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» 2014年07月15日 11時26分 UPDATE

30年前に書かれた「未来予想本」が意外に当たっていた

今から30年前に書かれ、世界的ベストセラーとなった「未来予想本」。現代を生きる21歳の女性ライターがレビュー。

[新刊JP]
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 「未来はきっとこんな風かな」という未来予想をしたことがある人は多いだろう。その中には全く根拠のないものもあれば、技術的進歩の予測を踏まえてなされたものもあったはずだ。

30年前に書かれた「未来予想本」が意外に当たっていた 30年前に書かれた「未来予想本」が意外に当たっていた

 作家たちによってドラえもんやアトムが誕生すると予想された21世紀について、違った面から「予想」していた1人の男がいた。

 1982年に出版された『メガトレンド』(ジョン・ネイスビッツ/著、竹村健一/訳、三笠書房/刊)は、書店に並ぶと、瞬く間に世界的なベストセラーとなった。著者のネイスビッツは「未来学者」として本書を出版し、人々を熱狂させた。ちなみに日本では1983年に出版されている。

 その『メガトレンド』を、本書発売から10年後に生まれた私、21歳の女性ライター・石井が読んでみた。30年前の世界的ベストセラーということでワクワクしながら読み始めたが、正直「面白い」とは思わなかった。

 なぜか。それは、『メガトレンド』が近未来=21世紀をあまりに的確に予言しているため、かえって面白みがあまり感じられなかったのだ。1980年代にアメリカで予測された事態が、「2010年代の世界を見て書いたのでは」と錯覚するほど現実に起こっている。そのため、現代人が本書を読んでも「そんなの、知ってるよ」という感想を抱いてしまうだろう。そういった意味では宇宙人や超常現象といった突っ込みどころ満載な「トンデモ未来本」の方が「面白い」と言えるのかもしれない。

 本書は豊富なデータを基に、「工業化社会から情報化社会へ」「労働は多様な形態を選べるようになる」「労働における男女の差は縮まる」といった産業構造・ライフスタイルの変化を予言している。先ほども述べたが、本書で書かれている予言は意外なほど実現しているのだ。では、ネイスビッツの「未来予測」を2つご紹介しよう。

ハイ・テックとハイ・タッチの共存

 「ハイ・テック」とはハイ・テクノロジー、つまり高度に洗練された技術のことである。一方「ハイ・タッチ」とは、生身の人間同士が触れ合う、いわゆるフェイス・トゥ・フェイスの関係だ。

 ネイスビッツは、技術化が急激に普及してきた社会では、人々はその反動で非常に人間的な価値システムを発達させようとするだろう、と予測している。

 例えば、情報が即時に共有できる現代では、人々はわざわざオフィスに通勤せずともPCさえあれば自宅で仕事をこなすことができるようになった。しかし、多くの人はずっと自宅で作業するよりも、頻度は少なくなってもオフィスに集まることを選ぶだろう。なぜなら、人々はオフィスで他の人たちと同じ空間を共有(=ハイ・タッチ)したいと分析する。

 オーガニック志向の高まりや、故郷の大切さが盛んにメディアで取り上げられるようになった現在、スマホなどのハイテク機器に囲まれながらも、むしろ囲まれているがゆえに、自然や人とのつながりをいっそう希求するようになった現代人は、まさにハイ・テクとハイ・タッチの2つの価値の下で生きていると言えるだろう。

10年先を考えはじめた産業界?

 「これは当たっている」というものばかりを取り上げても、あまり面白くはない。なので、「これは外れているのではないか」というのもピックアップしよう。

 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」といわれた日本や欧州圏に押され、不動の経済大国の地位を危うくしていた1980年代の米国で書かれた本書は、「アメリカの企業は『いきあたりばったり』式の経営から日本のような『熟慮熟考』式に転換するべきだ」と主張している。

 ネイスビッツは、有毒廃棄物の処理方法が米国全土的な問題になっていることや資源の枯渇について述べた上で「長期予測能力が生き残るためには絶対不可欠だ」と結論付けている。さらにネイスビッツは、企業への忠誠心や安定した関係をもたらす終身雇用制を好意的に見ている。

 ここで米国の見本として挙げられている日本が、今まさに企業のいきあたりばったりの対応や問題処理のせいで極めて深刻な状態に陥っており、終身雇用制というモデルも崩壊し始めていることを鑑みると、ネイスビッツの予見は少々外れたと言えるかもしれない。

 しかし、現代を生きる私たちも『メガトレンド』から学べることは多くあるように感じる。

 ネットワーク社会がもたらす横のつながりや価値観の多様化など、30年前のネイスビッツの先見性を知るもよし、日本の問題を改めて見つめるヒントにするもよし。本書は絶版になっているが、興味を持った方はぜひ図書館などで探してみてほしい。

(石井結/新刊JP編集部)

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