本屋探訪記:出版社ごとの世界観を伝える恵比寿の写真集専門本屋「POST」

BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は出版社というくくりで本を紹介する恵比寿の「POST」を紹介。

» 2015年03月14日 07時00分 公開
[wakkyhr,eBook USER]

世界には出版社がたくさんある

 それは知っていたのだ。だが、こんな素敵な本を作っている人がいるということに感動したのだった。恵比寿にある本屋「POST」でのことである(以下は2014年7月12日の記録だ)。

見たことのない空の写真集

 空の写真は素敵である。そもそも被写体が良いのだから当たり前である。料理におけるハンバーグ。ドラゴンボールにおけるかめはめ波。ワンピースにおけるルフィなのである。鉄板なのだ。

 だからこそ、普通に撮っては凡庸になるのだが、これが世界最高の出版社と写真家の手にかかればこうも素晴らしくなるとは。

世界一美しい本を作る出版社「シュタイデル」

 POSTの奥。そこにはある出版社のコーナーがあった。映画『世界一美しい本を作る男〜シュタイデルとの旅〜』でも知られる有名な出版社、Steidl(以下、シュタイデル)のコーナーだ。

 美しい装丁で有名な同社から刊行されている写真家ウィリアム・エグルストンの写真集『At Zenith』。それが僕が見たことのない写真集だった。

At Zenith

 青を基調とした布製の本で、中央に雲空が絶妙なバランスに写った写真が配されている。何よりも品が良い。一目惚れである。こんな空の写真集があるとは心底驚いた。そして、そんなシュタイデルのコーナーがあるPOSTにも。ある意味、給料日前であったことを喜んだくらいだ。だって、買いすぎてしまうから。

出版社という切り口 1カ月ごとに変わる本棚

 POSTは1カ月ごとに違う海外の出版社を本棚に入れて紹介する珍しい本屋でもある(シュタイデルコーナーはそれとは別に存在する)。出版社という切り口で本を紹介しているのだ。

 しかし、よく考えてみれば本は出版社が出しているものだ。当然出版社ごとに個性がある(小さい出版社ほど特徴がなければ生きていけない)。POSTは、星の数ほどある世界中の出版社の中から、「これは」と思う出版社を1カ月ごとに紹介しているのだ。普段は知る機会の少ない海外の出版社。しかも選りすぐりのものである。本好き、特にアートやデザイン系の本が好きな人には堪らない場所であることは言うまでもないだろう。

無敵の写真集本屋POST

 奥にはギャラリーもある。もちろん写真を展示している。手前の本棚で素晴らしき造本の写真集に舌鼓を打ち、奥のギャラリーでは将来、本になるかもしれない原石を愛でる。POSTは「写真」という切り口においては無敵の本屋なのである。

 恵比寿駅から若干の距離があるが、たまには恵比寿でアート散歩なんてどうだろうか。きっと満足できること請け合いである。

まとめ

  • 品ぞろえ:写真集をメインに海外出版社のアートブック。1カ月ごとに本棚が変わるので要注意
  • 雰囲気:アートが似合うナチュラル木製空間。適度な緊張感が本に対する集中力を上げてくれる
  • 値段:洋書で新刊のため高めのお値段。だが、アートブックを買うのに財布を気にするのはカッコ悪いことである
  • 立地:恵比寿駅から徒歩8分ほど。住宅街にあり分かりにくい場所(東京都渋谷区恵比寿南2丁目10−3)

著者プロフィール:wakkyhr

本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営み、「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。

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