本屋探訪記:サブカルくそ野郎、再び! 大阪「シカク」

BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は大阪で知る人ぞ知るリトルプレスの聖地「シカク」を紹介。

» 2015年01月17日 10時00分 公開
[wakkyhr,eBook USER]

大阪的タコシェ

 中野にある「タコシェ」をご存じだろうか。元はサブカル漫画雑誌の代表格『ガロ』のアンテナショップから始まったこの店は、新刊はもちろんリトルプレスや雑貨も置いてあるのだが、その品ぞろえがスゴイ。模索舎とはまた異なる意味でリトルプレスの聖地であり、まさにマニアのためにあるようなそんな店なのだ(詳しくはタコシェの回を参照)。

 ある日、知人から大阪にも似たようなお店があると聞いたのでさっそく行ってみた。だってそんな面白そうなお店を放っておくわけにはいかないのだ(以下は2014年3月9日の記録だ)。

薄暗い中津商店街の中(稲川淳二風にお読みください)

 目的地のシカクは阪急中津駅から徒歩5分ほどとのことで下車すると……静かです。梅田駅からさほど離れていないはずなのにこの人っ気のなさはなんなんでしょうねぇ。

 不安になりながらもiPhoneのマップを頼りに進んでいくと薄暗い商店街。いや知ってますよ。さほど大きくもない土曜日の商店街なんてこんなものですよ。ええ。でも真っ昼間からなぜこうも薄暗いのかと不思議になるわけですよ。それでね、あたし、思ったんです。これは何かあるって。でもね。行かないわけにはいかないじゃないですか。

 あたしはもう「うわぁ〜やだなぁ〜こわいなぁ〜」なんて思いながらどうにか踏み入れましたんですよ。えー足を。そろそろっとね。

 ……そうしたら、あったんですよ。

猫がいる本屋

 商店街のあまりの薄暗さに思わず稲川淳二風になってしまったが、入ってみれば何のことはない。普通の商店街である。

 この商店街に入ってすぐ右手にあるのがシカクだ。入るとなぜか金網のドアがある。可愛らしい猫の写真と共に「猫が外に逃げないように閉めてください」との文字。

 猫?

 そう、シカクには猫がいるのだ。エアコンの吹き出し口の前。お気に入りの場所に堂々と鎮座していらっしゃる。暖房の吹き出し口前がお気に入りらしいがこのときは本の上。良いんですかね。良いんでしょうね。

 猫と本。これ以上ないくらいの最高の取り合わせだ。しかも愛想が良い。まさに看板猫である。僕もほかのお客さんと同様に惚れ込んでしまったことは言うまでもない。

壁一面のリトルプレスコーナー

 店内は宝探しをしたくなるようなカオス。整理されていないように見えてしっかり見やすい構成。絶妙である。

 そんな中で、最もタコシェ的と言えるこの一角。

『奇刊クリルタイ』や『あざらし君』『オカルトスポット探訪マガジン 怪処』『八画文化会館』など見たことも聞いたこともないようなものばかりが並んでいる。個人の止むに止まれぬ情熱が迸った名(迷?)リトルプレスが盛りだくさん。その熱気に圧倒されてしまった。

かに文庫といか文庫

 さらに、東京で活動する本屋を持たない本屋「いか文庫」。これの大阪的返答ともいえるかに文庫が入口すぐそばにある。

 ほぼ全商品にかに(?)からの推薦コメントが付けられた謎のこの企画。なぜカニなのか? イカへの返答ならタコじゃないのか? 疑問は尽きないがなんにせよ面白そうなものはとりあえず取り入れる。その姿勢は素晴らしい。

知る人ぞ知る大阪的リトルプレスの聖地

 冒頭、中野にあるタコシェの話をした。リトルプレスと雑貨の混ざり具合、そしてどう考えてもマニアックでサブカルな品ぞろえがよく似ているからだ。

 とはいえ、シカクは大阪的でもある。マニアックさがそこまで極端でなくもっと「面白さ」が重視されているような。まるで大阪の商店街的なわい雑さ。タコシェも相当ユルいがシカクにはまた別種のユルさがあるように思う。

 何を言っているか分からないかもしれないが、もしあなたがサブカルくそ野郎的な要素を少しでも持っているなら楽しめることは間違いないだろう。

著者プロフィール:wakkyhr

本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営み、「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。

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