インタビュー
» 2014年06月17日 11時30分 UPDATE

「誰でも社会に果たす役割を持っている」社会起業家のメッセージ

地雷除去や元子ども兵社会復帰の支援のためのNPOを立ち上げ、講演などを通して啓発活動などを行ってきた鬼丸昌也さん。今回は、鬼丸さんご本人にお話を伺いました。

[新刊JP]
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 資金ゼロ、人脈もゼロ、英語も話せない。そんな一人の大学生が世界を変えるために立ち上がった。これ以上、地雷で死んでしまう人を増やさないために、過去の傷に悩む“元子ども兵”を救うために……。

 鬼丸昌也さんは今から13年前、大学在学中にNPO法人テラ・ルネッサンスを立ち上げ、地雷除去や元子ども兵社会復帰の支援と、年間100回を超える講演などを通して啓発活動などを行ってきた。

 『僕が学んだゼロから始める世界の変え方』(扶桑社/刊)は、鬼丸さんの半生とともに人に自分の気持ちを伝える上で大切なことがつづられた、ノンフィクション&ビジネス書。

 しかし、どうして鬼丸さんは、その活動に本気になれるのだろうか。今回は鬼丸さんにお話をうかがってきた。

(新刊JP編集部)

「相手へのリスペクトがなければ、話は伝わらない」

「誰でも社会に果たす役割を持っている」社会起業家のメッセージ 「誰でも社会に果たす役割を持っている」社会起業家のメッセージ

―― まず、鬼丸さんが設立されたテラ・ルネッサンスはどのような活動をされているのですか?

鬼丸 現在は「地雷・クラスター爆弾」「小型武器」「元子ども兵」そして「啓発活動(平和教育)」という4つの課題に取り組んでいます。

 まずは地雷とクラスター爆弾の不発弾の取り除くための活動の支援ですが、これはカンボジアとラオスで行っていまして、日本で資金を集め、提携しているNGOに地雷や不発弾所気を委託したり、被害を受けた人たちの支援をさせていただいています。

 2つ目の小型武器は、小さくて軽い、誰でも扱えるような小型武器があるのですが、これが非合法に取引され、流通しています。それが3つ目の課題である子ども兵が増える要因の1つにもなっているのです。最近では、世界で初めてとも言える、武器の取引にある一定のルールを置いた「武器貿易条約」が、去年、国際連合総会で採択され、6月3日に署名式が行われたのですが、それを10年越しでいろいろなNGOと一緒に呼びかけてきました。

―― 3つ目の「子ども兵」については本書を読んでいたときに、非常に衝撃的なエピソードとして印象に残りました。

鬼丸 そうですね。ウガンダ、コンゴ民主共和国、ブルンジという3つの国で、子ども時代に兵士だった人たち、“元子ども兵”の社会復帰を支援しています。

 本にも書きましたが、彼らは兵士にさせられて、自分の家族や親せき、住んでいた村を襲えと命令されます。そのときの精神的な傷や障害は、大人になっても深く残り続けるんですね。そうした人たちに対して、社会復帰を応援するために、職業訓練や識字教育、スモールビジネスの指導をしています。

 そして4つ目は、現場支援と同じくらい大事なことである、日本国内での啓発活動です。問題を根本から解決するためには、背景や原因を探って、その部分から取り除くしかありません。つまり、社会構造を変える必要があるのですが、実はこの問題が起きている大きな要因の一つは先進国なんです。

 最近ではフェアトレードなどが広がっていますが、わたしたち先進国の人間ひとりひとりがライフスタイルを少しずつ変えていくことで、世界全体が変わっていくはずなんですね。時間がかかるとしても、発展途上国の問題に変化を与えることができる手段はそれが一番良いんです。だから、わたしは年間100回ほど、全国を飛び回って講演しています。また、2011年3月11日以降は、東日本大震災の被災地の支援活動も行っています。

―― 『僕が学んだゼロから始める世界の変え方』は現地での支援活動よりも、そうした啓発活動の方法について重点的に書かれている印象がありました。わたしの友人にもNPO、NGOで活動している人がいるのですが、自分たちの思いを伝えるというのは難しいと聞いたことがあります。目の前の人にも伝わらないことも普通にありますよね。

鬼丸 それはもちろんあります。ただ、本にも書いたけれど、プレゼンや講演で起きたこと……伝わらないこともそうですし、逆もそうですが、それは100%伝え手に原因があると思います。それは書くことも同じです。伝わらなかったら、伝える努力が足りなかったんです。

―― そうですね。でも、どうすれば“伝わった”といえるのでしょうか。

鬼丸 それは、相手に事実と物語を提示して、相手の心が動き、変化を起こしてもらえれば“伝わった”と言えると思います。先ほどおっしゃったように、伝わるってすごく難しいんです。普段の生活の中で、途上国の問題を意識することはほとんどないでしょう。もちろん関係はあるけれど、目の前にある問題ではないですから。忙しい生活の中でわざわざ遠く離れた異国の、それも見ず知らず人々のことは想わないですよね。それは僕も同じです。ただ、その日常の中に途上国や世界を想うことを、どこかに組み入れていかなければ、問題は解決に向かいません。

 僕は、そういう風に変わってもらうために、想いとプレゼンの技術両方が必要なのだと思っています。伝わる技術がなければ変化は生まれにくいんです。

―― 思いが伝わる上で最も大切なことは何だと思いますか?

鬼丸 それは相手へのリスペクトですね。これまでたくさん講演をしてきましたが、小学生、中学生、ご老人、どんな方々も、リスペクトする気持ちを持つことで、話を聞いてくれるんです。

 逆に伝わらないときもはっきりとしていて、「自分は良いことをやっているから伝わって当たり前だろう」という気持ちが少しでもあるときです。「どうして理解してくれないんだ」と思ってしまうときは、伝わりませんね。

―― 講演が始まる前に何か自分の気持ちを高める儀式のようなものはやっていますか?

鬼丸 相手を信頼する、想いを高めるための儀式はあります。それは、皆さんももしかしたらやっているかもしれませんが、音楽を聴いてスイッチを入れますね。Superflyや小田和正さんを聴きます(笑)。

―― すごく不思議なのが、鬼丸さんは本書の中で自分のことを「面倒くさがり」だと評しているんですね。でも、そんな人が同じ活動を10年以上、先頭に立って続けてきているというのは、すごく意外でした。

鬼丸 この活動をやめるということは決めてないからでしょうね。やるべきものですから。もし団体が資金難になって職員たちを他の団体に転職をあっせんして、僕一人になっても、アルバイトでお金を稼ぎながら、続けると思います。

 また、この活動をしていると、社会から承認してもらえるし、講演での素晴らしい出会いもあって……そういう意味でも、やめる選択肢はありませんね。

―― バイトしてでも続けるという、そのくらい覚悟を持つ原点は何ですか? 本書でも引用されている高校生のときに参加したスリランカへのスタディ・ツアーで聞いたアリヤラトネ博士の言葉も印象的ですが。

鬼丸 もちろん、博士の言葉も活動を続ける上での原点の1つです。でも、それだけではありません。活動の原動力になっているのは、何よりも活動を続ける中で、自分自身も変化、成長できるということを証明したい、自分も社会に役立っているということを確認したい欲求だと思います。だから、やめるわけにはいかないし、実は使命感も気負いもそこまでないんです。

―― こうした社会的な活動をされている方は、強い使命感を持っている人も多いですが。

鬼丸 使命感は大切ですが、こだわり過ぎないほうが、何かが起きたときに、心が折れなくてすむような気がします。

―― 確かに、大きな挫折があったときに、道が断たれるともう先に進めなくなりますよね。

鬼丸 そうなんです。目的にはこだわるべきですが、手段にこだわってはいけません。わたしたちは目的を追求し、達成するために活動しているので、その手法にこだわる必要はあまりないんです。「こういう手段で達成するんだ」というこだわりが強いと、それが目的化してしまって、もしその方法では達成できないことが分かったとき、折れてしまうんです。

 僕は世界を平和するために、あらゆる手段があっていいと思います。そう思っていれば、活動は継続すると思いますよ。

「変人も突き抜ければ大丈夫。中途半端だから叩かれる」

「変人も突き抜ければ大丈夫。中途半端だから叩かれる」 「変人も突き抜ければ大丈夫。中途半端だから叩かれる」

―― 鬼丸さんは子どものころ、だいぶ変った趣味を持っていたとのことですが……。

鬼丸 「在日大使館への資料請求」という趣味ですね(笑)。単純に海外のことが知りたかったというのもありますが、もう1つは、周りに自分を認めてもらう手段だったんです。

 子どもが自主的に海外の国のことを調べたいと言って大使館に電話をかければ、「すごいね」「偉いね」と言われるじゃないですか。

―― 自分から学びたいと思ってやっているわけですから、すごいと思いますね。

鬼丸 そういうフィードバックをもらえれば、自分が承認されたように感じられるんです。もともと社会のことに関心がありましたし、最初は地理が好きで、鉄道が大好きだったので。

―― そうだったんですか!

鬼丸 今でも講演の会場に向かうときは、乗りたい鉄道に乗って行くこともあります。例えば、わざわざ長良川鉄道に乗るために遠回りをするとか。これは興奮しますね。そういう意味でも日本全国の講演会場を回るのは好きです。

―― そこから海外への関心につながっていく……のですか?

鬼丸 そうなんですよ。鉄道を通して地理に興味を持って、さらに図書室でアジアやアフリカの独立運動の指導者たちの伝記を読んで、ハマってしまったんです。今はそんなに好きではないですけど、毛沢東にハマっていた時期があって、共産主義思想にかぶれた小学生でした(笑)。

―― 本当ですか? 小学生が共産主義思想について理解するって難しくないですか?

鬼丸 藤子不二雄Aさんが『劇画毛沢東伝』というマンガを描かれていて、これがすごく面白いんです。子ども心に刺さるものがありまして、そこからインドネシアのスカルノや、フィリピンのラモン・マグサイサイ、インドのジャワハルラール・ネルー、それにガーナのクワメ・エンクルマの伝記などを読んでいました。

―― エンクルマの伝記は本書でも「特に印象的だった」と書かれていますよね。でも、当時ですと周囲は『少年ジャンプ』が全盛だったと思いますが。

鬼丸 そうなんですよ。だから、『まじかるタルるートくん』を読みながら、一方でラオス人民民主共和国について調べるみたいな小学生でした(笑)。振り幅が広いといえばいいのでしょうか。もともとマンガ家志望だったので、藤子不二雄さんや手塚治虫さんが大好きでした。

―― 不思議な趣味を持つ少年ですよね……。

鬼丸 でも、変人度が行き過ぎるとバカにされなくなるんですよ。逆に中途半端に変だと、叩かれたり、バカにされたりしてしまう。

 夢中でやっている人を本気で叩いたり、否定したりする人はいないですよ。僕はそのことを小学生の頃に経験したので、今でもこの活動ができているのだと思います。テラ・ルネッサンスを立ち上げるときも、恥ずかしさは一切ありませんでした。

―― 今時の言葉でいえば、“根っからのオタク気質”ですよね。突き抜けているオタクというか。

鬼丸 あ、そうかもしれませんね(笑)。本に書けばよかったなあ。

―― 現在に至るまで、それらが線になってつながっているというのはすごいことだと思います。普通ならば、就職で分断されると思うんです。生き方としてかっこいいですよね。

鬼丸 自分の中ではブレブレなんですけどね(笑)。ただ、これは教えていただいたことなのですが、人生って目標型と展開型があって、自己啓発書を執筆している方はおそらく目標型が多いと思うんですね。ある目標があって、夢に日付を入れて、逆算していくというやり方です。でも、実際にそれを実行できる人はほんの一握りで、経営者やマネジメント層であっても、ほとんどの人は展開型です。そのときの人や本や言葉や作品との出会いに影響を受けて、人生を進んでいくタイプだと思います。僕自身も実はそうですから。

 でも、そういう人でも流されずに生きる方法はあります。その出会いに感謝するんです。僕の場合、制約が多すぎて感謝しなければいけない環境で育ったんです。例えば、高校に通うにも、自動車で最寄りの駅まで連れて行ってもらわないといけない。だから親に感謝ですよね。また、家から一番近いダイエーは自動車で40分。それも誰かに自動車に乗せてもらわなければ行くことができません。子どものころ、制約だらけだったこともあって、今、自由にできる環境がすごくうれしいんです。

 それに、誰かにやってもらわないと自分一人だけでは何もできないから、せめて相手に喜んでもらおうという考えが身に付きます。今でも僕は助手席で寝られないんですよ。運転手から「こいつ、乗せてやっているのに何で寝ているんだ?」と思われたら嫌じゃないですか(笑)。だから、話をしたり、眠気覚ましのコーヒーの缶を開けてあげたりします。

―― 大学進学を機に福岡から関西に移り住んだときはどんな感じでしたか?

鬼丸 大学へ進学するために関西に出てきて、新聞奨学生になって4畳半の部屋を借りたとき、本当にうれしかったですね。制約だらけの中で生きることは、その後にたくさんの希望をもたらすんです。

 それを強く感じるのが、発展途上国や被災地の人々です。先週も岩手に行ってきましたが、正直、復興はまだまだ進んでいないように感じます。それでも、一生懸命生きていこうとしている人たちがいます。途上国も、わたしたちから見れば「可哀想」と思うかもしれないけれど、彼らは自分たちのことを可哀想などと思っていません。彼らは力がある存在で、ただ制約が多いだけなんです。だからこそ、ささやかなことにも喜びを感じられるんですね。

―― 途上国はまさにそうでしょうね。今までできなかったことができるようになって、もっと頑張ろう、少しでも豊かにしていこうという気概があります。

鬼丸 この本でも、ウガンダの元子ども兵の話を書きましたが、本に書けないような悲惨なエピソードはたくさんあります。けれども、彼らは悲しみや苦しみを知っているからこそ、そこから立ち上がって、前に進もうとしているし、周囲の人を助けようとする姿勢を持つことができるんですね。

 苦しみや悲しみがないのが幸せだと思ってしまいがちですが、わたしはそうは思いません。悲しみや苦しみと付き合える人が幸せな人です。悲しみや苦しみ、悩みを人生のエネルギーにすることができる人が素晴らしいのだと思います。

 それを教えてくれたのが、支援現場の人たちで、僕の中にもみにくさや汚さがあることを教わりました。正直な話をすると、清廉潔白だったらこの活動はできないですよ。弱さや悩みを抱えることからまず始めないといけないんですから。

―― 本書5章の「善きことは、カタツムリのはやさで進む」は、ガンジーの言葉ですよね。

鬼丸 そうです。これはわたしが世界で一番好きな言葉です。

 組織のマネジメントをしていると、実はなかなか待てないんですよね。何度言っても分かってもらえないし、期待通りの変化もしてもらえない。でも、彼らも変わりたい、成長したいと思っている。

 ある経営者の方に、「経営者やマネジメントする立場になったとき、何が一番大事なのか」を聞いたとき、その人はこう言ったんです。「これだけは本気で信じろ。どの部下もお前を成功させようとして頑張っていることを」。これを信じられるかどうかだと言うんです。

 人間だから期待通りにいかないことは普通です。そこで相手を信じられるか。信じられるならば、部下を育成することができると言われました。これは社会も同じだな、と。行動を起こせば、カタツムリのはやさでも善い方向に進んでいきます。だからわたしは「革命」が嫌いなんです。改革や改善、進歩はありますけど、革命はありえない。人間がやっていることですから、徐々に変わっていくものだと思うんです。

―― では、『僕が学んだゼロから始める世界の変え方』をどのような方に読んで欲しいですか?

鬼丸 まずは学生の方々ですね。社会に関わりたい、社会の中で自分の役割を果たしたいと思っている人に読んでほしいです。また、社会人になって3年目までの若いビジネスパーソンにも読んでもらえると嬉しいです。

 わたしの年代から見ても、日本はもう過去の栄光を取り戻すことができないと思えてしまいます。人口は減少していきますし、先日ニュースに出ていましたけど、2040年までに自治体の半数が消滅する可能性があるという推計も出ています。そういった過酷な未来が待っているなかで、生き抜く力を持ってほしい。この本が自分の目の前を照らすほのかな明かりになってもらえるとありがたいです。この本を読んで、一歩前に足を踏み出してみようかなと思ってもらえれば幸いです。

―― 最後に、このインタビューの読者の皆様にメッセージをお願いします。

鬼丸 わたしでも、ささやかですが、社会に何らかの役割を果たすことができてきました。この本ではそのプロセスを書いているので、読んでいただいて、ご自身にも社会に果たす役割があることを感じてほしいです。

 あなたにしか変えられない何かがありますし、あなたにしか救えない命があります。自分の役割を放棄することは、あなたが救うはずだった命を放棄するということになります。あなたの手助けを誰かが待っているということを、この本を通して感じてほしいですね。

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