新生活を始めるあなたに捧げるコミックス社会人編 〜IPPO〜

新生活の始まるこの季節にぴったりなコミックス特集、今回は新社会人となったあなたが新たな一歩を踏み出す気持ちを持てる作品を紹介します。

» 2014年04月01日 15時16分 公開
[ラノコミどっとこむ]
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 卒業、進学、就職などに伴って、新たな世界への一歩を踏み出す多くの方々。そんな皆さんの前途を祝して、ラノコミどっとこむでは、数回に渡り、新生活にオススメのコミックスをピックアップ。

IPPO IPPO

 今回は、社会人のあなたに捧げるコミックスとして、えすとえむさん作、『IPPO』(ジャンプ改コミックス/〜2巻 以下続刊)を特集しちゃいます。

 一条歩(いちじょう あゆむ)は靴職人。12歳でイタリアのフィレンツェに渡った彼は、祖父の実家である靴の名門・ジェルリーニにて修行した後、17歳から靴職人として働き始め、22歳で、東京に店舗兼工房・IPPOを開店させます。

 若いながらも確かな技術を持つ彼の元にやってくるのは、さまざまな悩みを抱えた人たち。歩は、彼ら一人一人と正面から向き合い、世界に1つだけの注文靴を作っていきます。

 ある日、IPPOに来店した女性――足立結(あだち ゆい)。彼女は、2年前に交通事故に遭い、左足が義足となりました。事故当時、モデルだった結は、今後、モデルとしての活動は無理でも、デザイナーとしてならかかわれると考え、現在、駆け出しのデザイナーとして仕事をしています。

 そんな彼女がIPPOを訪れたのは、ある思いからでした。


必死でリハビリに励んだわ
幸い いい義足にも出会えた
でも何か足りないなって

はけなくなった大量のハイヒールを処分しながら ああ これだって
今までは飾るための靴だったけど
今度は歩くための靴を作ろうと思ったの

 義足にフルオーダーの高価な靴なんておかしいかもしれない、けれど前を向くのに心だけじゃ足りないことだってある。

 結の思いを聞き遂げた歩は、彼女の未来へと進む1歩のために、制作に取り掛かります。次の1歩を踏み出すための靴。そのために必要なものとは何なのか。悩む結に歩が見せたのは、ある特徴的な革素材でした。

 また別の日。IPPOには、一足の靴を手に、これと同じ靴を作ってほしいと依頼するひとりの男性が訪れます。3年前、父親を亡くした男性は、その後を引き継ぐ形で、父親の会社の社長に就任。しかし、社長になってからというもの、彼は亡き先代社長の偉大さを痛感し、順風満帆とは程遠い日々を過ごしていました。

 父の姿を追い求め、もがき続ける毎日。そんなとき、ふと、生前父親が大切にしていた靴を眺めていると、靴が自分を導いてくれるような、そんな気がしたのです。

 無事に靴の制作も終わり、実際に納品された靴を履いた男性は、これで父の後を歩める気がすると、歩に礼を告げますが、そんな彼の様子に歩は、注文靴について大切なことを伝えます。歩の言葉を聞いた男性は、いままでとは違った思いを胸にし、新しい1歩を踏み出していったのでした。

 わたしたちの生活に欠かせない存在である靴。けれど実際には、高価な注文靴にまでは手が出せないという方がほとんどなのではないでしょうか。

 かくいうわたしもその一人。しかし歩のような職人に出会えたのなら、例え人生でたった1回だけだったとしても、自分だけの1足を持ってみたいと思えます。

そこから踏み出す一歩は もしかしたらその人の人生を変えるかもしれない
シンデレラの運命を1足の靴が変えたように――

 シンデレラにはどうしたってなれないけれど、シンデレラのように1足の靴で人生が変わることもある。それが、歩の生み出す靴だとしたら。

 新しい生活、新たな1歩を踏み出す時に、自分だけの靴があれば、こんなにも頼りになる味方はいません。そして、歩のような存在が真摯(しんし)に働いているという事実も、きっと働く貴方の心の支えになるでしょう。

 靴を通して、人の人生を垣間見る。そこから学ぶものは多いように思います。

 さて皆さん、いかがでしたでしょうか? 次回、第3弾もお楽しみに!

(評:ラノコミどっとこむ編集部/やまだ)

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