BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は下北沢の「クラリスブックス」を紹介。
下北沢に本屋が増えていることをご存じだろうか。
3年前にできたばかりのB&Bや、同時期にできたJuly Books、気流舎などここ数年で独立系本屋が下北沢に増えてきている(ピリカタント書店やフィクショネスのようにその陰で閉店するお店ももちろん多い)。
今回お邪魔した「クラリスブックス」は2013年12月に開店した店である。下北沢一番街にあるギャラリーHANAの2階にあり、通りから外れた場所に見える「本」の文字に誘われてビル横の階段を昇ると到着だ(以下は2014年5月4日の記録だ)。
クラリスブックスは3人体制で本屋をやっている。アルバイトではなく全員がクラリスブックスの開店メンバーだ。
この「3人でやる」ということが店の品ぞろえにちょうど良いバランス感覚を生み出している。担当がそれぞれ分かれており幅広い品ぞろえながら深みもある。クラリスブックスの良いところだ。
面白いのが店主・店員の来歴。話を聞くと以前は神保町の某古書店で働いていたらしい。そこで一念発起し先輩後輩を誘って開いたのがクラリスブックスというわけだ。
通りからちょっと外れた場所にある建物の2階という立地ゆえに、値段というよりは、オシャレな雰囲気と単価で勝負している。とはいえ、意外とお買い得な本も多いのが素敵だ。壁はほぼ本棚で、一部は店舗の外にまではみ出ているのだが、一部テーブルなどに違う什器を使うことでお客さんを飽きさせない工夫がなされている。
クラリスブックスの品ぞろえは素晴らしい。下北沢という立地にありながら神保町的な古書があり、それでいて入りにくかったりマニアックな雰囲気を醸し出すわけではない。自然体な本屋なのである。
どんな本があるか。具体的な書名を少しばかり紹介しよう。
例えば、店長は哲学に強みがあるらしく『夜戦と永遠(ハードカバー)』『群島-世界論』『孤独の哲学』などといった本がある一角がある。そうかと思えば、荒木経惟や鈴木心、栗津潔、川内倫子などビジュアルで魅せる本が飾られたガラスケースもある。種村季弘、金井美恵子、荒川洋治などの日本文学もしっかりあるが、入口近くの文庫・新書のコーナーも秀逸だ。若干の偏りはありながらもオールジャンルの取り揃え。
下北沢的ポップと神保町的クラシックがうまく同居したような品揃えなのである。
そう。神保町出身だからといって昔ながらの古書店のように頑固一徹というわけではないのだ。
お客さんが持ち込んだリトルプレスも置いてあり、読書会やトークショーイベントなど店にひとりでも多くのお客さんが来るような仕掛けも用意している。SNSの活用も熱心だ。
神保町とはお客さんの種類が全く違うから試行錯誤しながら下北沢という街と向き合っている。そうやってクラリスブックスは「面白い本を読んでもらいたい」という気持ちを柔軟に伝えようとしているのだ。
「本を売って生きていく」
店主の言だがまじめにこの思いを実現するために商売をしているのだ。読書会などイベントもあくまで「本を売るため」なのである。もちろん他の本屋も同じことを思っているのだろうけど、自分の耳で直にそういうことを聞けたことは嬉しかった。ファンになってしまいそうである。クラリスブックス。かっこいい古本屋だ。
本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営み、「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。
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