マンガ家の原稿料、ネット事業者だとどのくらい?eBookマーケットリーダー

マンガアプリも増えてきたが、中には編集部を立てて、マンガを「内製」している事業者もある。その場合、マンガ家に支払う原稿料はどのくらいだろうか。

» 2014年12月17日 10時00分 公開
[杉浦正武,ハートコミックス]

 ネット事業者が手がけるマンガアプリも、増えてきた。中には編集部を立てて、マンガを「内製」している事業者も存在する。その場合、マンガ家に原稿料を払っていることになる。

 それでは、その原稿料はどのくらいの水準なのか――というのを、簡単に取り上げてみよう。

原稿料と、印税の関係

 そもそも、原稿料と印税の関係について簡単に復習しておきたい。マンガ雑誌があった場合、マンガ家はそこに連載を持つ。週刊なら毎週、決められたページを描くことになるが、それに対して払われるのが『原稿料』となる。多くの場合は、「1ページいくら」で設定されることが多い。

 無事、連載が続けば、そのマンガが単行本となって発売される。このとき、単行本の売れ行きに応じて支払われるのが『印税』となる。これは「定価の10%」といったように料率で設定されることが多いようだ。

 一般論として、マンガ家は一人でマンガを描くわけではない。アシスタントを雇い、仕事場を用意して、“しかるべき制作体制を整えて”マンガを描く。その分、制作コストがかかるわけで、原稿料だけでは、巨額の利益は出にくい(赤字すら珍しくない)。これを取り戻す手段として、単行本の印税が大きく期待されることになる。従って「原稿料は、マンガ家の重要な収入ではあるが、すべてではない」ことをご理解頂ければと思う。

 既存の紙の出版社は、どのくらいの原稿料を払っているのだろうか? 業界関係者から聞いたさまざまな話を総合すると、だいたい1万円〜3万円/ページというところのようだ。

 新人だと、ページ9000円とか、1万円。そこからステップアップして、2万円を超えてくると、それなりのマンガ家というイメージらしい。3万円を超えると「かなりの先生」という感じだろうか。ちなみに、好景気のときと、不景気のときで金額は変動するため、あくまで目安として頂きたい。例えば1万円/ページで毎週、15ページ書いて、15万円。月に4回の締め切りを乗り切ったら、60万円となる。

マンガアプリ事業者の原稿料は……

 それでは、マンガアプリ事業者の原稿料を見てみよう。比較的オープンに情報を出しているのは、comicoだ。「公式作品」に選ばれると、「20万円/月〜(+インセンティブ)」とある。大卒の初任給が19万8000円らしいので、金額だけ見ればほぼ、同じくらいと言えるだろう。

 描く分量は、紙のマンガとは一概に比較できない。comicoの場合は、カラーで描く必要があるため、白黒より手間がかかると言えるが、1コマが比較的大きいので、紙のマンガに換算すると描く分量は少ないかもしれない。マンガ家には毎週、決まった曜日に原稿を仕上げること、ガイドライン規定を遵守することなどが求められるようだ。

comicoのトップページ。右側に「原稿料は20万円以上」とある comicoのトップページ。右側に「原稿料は20万円以上」とある

 もう1つの例を見てみよう。GANMA!も、オリジナルの新作マンガを制作している。運営事業者であるコミックスマートは、Jコミが運営するマンガ家×アシスタントマッチングサービス「GANMO(がんも)」上で(GANMA!とGANMOでややこしいが……)、「連載作家募集!!」の告知を出している

 ここに記載された金額は、「ページ単価での原稿料+ランキング報酬」で「最大40万円/月」とのこと。ページ数は4コマの場合月間16ページ以上、ストーリーの場合月間24ページ以上という条件もついている。comico同様、紙のマンガよりも描く分量は少なくてよい可能性もあるが、明確には分からない。

 余談だが、マンガボックスの場合、原稿料は「1ページ1万円」との一部報道もある。これについては、公式情報でないので未確認というしかない。また、マンガボックスの場合は原稿料の出元が出版社となっている。その出版社の判断によって変動している可能性もある。

 いずれにしても、完全に横並びで比較できないものの、ネット事業者の原稿料は「既存の紙媒体よりは、低め。ただしアシスタントを雇わずに1人で描くなら、これだけでも生活できる水準か……」と思わせる金額になっている。今後、有名マンガ家を輩出するなどして原稿料が上がる可能性があるのか、注目したい。

著者紹介:杉浦正武

電子コミックアプリ「ハートコミックス」の主担当者。ITmediaで5年間記者を務めた後、MBA留学(南カリフォルニア大学)、A.T.カーニー、DeNAを経てソフトバンクグループに復帰。新規事業であるハートコミックスを牽引する。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.