「紀伊國屋書店ウェブストア/Kinoppy」を徹底解剖する電子書店完全ガイド2013(2/5 ページ)

» 2014年03月31日 10時00分 公開
[ITmedia]

読みたい本を簡単に探せるか?

 次に、「読みたい本を簡単に探せるか?」をチェックします。

 紀伊國屋書店ウェブストアは、AmazonのKindleストア、楽天ブックスの楽天Kobo電子書籍ストア、hontoと同じように、紙と電子を同時に販売している「ハイブリッド型」の書店です(☆+0.5)。紙の本は日本語の書籍・雑誌だけではなく、洋書、洋古書、海外雑誌も取り扱っています。


洋書・洋古書(紙)の通販も 洋書・洋古書(紙の本)の通販も
海外マガジン(紙)も扱っている 海外マガジン(紙)も扱っている

 紀伊國屋書店ウェブストアはPC WebとモバイルWeb(URLはPCと同じ)があり、Kinoppy アプリストアはAndroidアプリとiOSアプリにあります。iOSアプリにストア機能が搭載されている電子書店は珍しいです。Windows(タブレット含む)やMacから利用する場合は、Webから探す形になります。

PC Webから探す場合

 読みたい本の書名などが分かっている場合は、最上部の検索欄左側の[和書を探す]プルダウンを[電子書籍を探す]にしてキーワードを入力すればOKです。サジェスト機能にも対応しています。

 紙と電子の両方を検索結果に表示できる(そして絞り込みもできる)Amazon.co.jpやhontoネットストアとは異なり、[和書を探す]の検索結果には紙の本だけ、[電子書籍を探す]の検索結果には電子の本だけが表示され、同じ画面では比較できません。

 検索結果一覧の初期状態は、並び順が[売れている順]、表示方法が[画像あり]で、それぞれ[指定なし][新着順]と[画像なし][サムネイル]に切り替えられます。リニューアル前と変わらずいずれの場合も表示件数は最大10件で、やや一覧性に欠けます。また、[新着順]を選択してもシリーズが発売順に並ばない場合があります。

 検索結果一覧からの絞り込み条件は、出版年月と著者名のみです。以前は出版社やジャンル(レーベル名を含む)でも絞り込めたので、リニューアル後の方が不便になっています。これにより、コミックとラノベの両方が存在する場合に区別がしづらいなど、全般的に目的の本を探し出すのがやや困難です(☆-0.5)。

 作品タイトルの表記が統一されていないケースも目立ちます。例えば『進撃の巨人』は、1巻が「進撃の巨人 〈1〉 Shonen magazine comics」、2巻が「進撃の巨人 〈2〉 少年マガジンコミックス」、9巻が「進撃の巨人 〈9〉 少年マガジンKC」、10巻が「進撃の巨人(10) 進撃の巨人」と、レーベル名の表記や有無・巻数の括弧がバラバラになっています。


サジェスト機能に対応 サジェスト機能に対応
検索結果一覧は出版年月と著者でのみ絞り込み可能 検索結果一覧は出版年月と著者でのみ絞り込み可能

[新着順][画像なし]は非常にシンプル。11巻より10巻、2巻より1巻の方が新しいことになっているなど並び順がおかしいのと、タイトル表記が統一されていない [新着順][画像なし]は非常にシンプル。11巻より10巻、2巻より1巻の方が新しいことになっているなど並び順がおかしいのと、タイトル表記が統一されていない
[サムネイル]の[指定なし]表示。いずれの表示方法でも、1画面には最大10件しか表示されない [サムネイル]の[指定なし]表示。いずれの表示方法でも、1画面には最大10件しか表示されない

  読みたい作品が決まっておらず「何か面白い本はないかな?」と探す場合は、左カラムの[ジャンル一覧]や[フェア]、中央カラムの[文芸][ビジネス][新書・選書][コミック][ライトノベル][雑誌]タブや、ベストセラー、PICK UP、特集バナーなどから絞り込んでいきます。

 前項「ラインアップは充実しているか?」でも触れましたが、ジャンル一覧では一部のレーベルだけがサブジャンルに表示されます。以前は「文庫 > 日本文学 > 文春文庫」といった形で、レーベル名も左カラムに一覧表示されていたので、一部のレーベルだけが表示されるのはかなり違和感を覚えます。

 例えば、講談社ノベルスの本は[文芸]の中の[ノベルス-講談社ノベルス]に登録されており、[ノベルス]にはありません。逆に、[ノベルス]には講談社BOXや朝日ノベルス・ソノラマノベルスなどの本が登録されていますが、これらのレーベルは[文芸]を開いても左カラムには表示されないのです。


[文芸]ジャンルを開いた状態。検索結果一覧にある文春文庫は、[ジャンル一覧]には表示されていない [文芸]ジャンルを開いた状態。検索結果一覧にある文春文庫は、[ジャンル一覧]には表示されていない
[コミック]ジャンルを開いた状態。検索結果一覧にあるジャンプコミックスやヤングキングコミックスは、[ジャンル一覧]には表示されていない [コミック]ジャンルを開いた状態。検索結果一覧にあるジャンプコミックスやヤングキングコミックスは、[ジャンル一覧]には表示されていない

 作品詳細画面の書誌情報は、書影・タイトル・著者名・原作者・キャラクターデザイン・レーベル名・出版社・レーベル名・作品解説文・ファイル形式・ファイルサイズ・発売年月・ISBN・NDC分類・対応端末・お試し版ダウンロード・同じシリーズの商品一覧などです。

 新たに「この商品が入っている本棚」と評価点表示、[著者名をお気に入りに登録する][続刊のお知らせを受け取る]ボタンが追加されています。SNSへのシェアは、Twitter・Facebookに対応しています。

 お試し版ダウンロードは、用意されていない作品もあります。確認した範囲では、コミックにはサンプルが用意されていない場合が多いようです。


作品詳細画面(上) 作品詳細画面(上)
作品詳細画面(下) 作品詳細画面(下)

 作品詳細画面にもジャンルの表記がないため、コミックとラノベの両方が存在する場合などに区別が困難です。また、発売年月は紙の本が出版された年月の情報で、紀伊國屋書店ウェブストアで配信開始されたのがいつかは分かりません。以前は発売年月日まで表示されていたのですが、年月だけになってしまいました。

 以前は存在していた「著者紹介」情報や、「この本を買った人はこんな本も買っています」や「同じ分野でこんな商品が売れています」といったリコメンドもなくなり、自分がクリックした情報に基づく「最近チェックした商品」が表示されるのみとなっています。

 また、紙と電子の両方を扱っていますが、電子版のページには紙の本の価格やページ数といった情報が載っておらず、[紙の書籍はこちら]というボタンがあるだけです。紙の本のページにも電子版の情報は載っておらず、電子版のページへのリンクが貼られているだけです。

 このように、作品詳細画面も、以前より情報が少なくなったり、機能が省かれていたりと、本を探す際にストレスを感じる点が目につきます(☆-0.5)。


「この商品が入っている本棚」を開くと、一覧が表示される 「この商品が入っている本棚」を開くと、一覧が表示される
ログイン後に[あなたの本棚を見る]メニューから[編集する]ボタンで、本へのコメント・公開/非公開設定・タグ・評価点が設定できる ログイン後に[あなたの本棚を見る]メニューから[編集する]ボタンで、本へのコメント・公開/非公開設定・タグ・評価点が設定できる

 新機能の「この商品が入っている本棚」は、ユーザーが「ほしい物リスト」と「買ったものリスト」から公開したものが一覧で見られる機能で、作品詳細画面には評価点だけが表示されます。作品詳細画面からリンクされているのはあくまで本棚で、ユーザーによるコメントは一覧からたどって探す必要があります

 また、Kinoppy アプリストアの評価点・レビューと、ウェブストアの評価点・レビューは別系統です。Kinoppy アプリストアには以前から評価点とレビュー機能があり、ウェブストアには後から「この商品が入っている本棚」として機能追加されましたが、Kinoppy アプリストアにある評価点・レビューはウェブストアからは見られず、別系統にしているメリットはまだ感じられません。

モバイルWebから探す場合

 続いてモバイル向けWebサイトをチェックします。レスポンシブデザインを採用しており、URLはPC向けと同じです。キーワード検索時のサジェスト機能が効かないほか、出版年月と著者での絞り込みができないなど、機能的にはPC Webより劣っています。


モバイル向けのトップページ モバイル向けのトップページ
検索欄上部のプルダウンから検索カテゴリを変更できる 検索欄上部のプルダウンから検索カテゴリを変更できる
トップページの紺色[電子書籍]ボタンで[文芸]のトップページが開く トップページの紺色[電子書籍]ボタンで[文芸]のトップページが開く

キーワードを入力しても、サジェスト機能が働かない キーワードを入力しても、サジェスト機能が働かない
キーワード検索結果の並び順・表示方法はPC Webと同じで、出版年月と著者での絞り込み機能はカットされている キーワード検索結果の並び順・表示方法はPC Webと同じで、出版年月と著者での絞り込み機能はカットされている
[新着順][画像なし]は、モバイルでは出版社名・発売年月が表示される [新着順][画像なし]は、モバイルでは出版社名・発売年月が表示される

カテゴリトップページの最下部に[ジャンルで探す]メニュー カテゴリトップページの最下部に[ジャンルで探す]メニュー
ジャンル選択 ジャンル選択
検索結果。中央の[文芸▼]プルダウンから、サブジャンル絞り込みができる 検索結果。中央の[文芸▼]プルダウンから、サブジャンル絞り込みができる

作品詳細画面(上) 作品詳細画面(上)
作品詳細画面(中) 作品詳細画面(中)
作品詳細画面(下) 作品詳細画面(下)

Androidアプリから探す場合

 続いて、Android向けアプリ「紀伊國屋書店Kinoppy for Android」の場合です。アプリはGoogle Playから無料でダウンロードできます。

 ストア機能はイチオシ新作や特集一覧・配信予定リストを表示する[おすすめ]と、検索機能の[ストア]に分断される形になりました。[おすすめ]は書店の平積みのように、書影だけがズラッと並ぶ形です。書影の解像度が低いのが残念です。

 筆者の場合、メニューとして分断されたことで、[おすすめ]はまったく見なくなってしまいました。前回調査では、ウェブストアには辛い点数をつけたものの、Kinoppyストアには比較的高い評価を付けていただけに、この施策の意図はどう解釈すべきか理解に苦しむ部分です(☆-0.5)。


GooglePlayから無料でダウンロードできる GooglePlayから無料でダウンロードできる
アプリ起動時のログイン画面。[あとで会員登録]をタップすると、ログインしなくても利用可能 アプリ起動時のログイン画面。[あとで会員登録]をタップすると、ログインしなくても利用可能
メニューから[ストア]で、Kinoppy アプリストアが開く。タブレットだとアイコンが表示されている メニューから[ストア]で、Kinoppy アプリストアが開く。タブレットだとアイコンが表示されている

[おすすめ]を開いた画面。この下にはズラッと書影だけが並ぶ [おすすめ]を開いた画面。この下にはズラッと書影だけが並ぶ
イチオシ新作はジャンル別に絞り込める イチオシ新作はジャンル別に絞り込める
特集一覧にはバナーがズラッと並ぶが、細かい字が読みづらい 特集一覧にはバナーがズラッと並ぶが、細かい字が読みづらい

[ストア]を開いた画面 [ストア]を開いた画面
カメラアイコンをタップして、本のバーコードを読み取ると…… カメラアイコンをタップして、本のバーコードを読み取ると……
読み取ったバーコードからKinoppy アプリストアでその本を表示できる 読み取ったバーコードからKinoppy アプリストアでその本を表示できる

 検索結果一覧は、並び替えや[画像なし]といった表示切り替え機能がありません。スクロールすると自動読み込みされ、ヒットした全件が表示されます。一覧の状態で著者名、出版社と、Sony Readerに対応している場合にアイコンが表示されますが、レーベル名は表示されません。絞り込みは、Reader対応と、トレースズーム対応だけが可能です。


虫眼鏡アイコンでキーワード検索メニュー 虫眼鏡アイコンでキーワード検索メニュー
詳細検索 詳細検索
検索結果一覧は並び替えや表示切り替えはできないが、スクロールするだけでヒットした全件を同じ画面内で確認できる 検索結果一覧は並び替えや表示切り替えはできないが、スクロールするだけでヒットした全件を同じ画面内で確認できる

Reader対応と、トレースズーム対応の絞り込みが可能 Reader対応と、トレースズーム対応の絞り込みが可能
上部右から2番めのアイコンは、ジャンル・出版社などからの検索メニュー 上部右から2番めのアイコンは、ジャンル・出版社などからの検索メニュー
ジャンル一覧 ジャンル一覧

作品詳細画面にはシリーズ一覧がない 作品詳細画面にはシリーズ一覧がない
本のタイトルなどが書いてある部分をタップすると、レーベル名・著者名・出版社での検索ができる 本のタイトルなどが書いてある部分をタップすると、レーベル名・著者名・出版社での検索ができる
この評価点やデビューは、ウェブストアとは別系統 この評価点やデビューは、ウェブストアとは別系統

iOSアプリから探す場合

 続いて、iOS向けアプリ「紀伊國屋書店Kinoppy for iOS」の場合です。iTunes App Storeから無料でダウンロードできます。

 Android向けアプリと基本的には同じで、[おすすめ]と[ストア]が分断されています。


App Storeから無料でダウンロードできる App Storeから無料でダウンロードできる
ログイン画面が開く(後で登録も選べる) ログイン画面が開く(後で登録も選べる)
[おすすめ]アイコンに[new]マークが出ているが、めったに開かなくなってしまった [おすすめ]アイコンに[new]マークが出ているが、めったに開かなくなってしまった

[ストア]を開いた画面。Reader、トレースズームの絞り込みが、プルダウンではなくボタンになっている [ストア]を開いた画面。Reader、トレースズームの絞り込みが、プルダウンではなくボタンになっている
検索欄をタップすると、右にカメラと詳細検索のアイコンが表示される 検索欄をタップすると、右にカメラと詳細検索のアイコンが表示される
キーワード検索時のサジェスト機能は用意されていない キーワード検索時のサジェスト機能は用意されていない

検索結果一覧には評価点も表示される 検索結果一覧には評価点も表示される
作品詳細画面 作品詳細画面
評価点とレビューの一覧 評価点とレビューの一覧

その他

 Twitterの公式アカウントは積極的に情報発信していますが、あまりユーザー・読者との交流をしている様子はありません。Kinoppy 開発チームは交流にも積極的です。

評点:☆2.0

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