への興味がぐぐっと増します。


レイラ

わっ、この屋上庭園と木製給水塔の組み合わせの写真、素敵ねー!


ミソノ

そうそう、給水塔を見下ろすアングルの写真もあれこれと! 普段は下から見上げることになる給水塔。上から見ると「こんなにたくさんあるの!」と驚きます。もうほんとに、あっちにもこっちにも!



レイラ

1つのビルに1つの給水塔と考えると当たり前なんだけど、あらためて写真で見るとこの数……尋常じゃないわね。


ミソノ

たたずまいも、出発前のロケットみたいに鉄骨の足場に支えられている物、近代的なビルの壁にすっぽりと守られている物……と、いろんなバージョンが。新品は木肌の色もみずみずしく、古いものほど外側が黒色になっているのも、その給水塔が過ごしてきた月日を思わせます。



レイラ

レンガ壁のビルに、木製の給水塔……その向こうの空は淡い色合いで、これは朝焼けかしら。それとも夕焼け?


ミソノ

給水塔写真をじっくり眺めていると、普段は見逃しがちな“おまけ”のある風景が、楽しくなってきます。知らず知らずのうちに日常になじんだ、小さなものの美しさとともに、その下で暮らす人々の様子に想いをはせます。


本日のメイド

ミソノ ミソノ:いつもニコニコ、図書館を影から支える司書メイド。好きなジャンル:絵本、児童書、旅行記、本、紙、図書館
レイラ レイラ:森育ちのツンデレ魔女。お休みの日には愛猫とお気に入りの紅茶でまったり読書。好きなジャンル:文化 ゲーム ファンタジー 魔女 雑学

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