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» 2014年11月19日 09時00分 UPDATE

eBookマーケットリーダー:マンガ「人気ランキング」の奥に隠されているもの

ハートコミックスの人気作品ランキングを見ると、あることに気がつく。それは、プラットフォーム事業者としての重要なテーマと関係がある。

[杉浦正武,ハートコミックス]

 今回は少し趣向を変えて、ハートコミックスで掲載しているマンガ作品の人気ランキングを見て頂こう。下の表を見ていると、あることに気が付く。

順位 タイトル イイね!数
1 ラブひな 3002
2 クロザクロ 1559
3 サラダデイズ 919
4 燃える!お兄さん 619
5 密・リターンズ! 544
6 逃亡医F 461
7 ゆめ色クッキング 431
8 Dear Monkey 西遊記 419
9 ハイスクール!奇面組 409
10 ドーラク弁護士 350
11月第1週の、ハートコミックス内におけるイイね!数のランキング(※ハートコミックスではマンガを読みながら、各話ごとにイイね!を押して評価を行える)

 まず最初に目が行くのは、人気少年誌で連載していたタイトルの強さ。上位には軒並み、週刊少年ジャンプ/マガジン/サンデーで連載していた作品名が並んでいる。やはり、有名な作品、「知っている」タイトルが多く読まれ、「イイね!」を獲得している様子が伺える。

 これは当然のことで、運営側としても“知名度のあるタイトル”を全面に出してプロモーションを行う。従って、「あの名作が、基本無料!」といううたい文句につられて、ユーザーがアプリをダウンロードし、有名タイトルのページへと遷移していくのは自然なことだ。

 だが、それだけでは少し、説明が難しい作品もある。

6位の『逃亡医F』に注目

逃亡医F 逃亡医F

 もう一度上の表を見て頂きたい。6位にランクインした『逃亡医F』という作品をご存じだろうか。掲載されたのはプレイコミック(秋田書店)で、いわゆる「ジャンプ・マガジン・サンデー」系の雑誌とは少し趣が異なる。もしかすると、知名度も他の作品ほどではないかもしれない。実際、この作品は単行本化もされていないという。

 この作品を描いたのは『サトラレ』で知られる佐藤マコト先生だ。サトラレと言えば、テレビドラマ化、映画化もされた作品なので、知っている方も多いかもしれない。その佐藤先生が手掛けた作品が(原作は伊月慶悟先生)、461イイね!を獲得し、ランキング上位に顔を出している。

 ここからは、筆者の勝手な想像になるが、本タイトルについては純粋に「作品力」が強かったのではないか。もちろん、他の作品が「作品力が弱い」わけではないが、逃亡医Fに関しては知名度よりも、面白さ、満足度などが先行してこの順位を獲得した気がしてならない。

 ハートコミックスの場合、ランキング上で作品ごとのイイね!数を公開している。逃亡医Fに少しずつ、多くのイイね!がついていき、ランキングでより多くのユーザーが興味を持つ⇒さらに多くのイイね!がつく、というポジティブサイクルが回った可能性もある。

 この話は、プラットフォーム事業者が抱える課題と紐づいている。

週刊誌にも通ずる「プラットフォーム」の役割

 ハートコミックスのような、複数作品を扱うプラットフォーム事業者は、いかに多くの作品を読んでもらうかが勝負になる。

 知名度のある、限られた作品だけをさっと読み飛ばし、すぐ離脱されたのでは、プラットフォーム全体の収益力が向上しない。やはり「有名な作品につられてやって来て、さほど知られていない作品も読んでみたら、そちらも面白かった!」というのが理想だ。

 これと同じことは、紙のコミック週刊誌にも言える。巷で大人気のタイトルに引かれて、毎週、雑誌を買う。結果として、あまり知らない新人作家が描いた作品も読み、それに感動する。そこでその作品のコミックスを買う……というのが、出版社としての理想形になる。つまり週刊誌(広くいうとプラットフォーム)は、複数のコミックタイトルの「プロモーション媒体」という側面を持つわけだ。

 知らなかったけれど、読んでみたら面白かった――。そんなタイトルを多く用意し、ランキングやイイね!の仕組みによって、表舞台に押し上げていく。それこそが、コミック・プラットフォーム事業を手掛ける上での、カギであると感じている。

著者紹介:杉浦正武

電子コミックアプリ「ハートコミックス」の主担当者。ITmediaで5年間記者を務めた後、MBA留学(南カリフォルニア大学)、A.T.カーニー、DeNAを経てソフトバンクグループに復帰。新規事業であるハートコミックスを牽引する。



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