出版業界ニュースフラッシュ 2014年5月第3週

出版業界で先週起こった出来事をまとめてお届けする週刊連載。5月第3週は日販の中期経営計画の進捗、ブックオフの決算などが話題になりました。

» 2014年05月19日 11時00分 公開
[新文化通信社]
新文化通信社

河出書房新社、「日本文学全集」(池澤夏樹=個人編集)刊行へ

 11月に、同社では47年ぶりの「日本文学全集」(全30巻)の刊行を開始する。2007年11月に刊行し始めた「世界文学全集」(全24巻)以来、7年ぶりに池澤氏が個人編集する。当時、「全集の刊行は無謀」といわれたが、累計40万部を実売した。「日本文学全集」も書店を通じて学校・公共図書館、個人向けに全巻予約を促進し、市場を喚起させる。全巻予約者には特製ブックスタンドを進呈。来年3月末日までの申し込み分には、本体8万7400円を10%オフした特別定価で対応する。

 5月15日、東京・神楽坂の日本出版クラブ会館に取次会社やマスコミなど約100人を集め、『こども生物図鑑』(6月下旬刊)、『世界の音楽 大図鑑』(10月下旬刊)、『なんでもまる見え大図鑑』(11月刊)の図鑑3点と『美しい知の遺産 世界の図書館』(10月上旬刊)など大型企画を発表した。

新潮社、『村上海賊の娘』がミリオン達成

 第11回本屋大賞受賞の同書は、受賞後に販売ペースが急上昇したため、上巻37万部、下巻30万部を増刷し、5月16日発注の16刷の重版で累計100万5000部(累計=上巻54万7000部、下巻45万8000部)となった。

 著者の和田竜氏は「(新潮社における)歴史・時代小説での100万部突破は司馬遼太郎さんの『項羽と劉邦』(1980年)以来らしく、エエんかいなという気分でいっぱい」とコメントしている。

日販、来年3月の「ゴール」へ意欲

 5月13日、東京・水道橋の東京ドームホテルで2014年度「日販懇話会」を行い、出版社や書店など約280人に中期経営計画「Change」の最終年度である今期の事業方針を伝えた。2014年3月末までに「書籍返品25%、書店マージン4%アップ」を目指す同社の進捗を報告。

 発売日前に新刊事前申込みができる書店向け「アドバンスMD」については、その対象商品を月間110点から750点の規模に拡大。現在約800書店が実施しているが、契約する2000書店に広げる。売上げに対し最大3%のインセンティブが発生する「PPI」では、昨期に140億円の売上げ創出効果があったとし、「ハイプロフィット企画」は対象商品をいまの4800点から1万5000点に拡大する計画も伝えた。

 さらに、店内に在庫がなくてもその場で発注、事前予約もできる「attaplus!」は3月末時点で導入14書店で1万人が購入。現在は50書店以上が導入しているが、これを500書店に拡大するとした。また、雑誌定期購読システム「Maga-STOCK」についても、現在の133書店から500書店に広げる考えを示した。

 平林彰社長はトリプルウィン・プロジェクトが発足した2001年からこれまでの取り組みを総括し、産業構造を変える「ゴール」へ決意を新たにした。66期単体決算について、売上高5667億円(前年比2.5%減)の見通し。返品は「書籍」で改善したものの、「雑誌」で悪化したと伝え、「大変、不甲斐ない実績」とした。

ブックオフ決算、売上高3%増に

 ブックオフコーポレーションは5月13日、2014年3月期(平成25年4月1日〜同26年3月31日)連結決算を発表。売上高は前年比3.2%増の791億5900万円、営業利益は20億2400万円(同5.7%増)、経常利益は26億0800万円(同10.2%増)、当期純利益は9億5100万円(同10.1%減)。

 最終益の減少の要因は、約30店舗の閉鎖に伴う減損や、新規に設立した子会社・ハグオールの初期赤字に伴う税負担率の増加などによる。

 セグメント別の売上高は、ブックオフ事業が536億4800万円(同2.2%増)、リユース事業が143億7900万円(同14.6%増)、パッケージメディア事業・その他が111億3000万円(同4.4%減)だった。

 先日発表したヤフーとの資本・業務提携について松下展千社長は「2年間は我慢。少しずつ利益を拡大してやがて花を咲かせたい」と語った。

Copyright 2015 新文化通信社 All Rights Reserved.