インタビュー
» 2015年02月24日 11時30分 UPDATE

大仏の首を切り落とした住職 (1/2)

日本各地の「巨大仏」を巡るクロスケさんインタビュー。

[新刊JP]
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 日本人なら見たことがない人はいないのが「大仏」。

 奈良・東大寺の大仏や鎌倉の大仏は修学旅行の定番ですが、ただ記念写真を撮って、拝んで帰るだけではもったいない!

 『巨大仏巡礼』(扶桑社/刊)は、日本中の大仏を巡る「大仏ハンター」のクロスケさんが、全国津々浦々のユニークな大仏たちを迫力満点の写真とともに紹介してくれる一冊。巷ではほとんど知られていない秘境の大仏や、あの有名な大仏の楽しみ方を教えてくれます。

 今回は、クロスケさんご自身にご登場いただき、大仏の魅力について語っていただきました。

大仏の首を切り落とした住職 大仏の首を切り落とした住職

―― クロスケさんの著書『巨大仏巡礼』について、お話をうかがえればと思います。まずはクロスケさんが「大仏ハンター」の活動をはじめた経緯を教えていただけますか?

クロスケ 僕は元々、灯台やダムといった、いわゆる「巨大建造物」が好きで、大仏というのはその中の一つでしかなかったんです。

 ただ、2003年に勤めていた会社を辞めて時間ができたものだから、当時乗っていた軽のワンボックスをキャンピングカーみたいに寝泊まりできるように改造して、嫁さんと二人で“日本二周旅行”に行ったことがあったんです。当初は一周で終わらせるはずだったんですけど、終わった時に物足りなくてもう一周。

 その時の感覚からすると、大仏や大観音って日本に20体くらいはあるのかな、という感じだったのですが、その旅行のなかであてどなく車で回っただけで40体以上の大仏や大観音を見ることができたんです。

―― 特に大仏を探して旅していたわけではなく、たまたま見つけたものが40体。

クロスケ そうです。面白かったのが、大仏といっても古いものばかりではなくて、僕は今40歳なのですが、自分が生まれた後に建立されたものも多かったことです。平成に入ってから造られたものも幾つかありましたし。

 これっておかしいじゃないですか。21世紀の世の中で新しく大仏が必要になる理由ってそんなに思いつかないでしょう?

―― 確かに、建て替えならともかく、新しく造る理由は分かりませんね。

クロスケ そうなんですよ。しかも、それがお寺にあるならまだわかるんですけど、町中とか変な場所にある。これはなんでだろう?と思ったらいてもたってもいられなくなってしまったんです。

 それで、“日本二周旅行”が終わった後、自営業になったのですが、自営業は時間が作れるので、嫁さんと一緒にあちこちの大仏を回りはじめたら本格的にハマってしまった、というのが始まりです。

―― 本書を開くと、単に「大仏」とひとくくりにできないほど、大きさも姿勢も色も様々な大仏が掲載されていて、驚かされました。

クロスケ 本当にいろいろですよね。本の中にも書いたんですけど、「仏像」が「歴史」だとしたら、「大仏」は「地理」なんですよ。

 どういうことかというと、例えば法隆寺の「百済観音」は、1000年以上前に作られたものですから、どうしても歴史的な視点で見てしまいますよね。

 でも、大仏の場合は秩父に行くと「秩父太平洋セメント」があるせいかコンクリートでできた大仏が幾つもありますし、愛知県の東海市には「新日鉄住金」の製鉄所があるから錆びた鉄風の大仏がたくさんあります。また、富山県の新湊市は三協アルミというアルミ製造の会社があって、総アルミ造りの弁財天があったりする。要は地場産業との関係が強いんです。そういう意味で、大仏を見ると「地理」がわかるんです。

 ただ、「林業」だけは別で、林業が盛んな土地に木造の大仏があるかといったら、あまりなかったりします。大仏を造る工場に行ってお話を聞いたことがあるのですが、斬った木材を使って像にするまで、乾燥させたり、製材したりで35年くらい掛かるそうです。

―― なるほど。

クロスケ 「木」という素材でいうと、富山に高岡大仏っていう、夜になるとライトアップされる有名な大仏があるのですが、今の大仏は三代目なんです。初代と二代目は木造だったせいで、火事で全部燃えてしまったんですよ。

 高岡って、さっきの地場産業でいうと銅器や青銅器の製造が盛んなんです。そういう土地柄ですから、今度こそ絶対に燃えない大仏を造ろうとなって、高岡の銅器職人が集まって造ったのが今の青銅の大仏です。

 ちなみに、二代目が火事で燃えた時、当時の住職がどうしても燃やしたくないといって、ノコギリで首を切り落として守ったんですよ。その頭の部分は今の大仏の胎内にあります。

 「歴史」は燃えてしまうけど、「地理」は燃えないで残りますからね。これが面白い。

―― これまでに400体以上の大仏を訪問してきたとされるクロスケさんですが、この本に掲載する大仏を選ぶにあたっての基準のようなものはありましたか?

クロスケ ひと言で言うと、見た人がびっくりするような大仏を選ぼうと思っていました。

単純にものすごくデカいというのもありますし、あとは前から対向車が来たらどうしようと思うような細い山道を登った山頂に巨大な大仏が現れたら、やはりびっくりするじゃないですか。

―― 「どうやって材料運んだの?」という。

クロスケ そうです。コンクリートなら水と砂利を持っていけばいいから楽ですけど、青銅製ともなると、本当に「どうやって造ったんだ?」となりますよね。

 やっぱり、読んでくださった方によろこんで欲しいので、そういう驚きを感じられる大仏を選んでこの本に載せています。

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