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» 2014年11月04日 11時00分 UPDATE

世界を動かすきっかけになったノーベル平和賞受賞者マララさんの小さな決意

マララさんの視点から見たパキスタンの「変化」とは。

[新刊JP]
新刊JP

 2014年のノーベル平和賞は、パキスタン人のマララ・ユスフザイさんと、インド人のカイラシュ・サティーアーティさんに贈られることが決まった。マララさんはパキスタン人としてはじめてのノーベル賞受賞者となるとともに、弱冠17歳での受賞は史上最年少だ。

 17歳の少女は、いったい何を変えようとしたのか、そして、何を変えようと活動を続けているのだろうか。その背景にあるのは、この日本という国で生きているわたしたちから見れば、想像以上に根深い問題だということだ。

世界を動かすきっかけになったノーベル平和賞受賞者マララさんの小さな決意 世界を動かすきっかけになったノーベル平和賞受賞者マララさんの小さな決意

 岩崎書店から出版された『マララ 教育のために立ち上がり、世界を変えた少女』(マララ・ユスフザイ、パトリシア・マコーミック/著、道傳愛子/翻訳)は、マララさんの半自伝的な一冊。子どもでも読めるように平易な言葉が書かれているほか、漢字にはルビがふってある。

 マララさんはタリバンによる弾圧が激しくなる中、インターネットを通じて女の子が教育を受ける権利を訴え続けてきた。そのさ中で、命を狙われ、銃撃されてしまった。では、どうして、パキスタンという国はそのような状況になってしまったのか? 本書の前半では、マララさんの視点から見たパキスタンの「変化」がつづられている。

 マララさんは当時、パキスタン北部に位置するスワート渓谷に住み、父親の経営する学校に通っていた。カップケーキが好きで、争いごとは嫌い。化粧やアクセサリーには興味がないけれど、鏡の前でいつまでも髪をいじっているような、ごく普通の女の子だ。

 そんな平凡な日常に暗雲が立ち込みはじめたのは、2005年10月にパキスタン北部で大きな地震が起きたころからだった。その地震を利用した声明が、FMラジオで流れ始めたのだ。

「女子は学校へ行くべきではない」

「西洋的な音楽を聴くべきではない」

「西洋的な服を着るべきではない」

 “ラジオ・ムッラー”と呼ばれるFMラジオのDJは、西洋的な文化を否定し、女子教育をやめるように訴え出した。このラジオ・ムッラーの正体こそ、大地震のときにいち早く救助にやってきた保守的イスラム組織「預言者ムハンマドのイスラム法施行運動(TNSM)」のメンバーで、過激なテロ行動を繰り返すマウラーナー・ファズルッラー(現在はパキスタン・タリバン運動の指導者)である。

 地震は神さまの警告だ……。ちゃんとした情報が行き届かなければ、混乱が起こるのはどこも一緒だろう。ラジオ・ムッラーはその地震の恐怖につけ込み、自分たちの考えを正当化していったのだった。

 教育者であったマララさんの父親は、ラジオ・ムッラーの言うことはうそだと看破し、生徒たちの自由を守ろうとした。しかし、状況は悪化する一方だった。2007年暮れにはマララさんが尊敬している、パキスタン初の女性首相ベナジール・ブットがテロリストに暗殺される事件が起こる。ここで「女性を殺してはいけない」というおきては破られ、女性であっても、子どもであっても、安全はなくなったのだった。

 転機は2008年末。ファルズッラーから「2009年1月15日から女子は何歳であっても学校に行くことを禁じる」という命令が出された。女子教育の全面的な禁止令である。

 そんな折、イギリスの有力放送局BCCの通信員から、「BCCのウルドゥー語(パキスタンの公用語)のWebサイトに、タリバン支配下での生活を日記にして書いている人を探している」という連絡が父親の下に入る。外に向けて発言をするチャンス。でも、そんなことをすれば命が狙われてしまう……。誰もが断る中マララさんは「わたしじゃだめ?」と声をあげた。そのとき、マララさんは11歳。

 学校を続けられるならなんだってしたい。マララさんの決意は固かった。さすがの父親も不安の表情を見せたが、母親は賛成をした。「正しいことなのだから、神さまが守ってくれるはず」。

 そして2009年1月3日、マララさんはグル・マカイというペンネームで日記を書きだした。タイトルは「こわいです」。これが後に、欧州圏で「アンネの日記のようだ」といわれるなど、パキスタン内外で大きな注目を集めることになる。

 学校が大好きだった少女の一つの決意。それが世界を大きく動かすきっかけとなった。その勇気に、読者は感動を覚えるだろう。一方で、どうして紛争地域はなくならないのか、その中で人々はどのような恐怖を感じているのかを知り、衝撃を受けることもあるはずだ。

 マララさんが背負っているものは、とても重い。けれど、彼女は声を上げつづける。

(新刊JP編集部)

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