インタビュー
» 2014年12月25日 10時50分 UPDATE

「反対の声が多いときほどチャンスはある」“革命児”のビジネス思考術とは?

「Loppi」開発にたずさわり、チケット販売に革命をもたらした小林俊雄さんインタビュー

[新刊JP]
新刊JP

 スマホ一台で飲食店のサービスは変わる――そう断言するのは、アスカティースリー株式会社代表取締役の小林俊雄さんだ。ダイエーに入社後、新人で売上1位を記録、新規事業を担当した際にはローソンの「Loppi」の開発にたずさわり、チケット販売に革命をもたらした。

 そんな小林さんが現在普及に取り組んでいるのが、タッチパネル式オーダーシステムだ。飲食店で見かけたことがある人も多いのではないか。

 小林さんの著書『「超一流のおもてなし」は、スマホ一つでできる。』(自由国民社/刊)は“ブラック”色が強いといわれる飲食業界を変えるための方法や、「おもてなし」の意味などを説明した一冊だ。

 新刊JPは小林さんにお話をうかがうことができた。

(新刊JP編集部)

反対意見が多いビジネスほど成功のチャンスがある

「反対の声が多いときほどチャンスはある」“革命児”のビジネス思考術とは? 「反対の声が多いときほどチャンスはある」“革命児”のビジネス思考術とは?

―― まずは小林さんの経歴についておうかがいします。小林さんは学生時代に伊勢丹で働き、その後ダイエーに就職され、バイヤーとしてご活躍されます。ダイエー時代には新人のときに売上全国一位を達成したり、地方に転勤になって挫折を味わったりもするわけですが、ダイエー時代のお仕事で最も印象的なエピソードを教えて下さい。

小林 おっしゃるように、わたしは伊勢丹で学生社員という形で働いていたことがあったので、商売の感覚をダイエーに入社する頃にはもう持っていたと思いますね。学校の授業が終わってから伊勢丹に出社して、3時間ほどバイヤーにノウハウを教えてもらうんですよ。

 だから、ダイエー入社直後、赤羽店の家電販売のセクションに配属されたときも、利益の出し方を知っていたのですぐにトップになりました。

―― 新人でトップというのはすごいですね。

小林 でも一人では圧倒的な数字は作れないので、仲間づくりは意識してやっていました。例えば本社のバイヤーと仲良くなるとか。また、出勤する前に、購入見込みのある家にビラを配るというような他の店ではしていないことも率先してしましたね。当時はそういったことはあまりなかったので。

―― なるほど。

小林 普通なら与えられた数字をいかに達成するかということを考えますが、わたしの場合は、いかに利益を作るかというゲーム感覚で仕事をしていました。与えられた目標の倍くらいには届かないと面白くない、と(笑)。目指すところがすでに他の人たちとは違うので、出てくる結果も当然違ってきます。

 そうやって際立った存在になると、いろんな人が寄ってきて「今度一緒に仕事しましょう」と声をかけられるようにもなりました。一方でわたしを嫌がる人も出てきましたが、それはあまり気にしませんでしたね。

―― そういった仲間作りをするのは大変だったのではないかと思うのですが。

小林 もともと学生時代にそのような活動をしていたんです。例えば学生を集めてスキーツアーを開催したときがあって、まず講師役としてスキーが得意な人(スキー部部員)を探し、さらに旅館との契約をして……とやっていくと、どうしても一人ではできない。参加者の募集もかけられないですから。そういった中で、いろんな人を巻き込んで一緒に仕事をするためのノウハウを学んだのだと思いますね。

―― 仲間に誘う時の口説き文句はあるのですか?

小林 具体的なものはないですが(笑)、どんなことでも、ゴールの先を示すことは大事ですね。ビジネスならば、トップを取ることを通過点と捉えて、その先を見せるといいましょうか。トップになることがゴールではなく、その先に何があるかということを語るのです。

―― 本書でも書かれていますが、山形県鶴岡市の新規開店の際に挫折を味わったというのは、その華々しい経歴からすると意外でした。

小林 それまでの成功体験があまり通用しなかったんです。マネジャーに昇格して、(山形県)鶴岡の新規店に赴任したのが23歳とか24歳頃だったのですが、普通であればマネジャーになるのは34、35歳くらいなんですね。

―― それは異例の早さですね。

小林 そう。だから部下はほとんど自分よりも年上なんですよ(苦笑)。マネジャーのメインの仕事は部下を育成したり、評価をしたり、あとは責任者ですよね。クレームを受ける仕事は多かったです。

 東北の方々はすごく我慢強いので、クレームを入れてくるというのは、よほど怒っているときなんです。また、赴任してすぐなので方言も分からない。言われていることが理解できず、とても情けない状態でした。また、部下の人たちの多くは地元出身ですから、どうしてもよそ者扱いされてしまう。そんな日々が続きました。

 ただ、1年半(鶴岡に)いたと思うのですが、最後はみんなすごく慕ってくれるようになりました。あのときの苦い経験は、その後にすごく活きています。

―― 小林さんのダイエー時代のお仕事の中でも特に目を引くのが、(当時ダイエーの子会社だった)ローソンの「Loppi」を企画開発されたことです。こちらはどういう経緯で携わることになったのですか?

小林 1990年代のはじめのころですね。当時、ダイエーの中で、情報通信部門の収益が伸び悩んでいたので、そのことを創業者でありCEOであった中内で(功)さんに進言しました。「じゃあ、君がやってみろ」と直接言われた訳ではありませんが、1カ月後に情報通信部門の責任者への異動辞令来てしまったのです。

 まだコンピューターというものが一般的に普及していなくて、今のように一家に一台以上というような社会は想像もできない。一台70万円、80万円もするような時代ですよ。ただ、世の中のトップを走っている人たちは、やはりコンピューターがいずれ社会を変えるということが分かっていたようです。中内さんも「コンピューターは数年後には家庭に入ってくる」と予見されていました。

―― トップを走っている人たちは先見の明がありますよね。

小林 そうなんですよね。また、インテルさんやマイクロソフトさんといった現在のメガ企業は、当時そこまで大きくなくて、トップクラスの方がすぐに会ってくれたりしていたんです。

 彼らが語っていたことは非常に魅力的な未来で、わたし自身もその話を通して、コンピューターが流通を変えるだろうということに気づきました。彼らはわたしをヘッドハンティングしようとするんですよ(笑)でも、わたしが(ダイエーに)辞表を出しても会社は受け取ってくれない。そこで「君は何がやりたいんだ?」と聞かれて、やりたいことを話すと、そのための会社を作って頂いたんです。

―― その中ではどのようなことをされたのですか?

小林 新規事業としてインターネットを活用しての販売事業などを行いました。実はロッピーの開発もその新規事業の1つです。チケットを予約する機械ですね。これはものすごくヒットしまして、3年間で450憶円ほどの取扱高になりました。

 当時、チケットといったら「ぴあ」さんのプレイガイドという状況で、土曜日の朝になると人々が並んで買うというのが当たり前でした。今はインターネットや電話で購入することができますが、そのときはプレイガイドでの店頭販売が基本でした。コンビニでの取り扱いはほぼゼロでした。

 そこで24時間、予約したチケットを何処のローソンでも受け取れるというシステムを導入しました。最初、ローソン本部からは大反対されましたが、少しずつ歩み寄っていって、なんとか開始に漕ぎ着けましたね。利用者のニーズがあることははっきり分かっていたので、始まれば上手くいくと思っていました。

―― 小林さんの中で、新しくビジネスを始める際に「やる」「やらない」の基準はどこに設けているのですか?

小林 1つはそのサービスを通してハッピーになるのは誰かということを考えます。また、反対意見が出てくるものもチャンスです。誰もやっていないけれど明らかなニーズがあるというビジネスは可能性があります。少しくらい失敗しても、その分成功したときは大きいですからね。

飲食業界のブラック化は「IT」が食い止める!

―― 小林さんは現在、飲食業界を中心に、タッチパネル式オーダーの普及に努めていらっしゃいます。わたしも使用したことがあってとても便利だと思いました。この発想はどこから出てきたのですか?

小林 まさにニーズがあったからということが大きなポイントですね。サービスを充実するために、いわばコンシェルジュ的な要素は必要不可欠で、お客様にあった情報を提供できれば一番良いのですが、そういった人材を育成するというのはとてもコストのかかることなんですね。また、お客様も個人の好みは変わるものですし、「こんなサービスもありますよ」と押し付けられると嫌になってしまう人も多いと思います。

 それを解決できるのがITだと考えました。さらに、ちょうどその頃、外食産業に個室ブームが到来して、お客さんにあまり過剰に接しないお店が人気を集めるという現象が起きたんです。これはチャンスではないかと思ってお客さんにインタビューをしてみると、「あまり店員さんから『注文いかがですか?』と聞かれるのは好きではない」という声が若い女性層から上がったんですね。

 一方で、飲食というくつろぎの空間にコンピューターが入ってくるのは考えられないという声も上がりました。ただ、エンドユーザーからはそういったシステムが欲しい、と。「これはロッピーのときと同じだな」と思いました。

飲食業界のブラック化は「IT」が食い止める! 飲食業界のブラック化は「IT」が食い止める!

―― 昔の経験と重なったのですね。

小林 そうなんです。他にも、システム開発面などで大きな壁があったのですが、それらを乗り越えて実現への目処が立ちました。最初の一年半くらいはシナリオ通りに進んでいた感覚ですが、商品が実装されて、マスコミが注目してからは早かったですね。この部分の話はとても面白いので、いつか本にまとめることができればと思っています(笑)。

―― 飲食業界というと、やはりブラックであるという風潮が強いと思いますが、その点、小林さんはどのように思っていますか?

小林 生産性がなかなか上がらないことが、ブラック化してしまう一番の原因だと思いますね。基本的に長時間労働ですし、休日にも働かないといけない。でも、利益は大きく残らないのでその分所得も低くなる。だから、いかに生産性を上げるかというところがカギであり、ITを活用することが重要になるのです。

―― ブラックの風潮が強い企業の多くは精神論で乗り越えていく感覚がありますね。

小林 そうなんですよね。精神論や仕組みの部分で生産性が悪いのを補っていく。ただ、そうすることで現場が疲弊をしてきて、良いサービスをする余裕がなくなってきます。生産性を上げるための工夫もできなくなる。するとお客さんからのクレームにもつながる。

―― 人間対人間のサービスにITを介入させるのは難しいという先入観があるのでしょうか。

小林 ただ、それを続けていくと、結果的にブラック化してしまう。従業員側に余裕がないと、お客様が何を要求しているかも把握できなくなるわけですから。従業員も人間です。ただ、現在でもやはり「接客」の部分にITシステムを入れるということに対してあまり良い顔をされないことはありますね。

 わたしはそうした先入観を払しょくするために、セミナーを開いたり、今回のように書籍を出したりしています。生産性も上がるし、従業員の満足度も上がる、お客様の満足度も上がる。そしてリピーターが増えて、回転率が上がる……。こういうシナリオを見ることができるわけです。

 もちろん、ITを導入して従業員を削減するというような考え方では上手くいきません。お客様とともに働く人にもメリットを渡せないと、経営は上向かないですよ。

―― 本書は「おもてなし」が大きなキーワードになっていますね。

小林 「おもてなし」は日本人の心ですから。海外から見ると、日本の「おもてなし」は驚くほど洗練されていると見えるようです。ただ、「おもてなし」は精神的に余裕がないと難しい。余裕がないとお客様が何を望んでいるのかも見えなくなってしまいます。

―― 他にIT導入の利点を教えていただけますか?

小林 IT化の役割の1つにデータを蓄積できるという点があるんですね。データを使って接客を改善するのにも役に立ちますし、そのお客様に合ったサービスを提供できるようになりますよ。

―― 本書をどのような方に読んでほしいとお考えですか?

小林 飲食に携わっている方々の中でも、経営者や店長クラスの方々ですね。「アルバイトが3日で超一流のおもてなしを身に付けられるなんて嘘でしょ?」と思う人もいるかもしれませんが(笑)、読んでもらえると、その意味が分かると思います

―― では最後に、このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

小林 ここ1年間で一気にスマホやタブレットが活用されるようになりましたが、今後さらに進化していきます。その進化に伴って、お店の売上にも貢献できる武器になっていくと思うのですね。

 ITを導入し、サービスの質を上げることがお客様の満足度を上げるために最も重要なことです。そういったことにまだ気づかれていない経営者もたくさんいるように思います。この本をきっかけにして、みんながハッピーになるビジネスを展開し、経営基盤をより強化して、働く方々が幸福になって頂けると大変嬉しいですね。

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