連載
» 2014年04月16日 11時00分 UPDATE

あの書店のスタッフに直撃:電子書店の中の人 13回目――comicoの中の人

いつもお世話になっている電子書店。電子書籍を購入しているこの端末の向こうにだってスタッフがいる。なかなか見えてこない「電子書店の中の人」にインタビューした。

[渡辺まりか,eBook USER]

 電子書店、または電子書籍ストア――わたしたちはここ数年でその存在を少しずつ認知するようになった。

 とはいえ、書店と言えば、リアルの書店(実書店)を思い浮かべる方の方が圧倒的多数だろう。現時点で、わたしたちは電子書店のことをまだよく知らない。しかし、そこにはリアルの書店と同様、「人」が介在している。

 この連載は、“電子書店の中の人”にフォーカスし、どんな人が電子書店の運営に携わっているのかを紹介しながら、その電子書店の“雰囲気”を感じてもらうためのものだ。

 第13回目となる今回登場頂くのは、Webコミックサービスの1つ、NHN PlayArtが運営する「comico」の中の人・北室美由紀さん。

何もないところからのスタート

―― 北室さんは、現在、どのような立場で働いていますか?

北室美由紀さん comico事業部編集部・北室美由紀さん

comico事業部編集部・北室美由紀さん(以下北室) 作家担当を主にしています。作家さんから原稿をもらったり、今後作品をどうしていこう、などといった打ち合わせをしたりしています。つまり、編集者業務ですね。複数の作家さんを担当しています。

―― comico事業部に異動して、戸惑ったことなどはありますか。

北室 NHN PlayArtで初めてのマンガを取り扱う事業部ということで、何もないところからのスタートだったため戸惑いだらけでした。まず、作品を連載してくれる作家さんを探すところから始めなければいけませんでしたし。

―― どのような方法で作家の発掘をしたんですか?

北室 基本はWeb上でクオリティーの高いマンガを公開している方にメールでお声掛けしました。それから専門学校でマンガ学科のあるところを10校以上回って、描いてくれる人を探したり、コミケに行ったり。コミケには、大阪や新潟など遠方から来ている方もいたため、新しい出会いもありました。

 最終的には1日に8作品更新するのに十分な人数、56人以上の作家と出会えました。

―― 発掘するにあたって、苦労したこともあったのではないでしょうか。

北室 そうですね。1つ目に、わたし自身、もともとマンガ好きなのですが、好きだからこそ、お声掛けするのが好みの作風に偏らないように気をつけました。

 ほかに苦労したことといえば、詐欺メールに間違われたことですね。

―― 詐欺メールですか。

北室 comicoという名前自体、まだ世に出ていなかった状態でしたから「今度、NHN Japanでcomicoというスマートデバイスに特化したマンガサービスを始めたいと思っています。つきましては、掲載する作品を描いていただけないでしょうか?」とメールしたって、怪しいだけですよね。

 しかも、この事業の準備期間中に、ちょうど社名変更があり、2回目に出したメールで「社名が変更になりましたー」ってもう、怪しさ満点です(笑)。

―― それは怪しい(笑)。
編集部注:NHN Japanから現在の社名に変更したのは2013年8月1日のこと。comicoのサービス開始は2013年10月17日。

北室 でも、メールのやり取りを何度もしたり、電話をしたり、契約を交わすために遠方でも直接出向くことで、最終的に信じていただけました。出版業界では、編集部から出向く、ということが少ないようですが、わたしたちから作家さんに会いに行くことで、本気度を感じてもらえたように思います。

―― 遠方の作家ほど、そのように感じたかもしれませんね。ところで、日々、作家とやりとりをしている北室さんですが、この事業部ができる前はどのような仕事をしていたのですか?

北室 アウトソーシングの管理業務をしていました。それが、現在の業務にも役立っているのでは、と思っています。

 例えば、編集という仕事柄、「ここをもっと良くしたら、人気も上がるのに」と思うとき、それを伝える必要がありますよね。そのようなときでも、作家さんごとに伝え方を変えて、より受け入れやすくできているんじゃないかと。また、それぞれの作家さんの好む方法――例えば、電話がいい、とかLINEがいいなどですね――相手に合わせた方法でコンタクトを取るようにもしています。

―― 大勢の作家がいるのに、それぞれの性格を把握しているんですね。これは大変そうです。

マンガが大好きで毎月1万円分

―― ところで、先ほど、もともとマンガが好きとおっしゃっていましたが、毎月どれくらい読んでいるんですか?

北室 制限して、毎月1万円まで、と決めています。

―― 制限して1万円ですか? 20冊くらいになりそうですが……。

北室 制限してです。そうでないと、際限なく買ってしまいますので。おかげで、家の壁一面、マンガで埋められていますし、実家にも大量に置いてあって、親からも「いい加減にしろ」と怒られています(笑)。

―― 子どものころ読んだ本……北室さんの場合はマンガになるかもしれませんか、最も印象に残っている作品はありますか?

北室 『うる星やつら』です! 初めてお小遣いで買ったマンガなんですが、設定の面白さ、ギャグのセンス、高橋留美子先生の描くあの体の線の美しさ、どれをとっても最高ですね。今でも大好きです。

 特に、ラムちゃんのストレートな性格は好きでした。あまりにも好きすぎて、ラムちゃんになりたいと思い、若いころ、髪の毛を緑に染めたこともありました。でも、苔が生えているようにしか見えなくて、すぐに元の色に戻しちゃったんですけど。

―― それは強烈ですね(笑)。それは現在の好みのジャンルに影響を与えていますか?

北室 今は少年少女問わず、頭脳を使ったバトル物が好きなので、それほどでもないかもしれませんね。最近では気に入った作品は3回読み直して、「自分だったらどんな風に戦うだろうか。この戦いで勝つのはどちらだろうか」などと考えながら読んだりします。

 でも、この仕事をするようになってから、好きなジャンルのものだけではなく、どんなものが読まれているかを知る必要があるので、より広いジャンルの作品を読むようになりましたね。

―― comicoについてもお聞きしたいのですが、ほかにはないどんな特徴がありますか。

北室 フルカラーで縦スクロールで読む作品と、それを生み出しているのがcomico独自の作家さん、というところです。ほかのWebコミックは、紙のマンガをスマートデバイスの画面に表示しているだけ、といった印象を受けますが、comicoはスマートデバイスに特化した作品作りをしてもらっています。それもあり、先日行われた「comico作品投稿コンテスト」ではみなさん表現に苦労されたようでした。

編集部注:3月15日に行われたコンテストでは、大賞受賞作品はなく、新しい表現方法にまだ慣れていないことがうかがえた。
 「comico作品投稿コンテスト」受賞者のみなさん

 また、読んでみて面白いと思ったら、SNSですぐにシェアしたり、コメントを残すことができ、作家を応援しやすくなっているのも特徴です。

―― 今後、どんなことに挑戦したいですか。

北室 ちょっと大きなことを言っていいですか? comicoと作家さんを紙の雑誌と同じくらい有名にしたい、という野望を抱いています。

 そのために、わたしたちサービス提供側はユーザー目線に立って、より使いやすいUIを開発し、面白いコンテンツを提供できるようにしたいですし、作家さんにはよりスキルアップしてもらい、comico独自の描き方を極めて、より質の高いものを作ってもらいたい、と考えています。

 また、読者の皆さんには、ぜひcomicoの作品を読んでみて欲しいと思います。70作品を常時掲載していますから、きっとお気に入りの作家・作品が見つかると思います。そして、作家のモチベーションアップにつながるので、面白かったら、温かいコメントを寄せてもらえたらうれしく思います。

―― 今日はどうもありがとうございました。

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