19歳の私を殺したのは誰? 教えて――『デッドコピー』電子コミック・プチレビュー

「記憶を保存できる世界」で、14歳の少女は、19歳の女性として目覚める――。『デッドコピー』はSFマンガですが、サスペンスの要素もあり、小説を読むように楽しめる作品です。

» 2014年12月19日 10時00分 公開
[新崎幸夫,ハートコミックス]

 今回ご紹介する『デッドコピー』は、SFの物語。ストーリー構成がよく練られており、サスペンスの要素もあるので、小説を読むような感覚で楽しめる作品になっています。

 舞台となるのは、「人の記憶を保存できる世界」。クローン技術を活用して作り出した「肉体の器」に、本人の記憶・人格を移植することで、不慮の事故などで亡くなっても、蘇ることができる……という設定です。

今現在の記憶と人格を、保存する。これを「バックアップ」と呼びます 今現在の記憶と人格を、保存する。これを「バックアップ」と呼びます

 主人公の少女、栗原志保(くりはら しほ)は中学生のある日、記憶を保存した後、突然“19歳の女性”として目が覚めます。戸惑う中、駆けつける自分の両親。そこで告げられたのは、何と「志保は19歳で亡くなり、科学技術によってたった今、蘇った」という事実でした。

 つまり、肉体は亡くなった時点の19歳の体から生成された、クローン。しかし記憶は、中学生の時にバックアップした状態のまま――ということで、肉体と精神にギャップが生じてしまっているのです。記憶のバックアップをこまめに行っていなかったせい……とのことですが、志保にしてみれば、5年間の「記憶喪失」に陥ったも同然の状況となりました。しかも不安なことに、周囲は「自分がなぜ、死んだか」を教えてくれません。

14歳の状態で蘇らせるのは、「若返り」を禁じる法律に抵触する。志保は、19歳の状態で復活するしかなかったのです 14歳の状態で蘇らせるのは、「若返り」を禁じる法律に抵触する。志保は、19歳の状態で復活するしかなかったのです

 志保が蘇った時点で、世の中ではクローン人間が社会問題化していました。クローン再生者は是か非か? そんな論争がある中、「クローン差別主義者」と呼ばれる勢力が存在することが分かります。さらには、再生者に危害を加える「コピー狩り」をする人間さえ、存在するというのです。

 そんな差別主義者の一人が、志保の中学生の知り合いである、緒方たけし(おがた たけし)。ところが、彼こそが、実は志保が亡くなる前に付き合っていた恋人らしい……と判明し、志保は混乱します。19歳の志保はどうやら、グレたあげくに不良集団とつるみ、たけしたちのコミュニティーで、それなりに幸せに過ごしていたようなのです。

クローン再生者には、へそがありません。従ってクローン差別主義者は、へそを出すことで自分の信条をアピールしています クローン再生者には、へそがありません。従ってクローン差別主義者は、へそを出すことで自分の信条をアピールしています
自分は、たけしと恋人関係にあった。14歳の精神の志保には、ショッキングな内容が次々と明らかになります 自分は、たけしと恋人関係にあった。14歳の精神の志保には、ショッキングな内容が次々と明らかになります

 過去の記憶を、何とか取り戻そうとする志保。しかし同じクローン再生者の高津(たかつ)と話しているうち、ある疑惑が生じてきます。高津も、亡くなった時点の記憶がないのですが、高津自身は自らの死因を、「たけしたちのような、コピー狩りの連中に襲われたのではないか」と考えていました。そして、自らの死に、志保も関係しているのではないか、というのです。

 何と、高津の死亡時期と栗原志保の死亡時期は、かなり近い時間帯であることが判明しました。もしかすると志保は、たけしたちと一緒に高津を「コピー狩り」したのかもしれない。そしてその際に、志保が反撃を受けて亡くなった――そんな可能性が浮上してしまったのです。

栗原さん!

あなたを殺したのは…

私なのかもしれません!!

 さあ、真相はどうだったのでしょうか。志保はどのように亡くなったのか、そして高津の死は、本当に志保の死とつながっているのか。読者の期待を裏切るような、どんでん返しの展開もありますので、ここから先は自分の目で確かめてください。

 『デッドコピー』は全1巻、現在ハートコミックスなどで、基本無料にて読むことが可能です。作者の「がぁさん」は似たようなSF作品を執筆していますが、そのうちの1つ『だいらんど』も、やはりハートコミックス上で閲覧可能。あわせて読んでみると、楽しめるかもしれません。

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