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» 2015年03月05日 10時50分 UPDATE

ここは“理想の村”なのか? スペイン南部に存在する“共産主義者のユートピア”

スペイン南部に位置する小さな村・マリナレダはなぜ共産主義者のユートピアなどと呼ばれるのでしょう?

[新刊JP]
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 総務省統計局のデータによれば、日本の失業率は2014年12月現在で3.4%となっているが、海外に目を向けてみると、先進国でも高い失業率が問題になっている国は多い。例えば、イタリアは12.2%、ギリシャは27.3%、そしてスペインは26.1%だ(いずれも2013年のデータ)。

 2012年8月、スペイン南部に位置するアンダルシア州の小さな村・マリナレダの名が世界中に轟いた。村長のサンチェス・ゴルディーヨがスペイン国防省の所有地である農場を占拠したのだ。200人以上の労働者が18日間にわたって野宿し、メディアの注目を浴びた。さらにゴルディーヨとその仲間たちは2軒のスーパーマーケット襲撃を実行する。そして、10台前後のショッピングカートに食料を詰め込み、支払いをせず店をあとにした。

 これらの食料は、ホームレスの人々が不法占拠しているセビリアの集合住宅とカディスの市民会館に寄付された。

 このゴルディーヨの行動は世界に衝撃を与えた。どうしてこのようなことを? それを説明するには、セビリアから東に100キロに位置する、人口2700人ほどのマリナレダという村の歴史と因縁について語らなければいけない。

ここは“理想の村”なのか!? スペイン南部に存在する “共産主義者のユートピア” ここは“理想の村”なのか!? スペイン南部に存在する “共産主義者のユートピア”

 マリナレダ――その村を「共産主義者のユートピア」と呼ぶ者もいれば、「単なる共産主義のテーマパーク」とやゆする者もいる。村に警察はいない、家賃は月15ユーロ、最低賃金の2倍以上の給料がもらえる。そんな村。『理想の村マリナレダ』(ダン・ハンコックス/著、プレシ南日子/翻訳、太田出版/刊)は、ジャーナリストの著者によるマリナレダの闘争の歴史をたどるルポルタージュである。

 1975年、独裁者フランシスコ・フランコが死去し、スペインは民主化の道をたどることになる。マリナレダはそのときからハンガーストライキ(『飢餓によるストライキ』ともいわれる。公共の場などを占拠し、座り込みなどを行う)を繰り返し、土地と自由を手に入れるための戦いをはじめる。そして、1991年、スペイン政府はインファンタド公爵の土地1200ヘクタールをマリナレダに与えたのだ。

 その中心人物であるゴルディーヨは、1979年にマリナレダ初の村長選挙で勝利して以来、圧倒的な支持を受けて当選を重ねてきた。尊敬する人はチェ・ゲバラ。彼が行動を起こすたびにこぞってメディアが注目し、称賛と批判を浴びてきた人物だ。

 ゴルディーヨが築き上げた“共産主義のユートピア”マリナレダは資本主義の中の「異端的存在」以上にならないのか、それとも「目指すべき道」となるのか。

 景気がいいときは誰もマリナレダに注目しない、危機が訪れるたびにみんながマリナレダに集まるとマリナレダ議会の若手議員は指摘する。20代半ばの青年の「今回の危機は経済危機であり、政治危機であり、腐敗による危機であり、国全体の危機なんだ」という言葉は、スペインの状況をはっきりと示している。しかし、その一方で彼は、マリナレダが、ゴルディーヨが成し遂げてきたことを誇りにしている。そして「こんな資本主義の危機なんて、なんてことないさ」と言い放つのだ。

 「理想の村」というタイトルに、心魅かれるかもしれない。「ユートピア」という言葉に、のんびりとした田舎の村の風景を思い浮かべるかもしれない。しかし、平和と安らぎだけを求めて本書を読まない方がいいだろう。本書の原題は“THE VILLAGE AGAINST THE WORLD”(世界に対抗する村)である。

 では、村人たちの生活はまったく描かれていないのか、というとそうではない。神父がいない教会、仕事や家をもてる可能性の高い若者、無線インターネットは無料、保育所は子どもたちの食費も込みで月12ユーロなど、魅力的な記述が並ぶ。

 失業率が高いスペインにおいて“異端”ともいえるこの村の存在が、今後世界にどのような影響を与えるのか。あまり注目されてこなかった、この“ユートピア”を知るための重要な一冊である。

(金井元貴/新刊JP編集部)

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