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» 2014年11月11日 14時30分 UPDATE

図書館総合展リポート:障害者差別解消法と公共図書館――電子図書館サービスへの期待とは

2016年4月に施行予定の障害者差別解消法は、電子図書館サービスにどう影響するのか。図書館総合展で開催されたフォーラムからお届けする。

[宮澤諒,eBook USER]
公共図書館の電子書籍サービスの新展開 ―障害者差別解消法と読書アクセシビリティ― 公共図書館の電子書籍サービスの新展開 ―障害者差別解消法と読書アクセシビリティ―

 11月5日〜11月7日にかけてパシフィコ横浜で開催された第16回「図書館総合展」。3日間の来場者数は2013年の2万9963人を超え、過去最高となる3万1632人が足を運んだという。

 会場内では、140社以上のブースで図書館に関係したソリューションや設備が展示され、90あまりのフォーラムが開催された。本記事では、最終日の7日に開催された「公共図書館の電子書籍サービスの新展開 ―障害者差別解消法と読書アクセシビリティ―」と題したフォーラムを紹介する。

障害者差別解消法の成立と電子図書館サービス

石川准氏 石川准氏

 同フォーラムは、静岡県立大学国際関係学部の教授で内閣府障害者対策委員会の委員長でもある石川准氏の講演で始まった。

 2016年4月、日本では障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)が施行される予定となっている。この法律では、障害者基本法に基づき、すべての障害者に対して障害を理由とした差別を解消し、障害の有無に関わらず互いに人権や個性を尊重し合える社会を目指すことを目的としている。

 障害者差別解消法では、差別に対して2つの類型が示されている。1つは障害を理由とした「不当な差別」、もう1つは合理的配慮の提供という作為義務を果たそうとしない「合理的配慮の不提供」だ。ここでいう合理的配慮の定義は以下のようなものだ。

障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの

 つまり、障害者の求めが過度なものでない限りは、日本政府や地方公共団体、独立行政法人、そして民間企業は対応しなければならない。民間企業の対応は努力義務とされているが、勧告などに従わなかった場合には罰則もある。なお合理的配慮は障害者自らが申し出る必要があるが、障害者の中には意思表示が難しい人もおり、今後の課題となっている。

 障害者差別解消法が施行されると、すべての公共図書館は障害のある人たちに対して合理的配慮が義務付けられる。点字図書や対面朗読といった従来の方法では、人員の面からも利用者の要求に応えることは難しくなるだろう。そこで注目されているものの1つが電子図書館サービスだ。

 石川氏は、日本点字図書館が運営する「サピエ図書館」を「日本で最も便利な電子図書館である」と紹介。サピエ図書館では点字データ16万タイトル以上、音声デイジーデータ(音声データが入ったCD-ROM)5万タイトル以上を個人会員の場合は無料で利用できる。

 しかし石川氏によると、サピエ図書館のネットワークに参加している公共図書館はわずか110館ほどだという。「サピエに施設会員として登録すれば、地域の視覚に障害を抱える人や見えづらさに悩む高齢者に対して、DAISYなどの翻訳図書を提供できる。障害者差別解消法により公共図書館は合理的配慮の義務が生じるので、こういったサービスの提供もお願いしたい」と述べ講演を終えた。

電子図書館サービスの開始に向けて、各社の動き

左から、湯浅俊彦氏、前川千陽氏、盛田宏久氏、山口貴氏、星名信太郎氏、石川准氏 左から、湯浅俊彦氏、前川千陽氏、盛田宏久氏、山口貴氏、星名信太郎氏、石川准氏

 石川氏の講演に続いては、電子図書館事業に取り組む各社の代表者によるパネルディスカッションが開かれ、石川氏をはじめ、メディアドゥ ライセンスビジネス部長 兼 OverDrive Japan 推進室長の星名信太郎氏、日本電子図書館サービス代表取締役社長の山口貴氏、大日本印刷 hontoビジネス本部部長の盛田宏久氏、兵庫県三田市立図書館長の前川千陽氏といった電子図書館サービスに取り組むプレイヤーが集結した。コーディネーターは、立命館大学文学部教授の湯浅俊彦氏。

 メディアドゥは5月に電子図書館プラットフォームの世界最大手、米OverDriveとの戦略的業務提携を発表。2015年4月の電子図書館サービスの展開開始に向け、現在慶応義塾大学メディアセンターと共同で、OverDrive電子図書館システムの実証実験を実施している。

 日本電子図書館サービスも、山中湖情報創造館において出版社十数社と協力し、電子書籍貸し出しサービスの実証実験を実施している。現在借りられる電子書籍は約1650タイトルほどで、出版社が協力していることもあり、従来の図書館にはないようなラインアップになっているという。

 「当社の方針は、出版社と著者と図書館の掛け橋になるというもの。図書館で起きているアクセシビリティの問題について、出版社の間で中心となって解決に向け動いていきたい」(山口氏)

 指定管理者である図書館流通センターの管理の下、8月に電子書籍サービスを導入した三田市立図書館。館長の前川氏は、サービス導入に際して市民を対象に開かれた説明会はどの回も大盛況で、11月の利用登録者数は約1000名に上ると話した。入館者も前年度の2倍にまで増加しているという。

 「視覚障害者の方々に対して対面朗読などを行っているボランティア団体の方からは、利用者が対面朗読と電子書籍の音声読み上げ機能をうまく選択できるようになるといいですねという声をいただきました」(前川氏)

 また、聴衆として参加していた立教大学図書館の職員により、同図書館の視覚障害を持つ学生に対しての取り組みも紹介された。立教大学図書館では、視覚障害を持つ学生に対して本のテキストデータや、OCRにより変換した文字データを提供している。しかし、OCRで得た文字データは文字化けなどの誤変換が多く、2人体制で校正しても、1冊の本につき完成までに半年を要するという。職員は「大学としては目が見える学生にも、目が見えない学生にも同じように資料を読んでもらいたい。今後、電子図書館サービスの供給が進むことを期待しています」と話した。

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