ハーバード大学出身という高学歴の持ち主ながら、22歳のときに来日し、異国の地で日本人とお笑いコンビを結成。バラエティ番組だけでなく、語学番組や教養番組にも出演し、軽妙なトークでお茶の間の人気者となった外国人といえば、パックンマックンのパックン、本名パトリック・ハーランさんです
ジャーナリストで東京工業大学教授である池上彰さんの紹介で、2012年から同大学の非常勤講師に就任し、「コミュニケーションと国際関係」という講義を担当しています。大教室が満員で生徒が入りきらなかったというその人気講義が、『ツカむ!話術』(KADOKAWA/刊)というタイトルになって書籍化されました。
本書のテーマは「トーク術」。ハーバード大学で学んだ理論と、お笑い芸人やコメンテーターとして実践で磨いた話術を余すことなく伝授してくれます。
この本の目的は、人の心をつかんで、相手を動かす側に立つこと。そのためにパックンは「3K」を目指すといいます。
でも、「キツイ・キタナイ・キケン」がどうしてコミュニケーションに役立つのでしょうか? ……という冗談はさておき、パックンの言う3Kは「気持ち・考え・行動」。これは、古代ローマで世界一の話術を持っているとうたわれたキケロが、相手を説得するときに大事なこととして説いた3つのことです。
気持ち、考えを変えることで行動が生まれる。結構忘れがちなことですが、コミュニケーションの目的として、この「3K」は常に心に持っておきたい言葉ですね。
世の経営者に求められるのが、プレゼンスキル。いわゆる、相手を説得する力です。パックンが本書でそのプレゼンスキルを絶賛している経営者が、ジャパネットたかたの高田明社長です。
高田社長の持っているトーク術を具体的に説明すると、以下のような特長が浮かんできます。
商品に関心を寄せない人に、関心を持たせるテクニックを高田社長は駆使しているのです。
パックンは、日本では「売り込み」の技術を得意としている人が少ない気がすると言います。でも、自分自身の売り込みスキルは大事になってきます。周囲が不得意としている中で、今のうちに売り込みのスキルをあげておけば、それが他者との差熱化にもつながるはずですよ。
相手の心をつかむ上では、話す技術だけではなく、見た目も極めて大事だというのがパックンの主張です。
例えば、レーガン元大統領のメディア顧問であったマイク・ディーヴァー氏は「テレビにおいて視聴者が注目しているのは、85%が見た目、10%が言葉の印象、そして5%が話の内容だ」と指摘しています。
見た目といっても清潔な格好するという以外にも要素はたくさんあります。話を聞くときのちょっとした仕草であったり、態度もそう。ブッシュ・ジュニアとアル・ゴアの争いとなった2000年の大統領選挙で公開ディベートが行われた際に、ブッシュ・ジュニアが話をしている間、アル・ゴアが少し小馬鹿にしたような表情でそれを見ていたそうです。その表情が鼻についた人が大勢いたのか、アル・ゴアは敗北してしまいました。
話を聞く態度も見られています。幾ら良い話をしても、態度が微妙ならば受け入れてもらえないのです。
本書は、前半が人を説得させる要素を形作る「エトス」「パトス」「ロゴス」を説明し、中盤で東工大のイベントで池上さんとの対談をした際の内容を収録、そして後半では具体例を用いながらコミュニケーションの方法を教えてくれます。
文章の端々に細かいギャグが自然に入り込んでいるのは、さすがお笑い芸人と思わされますし、パックンの頭の回転の速さに驚かされる部分もたくさんあります。特に、付録として掲載されている、パックン自身の“鼻に付かない程度の自慢と自虐だらけの自己紹介”はさすがの一言
楽しみながら学ぶことができるハーバード流(?)トーク術。きっと役に立つはずです。
(新刊JP編集部)
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