高野文子が初めて手掛けた絵本『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』私設図書館シャッツキステ92冊目

デート企画は無事終了しましたが、連載はもうちょっとだけ続きます。100回以降は新企画も。さてさて、今日はミソノから紹介するようです。

» 2015年03月13日 12時00分 公開
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 木々に小さな新芽がのぞきはじめたこの街に、メイドが営む私設図書館がありました。

 そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。

 今日はミソノからメイドへ、本をおすすめするようですよ。

高野文子が初めて手掛けた絵本『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』

ミソノ

この前の楽しかったデートからあまり経っていないですけど、もう春ですねぇ。


サヤ

春ですねー。日差しが暖かくて。


ミソノ

でも、思ったより風が冷たくて、びっくりして首をすくめちゃう日もあるでしょ? 今日は、まだまだ寒いこんな季節に似合う絵本を開いてみませんか。


『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』(高野文子/福音館書店) 『しきぶとんさん かけぶとんさん まくらさん』(高野文子/福音館書店)

サヤ

おふとんの絵本ですか。「さん」が付いているってことは擬人化ですか?


ミソノ

いえいえ、確かにおふとんやまくらに顔は付いていますが、擬人化ではありません。あくまで彼らはおふとんの形、まくらの形でありながら、私たちを包み込んでくれるんです。


サヤ

この表紙の男の子がおふとんに入るわけですね。ん? 男の子が何かお願いしています。「あれこれ いろいろ たのみます」ですって。


ミソノ

そうなんです。おふとんに入る時にあれこれ「あさまで ひとつ おたのみします」とお願いしてそっと目を閉じると……。


サヤ

お返事は「まかせろ まかせろ おれに まかせろ」ですって。なんと力強い!


ミソノ

例えば、手足が冷えませんように……とかけぶとんさんにお頼みすると、「おれにまかせろ」と受け止めてくれます。


サヤ

このかけぶとんさんの何て穏やかな笑顔! そして、やわらかいピンクのとっても暖かそうな色をしていますね。これなら冷え性の指先もぽかぽかになりそう。


ミソノ

それだけじゃないんです。かけぶとんさんはこうも言っているんです。「ても あしも ひるま ころんで ちのでた ひざも」「なめて さすって あっためて おれが なおしておいてやる」。何て……何て優しく、頼もしいのでしょうか!


サヤ

かけぶとんさんが、膝をなめている! 言葉だけ聞いたらちょっと妖怪じみてますけど、絵がほんわかしてて、あったかみが伝わってきますね。作者の方って、マンガ家さんですよね。


ミソノ

『絶対安全剃刀』や『るきさん』、最近は『ドミトリーともきんす』を発行されて、ファンも多い方ね。そんな方が、初めて手掛けられた絵本がこの作品なんです。シンプルでいて味わいのある線、整理された画面の中にも感じる奥行き……読み手の心にするっと入り込んでくる不思議なやわらかさが、繰り返される短い言葉の心地よさと一緒に、絵本に濃縮されているように感じます。


サヤ

本を読んだり、何をするでもなくごろごろして、ほかほかのおふとんって気持ちいいですよね。


ミソノ

私、おふとんに入る時に笑ってしまう時があるの。


サヤ

えっ?


ミソノ

こんなにやわらかくて幸せな物体に包まれて眠れるのねー! と思うと、あんまりに嬉しくなって。


サヤ

夜に響くミソノさんの笑い声……。


ミソノ

うふふ。でも、そんな気分になれない時も、きっとあるわよね。「昼間、転んでしまったな」「悪い夢を見そう」何て、足先からひんやりしてくる時。そんな時はぜひ、おふとんさんたちに「おたのもうして」みてもらいたいのよ。


サヤ

そうしたらきっと……。


ミソノ

そう。「おれに まかせろ」って包み込んでくれて、素敵な目覚めができるんじゃないかしら。


本日のメイド

ミソノ ミソノ:いつもニコニコ、図書館を影から支える司書メイド。好きなジャンル:絵本、児童書、旅行記、本、紙、図書館
サヤ サヤ:三度のご飯より小説が好きな新米メイド。司書見習いとして、本棚整理などミソノの仕事をよく手伝っている。好きなジャンル:近現代文学、少女漫画

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