本大好き司書メイドの好感度を上げ、年に一度のデート権を得るべく繰り広げられるメイドたちのラブアタック。今日はエリスからの紹介です。
街路樹が少しずつ色づき始めたこの街に、メイドが営む私設図書館がありました。
そこには書架を守る司書メイドがいます。ほんわりおっとりした司書メイド ミソノに、淡い思いを抱くメイドもいるようです。
彼女の好感度を上げようと、今日もお気に入りの1冊を持って、書架にメイドがやってきます。
好きなものを掛け合わせたからといって、必ずしも倍にはなりませんよね……。
あら? 思慮深いお顔……。どうしたんですか?
ふと思ったのです……、例えばエルフはエルフとして好きで、ゾンビはゾンビとして好きなわけで、エルフなゾンビがさらに萌えるかというとそういうわけではありません。
それぞれの魅力が、相性が良いとは限りませんものねぇ。
はい、ということで普段は趣味は混ぜない派なのですが、掛け算に成功した本があるのでご紹介します! ヴィクトリア朝好きで、刑事好きで、ホラーや奇譚が好きな私にはたまらない1冊……。
まだ写真を、新聞などの大量印刷物に載せる技術ができていなかった時代、挿絵付きのこのような記事が新聞には載っていたそうです。
訳者さん曰く“ヴィクトリア朝東スポ”的なものなんだとか。本には記事についての解説があるわけではなく、ただひたすら、訳された当時の記事が新聞のような見出し付きで載っております。
見出しのデザインが現代の新聞のようなデザインになっているので、当時の事件をリアルタイムで読んでいるような不思議な気分になりますね。
お紅茶をいれて新聞を読むような気持ちで、椅子に腰掛けふむふむと目を通せば、当時にタイムスリップした気持ちに!
事件の内容が今とほとんど変わらないということも、身近に感じる理由かもしれません。捨てられた動物が可哀想とお屋敷中に住まわせ近隣の住人から苦情が来たり、痴情のもつれや家庭内暴力、はたまた公園で若者たちがホームレスの方を虐待死させてしまったり……。最近もニュースで聞いたことがあるようなお話ばかり。もちろん時代背景や出てくる物・場所は違いますけれど。
物や場所?
例えば事故のニュースで、今だとヘリコプターや車に当たる物が、気球や馬車だったりします。
時代を感じますねぇー。
当時ならではのエピソードも面白いですよ。
ろうそくを持ってビール樽を見に行ったら引火して大火事! ですとか、洗面台を壊してしまい、ご主人さまに鞭(むち)を打たれまくるメイドの話は読んでいて冷や汗がでました。今の時代に生まれてよかったですわ……。
事件の背景となる人間関係や流れが、短いお話のように丁寧に書かれているので、短編集のような感じで読み進められます。でもやはりただの短編集と違うところは、それが実際に起きたことかもしれないというリアル感。
舞踏会を騒がせた男装の麗人の正体が露見! ですとか、お話ではよくありそうですが、実際に起きたことなのかと思うと一層ハラハラドキドキしませんか……!
男装の麗人! 正体がバレるまで、ご婦人方が熱狂されたということはさぞかし見目麗しい方だったのでしょうね。
「海の悪魔出現」という記事で描かれている、クモとカニとタコが合体したようなモンスターはかなりのうさん臭さだったので、「おや……?」と思いましたけれど。記事の信ぴょう性は読者が心の中でお好みで設定するとして、人が思う事やする事というのは、時が経ってもあまり変わらないなあと改めて感じると共に、ヴィクトリア朝の空気も楽しめる1冊です。
本への愛情、オススメの仕方が上手だとミソノの好感度アップ! それぞれミソノの心を占めている割合は……?
エリス:64% レイラ:90% サヤ:91%
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