インタビュー
» 2015年01月08日 11時30分 UPDATE

「キレそうな時」のとっさの対処法

人生をもっと豊かにする感情コントロール法とは。『イラッとしない思考術』の著者安藤俊介さんにお話をうかがいました。

[新刊JP]
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 仕事でも、家庭でも、イライラすること、腹立たしいことってありますよね? でも、そのたびに怒っていたら体が持ちませんし、かといって溜めこむのもストレスになります。

 何とか上手に怒りやイライラと付き合いたいものですが、これは決して不可能ではありません。『イラッとしない思考術』(ベストセラーズ/刊)の著者、安藤俊介さんによると、怒りも苛立ちもトレーニングによってコントロールは可能なのだとか。では、そのトレーニングとはどのようなものなのか、安藤さんに聞いてみました。

「キレそうな時」のとっさの対処法 「キレそうな時」のとっさの対処法

―― 『イラッとしない思考術』についてお話を伺えればと思います。かつては安藤さんご自身もイライラしやすい性格だったということですが、例えばどのようなことにいら立っていましたか?

安藤 仕事での人間関係についていら立つことが多かったですね。僕は以前、ある会社で新規事業を立ち上げる部署にいたんです。新規事業っておうおうにして、既存事業に関わっている人からは「また金にもならんことを……」という目で見られるわけで、反対勢力が大きいんですよ。たとえ社長の肝いりで始めた事業だとしても、他の人はみんな反対しているということも珍しくありません。新しいことをやらないと会社はジリ貧だとわかっているのに、社内の反対勢力との調整に労力を割かなければいけないという状況にはすごくイライラしていました。

―― 私生活の方はいかがですか?

安藤 私生活の方はそこまでイライラすることはなかったですね。仕事がほとんどでした。

 ただ、僕自身は社会に出てからイライラしやすくなったのかなと思っていたのですが、友人に聞くとどうやらそうではなくて、子どものころからそういうところはあったみたいです。だから、自分で気付いていなかっただけで、普段からイライラしていたのかもしれませんね。

―― そんな安藤さんがイライラしなくなったきっかけが「アンガーマネジメント」だったということですが、「アンガーマネジメント」とはどのようなものですか? 基本的な考え方を教えていただければと思います。

安藤 勘違いされがちなのですが、「アンガーマネジメント」を行うことで「怒らなくなる」わけではありません。怒ることが必要な場面というのはありますし、怒らないといけないこともありますから。

 ではアンガーマネジメントの目的は何かというと、怒るべきことについては上手に怒れるようになり、怒らなくてもいいことついては怒らないようになる、その線引きができるようになることなんです。

 普段、我々は怒っても怒らなくても後悔しがちで、それはこの線引きができていないからです。怒るべきことと怒らないことを判断できるようになれば、こういう後悔はなくなっていきます。

―― 今おっしゃった「線引き」についてですが、そこで「怒る必要がない」と判断されたことはどうなりますか?あまり気にならなくなるということでしょうか。

安藤 アンガーマネジメントは基本的に「衝動のコントロール」「思考のコントロール」「行動のコントロール」の3つで構成されています。

 衝動のコントロールは、簡単にいえば「イラッとしても、反射的に行動しない」ということで、思考のコントロールは「そもそもイライラしなくなるためには物事をどう考えればいいか」ということです。最後の行動のコントロールは「それでもイライラしてしまった時はどうするか」ということですね。

 この順番にアンガーマネジメントのトレーニングは進んでいきますから、最初はイライラした時に反射的に行動しなくなります。それができてくると、今度はイライラしない考え方ができていき、最後には自分の感情をコントロールしたうえで適切な行動や表現ができるようになっていきます。

―― 最初にクリアしないといけない「衝動」ですが、イライラした時に反射的に怒りをぶつける行動をしないためのポイントはありますか?

安藤 私たちは「6秒ルール」といっているのですが、「イラッとしたらとにかく6秒待ちましょう」と指導しています。

 感情にはいろいろな役割があるのですが、その1つが、体からホルモンを出させるというものです。例えば「怒り」を感じると、体からアドレナリンが出ます。秒数については諸説あるのですが、アドレナリンが出て、それが体中の隅々まで行き渡り、吸収されて消えるまで大体6秒くらいだとされているんです。

 この間は、生物学的に体は怒っている状態であり、これより後はもう身体的には怒っていないという状態になります。だからこの6秒間をしのげれば、怒りによってまちがった行動を取ってしまう可能性を減らすことができ、よりよい選択ができるチャンスが広がるということですね。

「怒り」をエネルギーに変えるためにすべきこと

―― 本書には、日常生活のさまざまな場面に潜む「イライラ」への対処法が書かれています。仕事はイライラすることがたくさんあるものですが、取引先など社外の人に対してイライラした時はどんな対処法が有効ですか?

安藤 これは「行動のコントロール」にあたりますね。物事には「自分で変えられること」と「自分では変えられないもの」とあって、それぞれ「重要なこと」と「重要でないこと」がありますから、「重要かつ自分で変えられること」「重要だけど自分で変えられないこと」「重要でなくて、自分で変えられること」「重要ではないし、自分で変えられないこと」の4つに分類できるわけです。

 これでいうと、取引先など社外の人へのイライラというのは、ほとんどの場合「重要だけど自分で変えられないこと」にあたります。だから、もう受け入れるしかなくて、そのうえで自分に取りうる選択肢を考えないといけません。

 こういう時にやってしまいがちなのが、「取引先の担当者が変わらないかな」とか「あの人いなくならないかな」と祈ることなのですが、これは逆効果です。かえってそのことに考えがとらわれてしまう。

―― 怒りやすい、イライラしやすいと悩む人がいる一方で、怒れない自分を変えたいと思っている人もいます。怒るべき時にきちんと怒れるようになるためにはどうすればいいのでしょうか。

安藤 これは、まず思い込みを外すことでしょうね。

 日本では、家庭でも学校でも「怒ってはいけない」と教えられますから、「怒ることはダメで、恥ずかしいこと」という思い込みが根深くしみついていて、怒りをなかなかうまく表現できない人が多いんです。

 でも、実際は怒ることって、人間関係を悪くすることではありませんし、嫌われることでもありません。この思い込みを少しずつ外していくのが、適切に怒れるようになるための第一歩だといえます。

―― 怒り方の「さじ加減」も難しいところです。

安藤 そうですね。一番いけないのは、怒る基準が一定ではなく、「機嫌次第」になってしまうことです。

 ある日は遅刻しても怒られなくて、ある日は5分前に来ても遅いと怒られるというのでは、怒られる方はなぜ怒られているのかがわかりませんし、「結局、機嫌次第なんだな」となってしまいます。

 ですから「定刻に間に合ったのなら、どんなにギリギリでも許す。でも定刻から1分でも遅れたら怒る」という風に自分のなかでルールを決めておくことが、上手に怒るカギになります。

―― 家庭にもイライラの種があります。私も家庭内でよく口喧嘩をしてしまうのですが、きっかけはささいなことです。ささいなことから大きな喧嘩に発展させないためにできることはありますか?

安藤 私たちが怒る理由って、すごく単純化して言ってしまうと「自分が信じている“こうあるべき”ということが裏切られた」ことなんですよね。

 今のお話でいえば、「妻はこうあるべき」あるいは「こうあってほしい」というのがいちいち裏切られるから腹が立つわけです。これは相手も同じでしょう。

 だとすると、自分と相手がそれぞれにどういう「こうあるべき」を持っているかというのを知っておくことが大事です。そのうえで互いの「こうあるべき」の程度を、できる限り合わせておくことですね。

 例えば「家事は夫婦で協力してやる」ことについては双方同意していたとしても、「どれくらいやればいいのか」という程度は、おそらく夫と妻では認識が違うでしょう。これでは、やはりもめてしまうわけで、お互いどれくらい家事をやるかということをすり合わせて必要があるんです。

―― 第5章は普遍的な内容で、心に留めておきたいことばかりです。「イライラしない思考法」ができる人というのは、もともと性格的に温厚なのではないかという気もしますが、こういう思考法は後天的に身につけることはできるものなのでしょうか。

安藤 もちろん身につきます。持って生まれた性格も大きいのですが、後天的な要素もすごく大きいと思います。

 私たちが生活のなかで歩いたり話したり感情を表現したり、さまざまなことをしますが、これらは全部後天的に学んだものですよね。

 特に感情表現の部分は基本的に親のコピーですから、後からトレーニングすれば「イライラしにくい思考」に変えていくことができます。

―― 「怒り」によって集中力を乱される人がいる一方で、「怒り」をエネルギーに変えられる人もいます。両者のちがいはどんなところにあるのでしょうか。

安藤 これは感情の捉え方のお話になります。

 集中力を乱されてパフォーマンスが下がっている時は、怒りや不安といったマイナスの感情に支配されていて、逆に集中できてパフォーマンスが上がっている時は、心の中が喜びや楽しさといったプラスの感情に満たされると考えている人が多いのですが、これはまちがいです。

 心がプラスの感情で満たされてしまうと、人はリラックスしきってしまいますから、むしろパフォーマンスは落ちます。「哀しみ」や「怒り」といった感情をうまく使っていかないと、パフォーマンスは上がっていかないんです。

 その意味では、怒りは人間にとってごくごく自然な感情なので「マイナスの感情」と決めつけないことが大事だともいえます。

―― 最後になりますが、読者の方々にメッセージをお願いできればと思います。

安藤 イライラしやすい人も含めて、ほとんどの人は「自分の感情をコントロールする」という発想を持っていません。

 ただ、感情はトレーニングさえすれば、どんな人でもある程度はコントロールできるようになります。さっきの話ではないですが「怒り」というマイナスの感情も上手に扱えるようになり、自分を動かすエネルギーにしたり、モチベーションにできるようになるんです。

 だから、まずは「自分の感情は自分でコントロールできる」「自分の感情は自分で選べる」ということを知っていただきたいです。そのうえでトレーニングをしていけば、誰かが悪いとか、世の中が悪いとか、怒りを何かにぶつける必要はなくなります。そうなれば、人生はもっと豊かに楽しくなっていきます。

(新刊JP編集部)

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