本屋探訪記:国立にある「国立本店」は決して本屋さんではない

BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は東京・国立の「国立本店」を紹介。

» 2014年04月07日 15時00分 公開
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 さる日、国立の本屋さん巡りをしようと思い立った。というのも下北沢お散歩カメラの先生に良い古本屋があると教えて頂いていたからだ。絵本と洋書を扱う場所だという。西国図書室もクルミドコーヒーのことも気になっていたので「これは丁度良い」と国立へ行くことにした(以下は2013年4月26日の記録だ)。

「国立本店」は本屋さんではない

 本屋探訪記だというのに「本屋ではない」なんて穏やかでないが、これが本当なのだ。というか本屋だと思っていたというのが正しい。だから、わざわざこんな書き方をしてしまった。

 国立に面白い本屋さんがあるという話は前から知っていた。それも「国立本店」という「じゃあ支店はどこなんだよ」とツッコミをいれたくなる変わった名前なこともありよく覚えていた。

 ところが、実際に行ってみると様子が違う。店員さん(?)に「本は売りものではない」といきなり言われてしまう。「え? じゃあ何なんですか?」と聞いてみると「本を中心にしたコミュニティースペースだ」という。どういうことか分からないのでもう少し詳しく聞いてみた。

ワークショップとレンタル図書室

 それによると国立本店はオープンから既に6、7年経っているようだ。その間、運営者が何回か変わり、今は「ほんとまちの編集室」というデザイナー集団が運営しているという(本屋さんだったこともあるようだ)。

 活版印刷ワークショップや期間限定での古本市、忌野清志郎追悼イベントなど本にかかわるイベントを企画して「本を中心としたコミュニティースペース」を目指しているのだそう。

 壁一面に積み重ねられている本棚の脇には名前が書かれたカードが貼り付けられており、登録することで名前と蔵書の一部を本棚に置けるようになるらしい。来館者は手にとって立ち読みするも良し。椅子に座ってじっくり読むのも良し。本棚を眺めながら店員との話に花を咲かせるのも良し。

 ただし、販売やレンタルはしておらず、あくまでも来館者とのコミュニケーションのために本はあるようだ(レンタルは2014年1月15日から開始)。

レイアウト

 店内は6畳ほどのスペースにガラス張りの入り口と真っ白な壁。奥に広いスペースなので狭苦しさがなく解放感を覚える。

 スペースの左辺は一面の本棚。ここに都内近辺のデザイナーや学生、編集者、ブロガー、シェフ、SE、読書アドバイザー、西国図書室、黒ホッピー愛好家(!)などさまざまな肩書きの人が本を置いているのだ。

 本は少なく販売もしていないが、『ピタゴラ装置』や『デザインするな』『旅する力』など硬軟取り混ぜて本当にいろいろある。

 スペースの右側は座って話すための机椅子と国立周辺の地図がある。きっと街の案内などをこれを見ながら行うのだろう。

国立は面白い!

 店員と話していて思ったのは、国立は今、面白いということ。「国立本店」の目の前にある地産地消型の八百屋さんやカフェ、雑貨屋さんなど若い人が開いたお店が多数あるようで、さらに学生街ということもあり古本屋がたくさんある。これは素晴らしい。わざわざ来た甲斐があるというものだ。

 この「国立本店」を皮切りに国立本屋巡りが始まるのであった。

著者プロフィール:wakkyhr

本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。同名のネット古本屋も営む。このほか、電子雑誌「トルタル」や本と本屋とつながるWebラジオ「最初のブックエンド」、NPO団体「ツブヤ大学」に本に関するイベントの企画班として参加。「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。

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