インタビュー
» 2014年05月15日 11時00分 UPDATE

祝・単行本第1巻発売記念:現代版“ゆるゆる”まんが道「漫画専門学校生の青春」にみるケミストリー

横山了一、山田こたろの異色タッグが描く現代版“ゆるゆる”まんが道「漫画専門学校生の青春」。月刊コミックゼノン初の4コマ連載の第1巻発売を記念して、横山さんにいろいろ聞いちゃいました。

[西尾泰三,eBook USER]

 漫画家、横山了一。

 暴力団の組長が実は少女マンガ家志望という『極☆漫』(月刊少年チャンピオン)や、魔界を追い出された魔王がプロレスラーとして活躍する『魔王ベルフェゴール』(月刊少年ライバル)など、ストレートなギャグ作品を世に送り出してきた横山氏。

 そんな横山氏は今、マンガ業界をユニークな視点で切り取った2つの作品の原作も手掛けている。

漫画専門学校生の青春 漫画専門学校生の青春1巻の。表紙山田こたろさんの描くキャラはとても愛らしい。主人公(浦島勇人)の姿はないが……

 1つは、出版社を擬人化し、ギリギリアウトなマンガ業界のリアルを描いた4コママンガ『飯田橋のふたばちゃん』(作画:加藤マユミ、以下ふたばちゃん)。そしてもう1つが月刊コミックゼノンで連載中の『漫画専門学校生の青春』(作画:山田こたろ、以下漫専)だ。

 月刊コミックゼノン初の4コマ連載でもある漫専は、漫画専門学校を舞台に、漫画づくりのイロハや業界の現実をちりばめた、いわば現代版“ゆるゆる”まんが道。横山ワールドと形容すべきギャグのエッセンスと、山田こたろさんが描くキャラが絶妙にマッチし、ふたばちゃんとはまた違った魅力がある。

 ふたばちゃんはコミックス第2巻が4月に発売されたばかりだが、漫専も第1巻が5月20日に発売となる。実はこの両作品、コミックスの発売に関連したコラボ企画を展開しており、それぞれの作品に別の作品のキャラが登場して相互に作品を紹介している。

 そこで今回は、横山氏と、漫専の担当編集である月刊コミックゼノン編集部の田中剛志さん、副編集長の渡邊慎之介さん、そしてふたばちゃんの担当編集、漫画アクション編集部の國澤正火土さんを交えて聞いた。

漫専は現代版“ゆるゆる”まんが道

横山了一さん 横山了一さん。インタビューの場は、東京・高円寺にオープンした「漫画空間」。マンガを描くのに必要な道具をそろえ、マンガが描ける空間として非常にユニークな場所だ。漫画空間については日を改めて紹介したい

―― 横山さんにインタビューさせていただくのは約1年ぶりですね。飯田橋のふたばちゃん2巻発売おめでとうございます。今回は漫専のお話を中心にお聞きできればと思います。漫専は4コマを基本としながら漫画家としての成長ストーリーを持たせて、それでいてギャグが詰まった構成がいいですね。

横山 ふたばちゃんのキャラというのは血も涙もない感じで、それを絵でかわいくしている劇薬みたいな作品なんですけど(笑)、漫専はキャラを応援してもらえるまっとうに面白い作品を目指しているので、業界のことをよく知らなくても楽しんでいただけると思います。

 マンガを描くノウハウをちりばめ、夢を追うことに共感してもらいつつ、応援したくなるような親しみのあるキャラを作ろうということで、あまりエキセントリックなキャラにしないと渡邊さんともお話しましたね。

―― 漫専は現代版“ゆるゆる”まんが道をうたっていますよね。実際、マンガの描き方のテクニック的なことも盛り込まれていて勉強になるんですが、これは実際に漫画専門学校などを取材されたりもしたんですか?

横山 はい。ヒューマンアカデミー 東京校さんや、ここ(漫画空間東京高円寺店)の店長でもある漫画家の深谷陽さんが講師をされている東京デザイナー学院の授業などを取材させていただいたりしました。

 初期は学校の授業の様子を描いていたんですが、キャラもいろいろ出てきて、いろいろな側面も見せたいなとさまざなな試みをしている最中です。

―― 漫専もふたばちゃんも4コマを基本としていますが、そこは横山さんのこだわりですか?

横山 オチがなくても面白い空間を作り出せる作家さんもいますけど、僕はちゃんとオチがないと不安になるタイプで、どんな形でも4コマ目には笑いを入れたいなって思うんです。

 個人的には普通のコマ割りの方が早く完成するんですが、4コマに凝縮するのはやはり時間が掛かりますね。だから、もしこれから仕事を増やすとしたら4コマはやらないでしょう(笑)。でも、漫専に関しては4コマ形式が合っているなと思います。ドラマティックなことが立て続けに起こるようなタイプのものはないですしね。

山っ気があるアクションとオシャレなゼノン

tnfigmansen007.jpg eBook USERで連載中の『飯田橋のふたばちゃん』2巻。漫専とのコラボマンガも収録されている

―― ふたばちゃんは1巻でもかなり飛ばしていましたけど、2巻ではさらにぶっ飛んでいってますよね(笑)。

横山 1巻は小学ちゃんの原稿紛失ネタが際立っていましたが、2巻は秋田ちゃんの攻めたネタを盛り込んでいます。1巻がジャブなら2巻はストレートを打ち込んだ感じですから(笑)。

―― ふたばちゃんの作画は横山さんの奥さまでもある加藤マユミさんですが、こたろさんとの仕事の進め方などに違いは感じられますか?

横山 そうですね。嫁(加藤マユミさん)は、ネームの味をそのまま再現してくれます。僕がネームで描く女の子のキャラがかわいくないとすぐ書き直されてしまうんですけど(笑)。

 こたろ先生もコマ割りなどを含め忠実でありながら、表情を柔らかく描いて頂くなど読みやすく、いい方向に作用していると思います。ゼノンさんは才能ある若い女性作家さんの力を引き出すのがうまいですね。

渡邊 男性が書く視点を女性が描くことでケミストリー(化学反応)が起こる、というのが連載開始時に期待していたことなんです。

―― こうした原作と作画のペアリングってどうやって決まるものなんですか? ふたば1巻には加藤さんが(ふたばの)作画に立候補する様子が描かれていましたね。

横山 ふたばの場合は、今どきの絵が描ける漫画家さんでいい方いませんか? という感じで國澤さんに相談したとき、「いないんですよ」という話になって、「えー」と思っていたら嫁が立候補してきたんです(笑)。

 こたろ先生は、先生のお姉さんで漫画家の山田可南先生と嫁が知り合いだったのがきっかけです。可南先生がうちに遊びに来られたとき、「今ゼノンで漫画専門学校を舞台にした作品の企画があって、妹がそれやってるんだけどネームが切れなくて……」という話を聞いて、「やります!」って。

出張その35より

―― なるほど。横山さんが、コミックゼノンとWEBコミックアクションの特徴をそれぞれ端的に表すとしたら?

横山 アクションは山っ気があります(即答)。ヤバいネタでも通してくれるような、一発当ててやろうというのをヒシヒシと感じます。営業と編集がタッグを組んで製販一体で当たっていらっしゃるのも心強いですね。

 ゼノンは……オシャレです(一同笑)。まず、ビルがオシャレ、そして編集者さんもオシャレ。吉祥寺にあるカフェゼノンのように飲食業なども手掛けておられるので、全体的に女性受けがいい雰囲気というか。

渡邊 いやうちも泥臭いですよ(笑)。編集部は男性しかいませんし、体育会系ですし。原哲夫のイメージも強いので世間的には“男”と思われていますから。

漫専は「最初の読者」をしっかりつかみたい

―― 皆さんがここ最近の業界の動きで気になったのは?

横山 休刊が多かったですよね。僕が単独で連載している『魔王ベルフェゴール』が載っている『月刊少年ライバル』の休刊が発表されたのが個人的には一番驚きでした。原作に専念するいい機会なのかもととらえていますけど。

國澤 私は書店に対しての取り組みでしょうか。ゼノンさんはそこに以前から計画を立ててしっかり取り組まれているように思います。

 作品のことは作家さんの次に編集者がよく分かっていますから、それをアピールするのは作家、それが難しければ編集者が営業と協調しながら効果的にやるのがよいんですよね。

横山 そうですね。だから、書店さん向けの特典の話などは時間が許す限りやっていますね。ふたば1巻の発売のときも書店さんごとに販促のイラストやサイン色紙をたくさん描いたりしました。

田中 専門店と一般店の両方できちんと売ってもらうための取り組みはやはり重要ですよね。漫専についていえば、「最初の読者」、特に男性の読者をまずしっかりとつかむことが重要だと思っていて、専門店向けの企画には特に力を入れるつもりです。

tnfigmansen004.jpg 月刊コミックゼノン副編集長の渡邊慎之介さん

―― 作品によって販促企画にもいろいろな戦略があるんですね。

渡邊 例えば原哲夫や北条司などの作品ですとTSUTAYAさんなどの郊外型の大型店舗と相性がいいんです。都内だと意識しにくいかもしれませんが、今、地方では車で行くような郊外の大型店舗が増えていて、そうしたところに足を運ぶ方と北斗の拳などの作品の親和性は高いんです。

―― いわゆるマイルドヤンキーなどと呼ばれたりする層との親和性ということですね。確かに漫専のコア読者層とは少し違うでしょうから、それに合った施策があると。

 ところで少し話を変えて、月刊コミックゼノンの作品がコミックスになるときは電子版も同時刊行していますか?

渡邊 基本はやや遅れて電子版を刊行していますね。ただ、例えば、宮崎摩耶先生原作で、月刊コミックゼノンで連載中の『ジェノサイダー』(現在はWEBコミックぜにょんにて連載中)のように、ネットでの需要が高いものは(紙と電子で)同時に刊行したりします。WEBコミックぜにょんの作品なども基本同時刊行ですね。

ゼノンが雑誌作りでこだわっているのは、“作品との出会い”

―― ここ数年でWEBコミックサイトなどもかなり増えました。Webコミックアクションもそうですし、WEBコミックぜにょんもそうですよね。一方でマンガボックスやLINEマンガなどもあり、そして電子書店でコミックスが電子書籍としても販売されています。そんな状況を皆さんはどう見ていますか?

渡邊 フルスイング過ぎてコミックゼノン本誌だと読者に敬遠されてしまうかもしれないけれど、だからダメという風に作品を潰すのではなく、違う場所を作りましょうという感じですね。

 単純にビジネスだけで考えればWebのみでやるのが効率的ですが、今の時点では、Webはどうしても作品単体で読まれて終わってしまいがちです。ゼノンが雑誌作りでこだわっているのは、“作品との出会い”で、どうすれば紙の雑誌が持つそうした機能をWebでも提供できるかを考えていきたいです。

田中剛志さん 月刊コミックゼノンの田中剛志さん

田中 雑誌は買わずにコミックスで、という若い方は珍しくなくて、作り手側にも雑誌で連載したい、という意識が薄くなってきている傾向はありますね。書き手がそうであればWeb上での作品公開は増えていくのだろうなとは思います。

横山 それはまさに僕がそうです。僕は最初、Webで連載するのに抵抗がありましたから。ただ、実際にやってみると、センセーショナルな話題をネタにしたときなど反応がダイレクトに返ってくるんですよね。それはWebならではだなって思って。それからは「絶対に(紙の)雑誌じゃなきゃ嫌だ」とは思わなくなりましたね。

 ただその一方で、僕自身が、まとまった作品は紙で読みたい、という風に感じているんです。だから、紙が全部消えてしまうのは嫌だなって思います。

―― 今回のコラボはそれぞれの作品に別作品のキャラが登場する形なんですよね。ふたばちゃんの2巻には漫専のキャラが登場していましたが、ふたばちゃんが月刊コミックゼノンにも登場するんですよね。eBook USERで連載させていただいているふたばちゃんにも漫専コラボの回を期待しています! 最後に、横山さんがそれぞれの作品でお気に入りのキャラを1人挙げるとしたら?

横山 ふたばちゃんは、2巻に出てくる徳間ちゃんが最近の一推しですね。残念系美女という感じで(笑)。

 漫専は、「稲葉なゆか」というヤンキー系のギャルがいるんですけど、その子が一番描いてて楽しいですね!

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