インタビュー
» 2014年10月28日 10時19分 UPDATE

朗読ならではの「間」を感じてほしい――声優・斉藤壮馬さんインタビュー

今最も勢いのある若手声優の一人である斉藤壮馬さんにインタビュー。

[新刊JP]
新刊JP

 普段、作家や著者たちに話を聞いている新刊JPが「朗読」にスポットをあて、本を朗読している人にお話を聞くインタビュー企画。今回は、オーディオブック版『デルトラ・クエスト』シリーズ(岩崎書店/刊、公式ページはこちら)の主人公・リーフ役や、オーディオブック版『桐島、部活やめるってよ』(集英社/刊、公式ページはこちら)の前田涼也役を演じている斉藤壮馬さんが登場。

 斉藤さんは気鋭の声優として『アカメが斬る!』(タツミ役)、『残響のテロル』(ツエルブ/久見冬二役)、『ハイキュー!!』(山口忠役)など多数のアニメ番組に出演。今、最も勢いのある若手声優の一人といっても過言ではない。

 そんな斉藤さんは、本を音声化した「オーディオブック」や、「朗読」をテーマとしたラジオ番組「ニッポン朗読アカデミー」に出演しているなど、「朗読」にも意欲的に挑戦している。また、根っからの「本好き」ということで、国内外問わずさまざまな文学作品を読み漁る読書家でもある。

 今回はそんな斉藤さんに、前半は「朗読」について、後半は「これから朗読したい作品」や「読書歴」についてお話をうかがった。

(新刊JP編集部/金井元貴)

高校時代の先生から教わったこと

朗読ならではの「間」を感じてほしい――声優・斉藤壮馬さんインタビュー 朗読ならではの「間」を感じてほしい――声優・斉藤壮馬さんインタビュー

―― まず、斉藤壮馬さんは非常に読書が好きということで、いろいろなジャンルの小説を読まれていることを公言されていますが、本との出会い、読書の原体験というところからお話いただけますか?

斉藤さん(以下敬称略) これは本が好きになったきっかけでもあるし、声優という仕事にもつながっていくのですが、小さなころ、母親がよく本の読み聞かせをしてくれていたんですね。当時は民話や神話が多かったのですが、母親は読むのがとにかく上手で、女性にしては低めの声で、すごくワクワクしながらいつも聞いていました。

 ただ1つ、僕よりも母親の方がはやく眠くなってしまうところがあって、僕は物語の続きが気になるから、自分で本を読むようになり、好きになっていきました。また、僕の家族みんな本が好きで、特に祖母はかなりの読書家で家に本がたくさんある環境でもあったので、そこからも影響を受けていると思います。

―― では、「朗読」というといかがですか?

斉藤 国語の授業で文章を音読するというところが最初ですね。でも、昔から音読は得意でした! 小さなころから本に慣れ親しんできたから読むことに抵抗がなかったし、たぶん、ページを開いたとき、一度に読みとれる文字数が多かったのかもしれません。自分はあまり前に出るタイプではなかったのですが、声に出して読むということは、あまり違和感があることではなく自然なことでしたね。また、はっきりと読むと先生が褒めてくれますし(笑)。

 朗読は、高校生のときに放送部に所属していたときにはじめました。顧問の先生から一貫して教わったことは、もちろん、うまく読むことや丁寧に読むこと、きれいに読むことはできるに越したことはないけれど、やはり「伝えること」が一番大切なことだということでしたね。

―― 今、斉藤さんは「ニッポン朗読アカデミー」というラジオ番組に出演されていらっしゃいます。身近な事柄について感情を込めておおげさに「朗読」をするコーナーがあったり、「朗読」で遊ぶようなコーナーがあったりと、「朗読」にスポットをあてた番組になっています。そういう意味でも、今でも「朗読」の近くにいらっしゃいますが、斉藤さんが考える「朗読」の面白さと難しさとは何でしょうか?

斉藤 これは朗読に限らず、アニメやラジオ、ほかの媒体であっても同じですが、僕は目の前の空間に向かって話しているのではなく、その向こうにいる誰かに伝えることを一番に考えています。

 仕事柄、聞き手がすぐに目の前にいるケースはあまり多くはありません。でも、先日「日本朗読アカデミー」のイベントをやらせてもらったときに、リアルタイムで盛り上がる様子を見たりとか、お手紙をいただいたりとか、そういった反応があって「伝えることができた」という満足感と言いますか、何も代えがたい楽しさを感じたんです。たぶんそれは、一緒に一つのものを作り上げる仲間やスタッフの皆さん、そして聞いてくださる方々がいて形になるという部分も大きいと思います。

 一方、難しさもそれで、表裏一体なんです。自分はこう伝えたかったけれど、まったく違ったとらえられ方をされることもありますし、例えば自分なりに悲しいという感じで演じても、人によって悲しさの度合いや受け取り方も違う。良くも悪くも答えがないという点が難しさだし、だからこそ、一生試行錯誤しながら、やり続けることができるものだと感じています。

―― オーディオブックのお話をうかがいたいと思います。斉藤さんは『桐島、部活やめるってよ』と『デルトラ・クエスト』という2つの作品にご出演されています。この2作はいわゆるラジオドラマ風と言いますか、キャラクターを演じているという点で、普通の朗読ではありません。また、もちろんアニメとも違い、絵がない。斉藤さんはこの2作にご出演されて、アニメとの違いはあると思いますか?

斉藤 あります。「間」の存在ですね。アニメだと自分勝手に「ここは黙りたい、間をとりたい」ということはできません。でも、オーディオブックの場合は、基本的に本を読んでいくものなので、必然的に「間」というものが生まれます。

 『桐島、部活やめるってよ』の収録のとき、最初、「間」をたっぷり取らせてもらっていたんです。でも、聴いてみると、自分に都合のよい「間」、自分の芝居が成立している間と、聴いていて心地のよい「間」は違うということがあらためて分かりました。これって、すごく面白いことだと思うんです。「間」の取り方でこんなに違うように聞こえるんだと。

―― オーディオブック版『桐島、部活やめるってよ』では前田涼也という映画好きの高校生を演じていらっしゃいます。読む上で気をつけたことはありましたか?

斉藤 『桐島、部活やめるってよ』は、この話をいただく前から読んでいましたし、映画も観ていて、最初に読んだときはすごく読みやすい作品だと思っていたのですが、1つ1つの文章をちゃんと声に出して読んでいくと、視点の変化、展開……一つの段落の中で目まぐるしく変わるんですよ。その展開をどうやって声で表現しようかと、やりがいを感じていました。また、前田涼也君は僕の高校時代によく似ているなあと(笑)

―― 役柄としては、感情移入しやすかったのではないですか?

斉藤 映画版では主人公でしたが、小説ではエピソードの中の主人公の一人という位置付けですからね。(収録中に)ディレクターの伊藤さんから「もっと暗いキャラクターでいい」といわれて、「いつも通りでいいか」と(笑)高校時代の自分を思い起こしました。だから、『桐島、部活やめるってよ』はある意味で素の自分が出ているんじゃないかなと思います。

―― また、現在は『デルトラ・クエスト』のオーディオブック版が順次配信を開始しているということで、斉藤さんは主人公のリーフ役を演じていらっしゃいます(10月23日に第3巻発売)。『デルトラ・クエスト』といえば2001年から出版されている世界的な児童書ですが、ちょうど斉藤さんもその世代でいらっしゃいますよね。

斉藤 そうなんです。小学校のときに読んでいました。ちょうどファンタジーものが流行していたころで。主人公のリーフは機転がきくところはありますが、まだ世間知らずの子どもなんですね。特に第1巻のころは子どもっぽさが強かったので、アドバイスをいただいて一度フラットにして、自分が子どものころに読んでいたときの気持ちを思い出しながら作品に向き合うようにしました。

―― 大人になって読み返してみて、新たな発見はありましたか?

斉藤 『デルトラ・クエスト』は児童書なので、なぞ解きも本当に悩ませるようなものは出てこなくて、少し考えてひらめきがつかめると解けるくらいのバランスになっているんです。だから、読み物としてのリズムがすごく良いですし、「分かった!」という気持ちの高揚感のまま読み進められます。オーディオブックとして聴いても、すごくワクワクできる物語だと思いますから、これまでそういう作品に少しでも触れたことがあったり、自分の中に冒険心やファンタジーへのあこがれを持ち続けていたりする人にはぴったりだと思いますね。

文学青年・斉藤壮馬さんが朗読したい本とは!

―― 『デルトラ・クエスト』はまさしく「魔法」や「剣」のファンタジー世界です。斉藤さんは子どものころ、そういった世界は好きでしたか?

斉藤さん(以下敬称略) 大好きでしたし、今でも大好きです(笑)。田舎というほどではないですけれど、自然があるところで育ったので、子どものころはザリガニを釣ったり、まだ行ったことのない山に行ってみたり、冒険のようなことをしていましたね。本が好きになったのも、そういった冒険が本の中で楽しめるからだと思います。

―― SFがお好きということにもつながっていきますね。朗読をしてみたい作品はありますか?

斉藤 その作品を読むことを自分が求められているかは別として、もちろんあります。僕の声だとポップな語り口がいいと思うので、カート・ヴォネガットという米国の作家の『猫のゆりかご』ですね。カート・ヴォネガットがまだカート・ヴォネガット・ジュニアと名乗っていたころの作品です。これは朗読してみたい。「ナイス、ナイス、ヴェリ・ナイス」って言ってみたいです(笑)ヴォネガットは比較的読みやすいですし、朗読にもハマると思います。

好きな本3冊「5時間くらい悩むかも……」―声優・斉藤壮馬さんインタビュー 好きな本3冊「5時間くらい悩むかも……」―声優・斉藤壮馬さんインタビュー

―― 日本の作家でしたら、誰の作品を朗読してみたいですか?

斉藤 これは太宰治さんですよね。実は昔、暗い作品が多い作家っていうイメージに引きずられて、苦手だったんです。でも、太宰さんの明るい作品って、暗いイメージが吹き飛ぶくらい本当に面白いんです。『お伽草子』とか、短編だと『ダス・ゲマイネ』や『トカトントン』もいいですよね。

 太宰さんは文章のリズムが良くて、文体もきれい。イメージを取り払って読み返してみたときに、こんなに口語的で革新的な文体を生み出した方だったんだと衝撃を受けました。

―― 『人間失格』のイメージに引っ張られると、太宰治の明るめの小説を読んだときに衝撃を受けますよね。文体という意味でいえば、現代の作家さんは文体が軽妙で読みやすい方も多いと思います。

斉藤 その流れで言うならば、ぜひ皆さんにも朗読してみてほしいのが、現代米国文学の若手作家たちですね。

 ユーモアあふれる面白い作品が多くて、読んでいて楽しくなりますよ。例えば岸本佐知子さんが編訳している『変愛小説集2』という本の中に、『彼氏島』というステイシー・リクターという作家の短編が収録されていて、ある女性が船で遭難してしまい、未開の島に辿りつくという物語なのですが、その島の原住人が全員男性でなおかつイケメンという設定なんです。これも衝撃的でした。

―― そんな作品があるのですか! それは読んでみたいです。朗読から本の話に移したいと思うのですが、思い出深い一冊ってありますか?

斉藤 祖母にはじめて買ってもらった本が安部公房さんの『壁』という短編集だったんです。中学1年生のときだったかな。買い物の手伝いついでに本屋に立ち寄って、「一冊何でも選んでいいよ」といわれて、何気なく手に取ったのが『壁』でした。

―― 好きな本を3冊挙げるとすれば何を挙げますか?

斉藤 これは難しい! 後5時間くらい悩む可能性があります(笑)。(しばらく考えて)……そうですね、まずは福永武彦さんの『草の花』ですね。福永武彦さんの作品はすごく好きで、『廃市』や『忘却の河』とも迷うんですけど、その中でも特にこの本です。愛と美の物語ですね。

 次はG・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』か、ヴォネガットの『スローターハウス5』で悩んでいます。『百年の孤独』は朗読したい作品であげたかったんですけど、ものすごく長い小説なので、どれだけ時間が掛かるんだろうと(笑)でも大好きな作品なので、『百年の孤独』にします。3冊目は柳田國男さんの『遠野物語』ですね。文学も好きなのですが、民俗学も大好きなんです。

―― ヴォネガットを選ばなかったのが意外でした!

斉藤 最初に好きだといったので、それで伝わるかなと(笑)

―― 最近の斉藤さんのご活躍はめざましいものがありますが、環境の変化などは感じられていますか?

斉藤 友人から「あのアニメ観たよ」といわれることが多くなりましたし、そういった変化はありますけれど、自分の気持ちそのものは変わっていません。与えられた役をしっかりと演じて、より表現できるようにしていきたいと思います。もちろん初心が大切であることを前提として、いつまでも新人だと甘えているわけにもいきませんし、プロとして自覚を持って、結果を出すことにこだわっていきたいですね。

 自分にとって、いろんな方に観ていただく機会が増えたことはとても大きなことです。その中で、僕をきっかけに作品を見始めてくれたり、作品を知ってくださる方もいらっしゃると思うので、そういった方々にも作品を楽しんでいただいて、より好きになってもらえれば幸せです。

―― 声優というお仕事を意識するきっかけは何だったのですか?

斉藤 実は高校1年生のときに学校を休んでいた時期があったんです。そのときに、本や映画、アニメにたくさん触れる時間があって、それを通して自分は救われたように思うんですね。だから、自分も、自分が救われたように、伝える側に立って、変わるきっかけの一つになれればうれしいと思ったんです。

 そういう意味で、いろいろな作品や現場に携われているということは、幸せなことだと思っています。僕にとってもチャンスですし、また試されている場でもありますし、そういった環境の中でこれからも精進していきたいですね。

―― たくさんの作品に出演されていてお忙しいと思いますが、コンディションを保つためにやっていることは何ですか?

斉藤 1つは限界を知るということですね(笑)自分がどういう楽器なのかを知って、ここまでは大丈夫というところを確認することです。プロとして常に全力で臨むということは当然のことなんですが、自分はどこまでできるのかを知った上で、それを少しずつ超えていくように心がけています。

 具体的な話でいえば、最近は湯船につかるようにしています。ぐっすり眠れるようになるので。温泉の入浴剤を入れて、お風呂につかりながら本を読む。本当にリラックスできますよ。

―― このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

斉藤 『桐島、部活やめるってよ』『デルトラ・クエスト』という素晴らしい作品のオーディオブックに携わることができて、光栄に感じています。やはり目で読むことと、耳で聞くことは、体の使っている場所も、使っている筋肉も、気持ちの動き方も違うと思うので、目で読むときとはまた違った楽しみ方できると思いますね。

 お風呂に入りながらとか、本が読めない場所でも耳で聞ける場所はありますし、生活の中で楽しんでいただけることも、オーディオブックの魅力の一つだと思います。ほかにもたくさんの素晴らしい作品がオーディオブックになっているので、ぜひ、いろんな局面で楽しんでください。

斉藤壮馬さんプロフィール

4月22日生まれ、山梨県出身。趣味は読書、映画鑑賞、散歩・楽器演奏、料理。

主なアニメの出演作品は「残響のテロル」(ツエルブ役<主役>)、「トライブクルクル」(天宝院ユヅル役)、「魔法科高校の劣等生」(五十里啓役)、「アカメが斬る!」(タツミ役)、「フューチャーカード バディファイト」(龍炎寺タスク役)、「イナズマイレブンGOギャラクシー」(ルスラン・カシモフ役)、「それでも町は廻っている」(真田広章役)、「戦国☆パラダイス-極-」(立花宗茂役)ほか。

オーディオブックにも出演しており、主人公のリーフ役を演じる『デルトラ・クエスト』シリーズは10月23日に第3巻が発売。公式ページはこちらから


Copyright(c) 2017 OTOBANK Inc. All Rights Reserved.

コンテンツパートナー

新刊JP
ラノコミ.com
hon.jp
新文化通信社
Good E-Reader Blog
ぶくまる