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» 2014年03月18日 12時47分 UPDATE

「消費者が気づかない」途上国支援の問題点 (1/2)

株式会社ピース トゥ ピースの創業者、大澤亮さん。彼の経歴は異業種の転職を重ねるという珍しいものです。その行動には一体どういった意味が隠されているのでしょうか。ご本人にお話を伺いました。

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 「人の役に立つ仕事をしたい」「ビジネスで世界をいい方向に向かわせたい」という志の高い学生・社会人の中にはいずれは起業したいと考えていたり、実際に計画を練っている人がいるはず。

 そんな人に、この人の人生はとても刺激的なはずです。

 『「世界をよくする仕事」で稼ぐ』(プレジデント社/刊)の著者、大澤亮さんは、ビジネスのスキームを使って持続的な途上国支援を目指す株式会社ピース トゥ ピースの創業者。

 本書を読むと、大澤さんがいかに自分の事業を周到に準備し、それを実現させるためにキャリアを積んできたか分かります。今回はその大澤さんにお話をうかがい、起業を志したきっかけや、一見脈絡のないキャリアについてお話をうかがいました。

fhfig1009.jpg 「消費者が気づかない」途上国支援の問題点

―― 大澤さんの著書『「世界をよくする仕事」で稼ぐ』(プレジデント社/刊)についてお話を伺えればと思います。まずは「世界をよくする仕事」の場である株式会社ピース トゥ ピースを立ち上げた理由について教えていただきたいです。

大澤 原点ということでいえば、商社に勤めていたときにアフリカでODAに携わっていたことだと思います。

 途上国支援の形としてよくあるのが、ODAの仕組みとしてよくある「G-to-G(政府から政府へ)」なんですけど、僕はもっと小さな個人の思い(Piece)を困っている人に届けて平和(Peace)につなげられる仕組みを作りたかったんです。

 もちろん、「思い」といっても実際はお金やモノで支援をするわけですが、それを募金活動のような形で行っても長くは続かないんじゃないかというのがあって、もっと楽しく、自分の好きなことを通じてそういった支援ができないかと考えたときに、「日本人や先進国の人が大好きなもの」というカテゴリーで「ファッション」というのが思い浮かびました。

 ファッション業界って市場規模が10兆円くらいあってとても大きいんですけど、ムダが多いんです。デザイナーがどんどん新しいデザインの服を作っても、売れ残ったらどんどん捨てられてしまう。そういう状況をなんとかして支援と結びつけられないかということで「Piece to Peace(ピース トゥ ピース)」を立ち上げました。

―― 途上国を支援したいという気持ちを持ち始めたのはいつごろのことだったのでしょうか。

大澤 母親がクリスチャンで、やはり途上国支援のための募金活動をしているのを小さいごろから見ていたんですよ。でも、あるときにその募金したお金が使われるような国に行ったことがあるのか尋ねたら、行ったことがないというわけですね。

 行きもしないのに、「恵まれない子どもちがいるから」といって募金をするって、何だか違和感があるじゃないですか。だったら自分が行ってみようと思ったことがODAにかかわりたいという気持ちにつながったというのはあります。

 それと、昔の彼女が国際協力に熱心で、働くのならば何か社会のためにならないと意味がないという考え方だったんです。そういう意味では、いつからというよりはいろんな人との出会いに影響を受けて少しずつ変わってきたのかもしれません。

―― 従来のようなNPO法人でなく、株式会社として利益を上げながら社会貢献をしているという「ピース トゥ ピース」ですが、そのビジネスモデルはどのようなものなのでしょうか。

大澤 「ピース トゥ ピース」では、途上国支援に賛同してくれる海外のファッションブランドの商品を日本で展開しているのですが、これには大きく分けて二通りあります。

 1つは「インポート」といって、単純に輸入して小売店に卸すというもの。もう1つが「ライセンス」というものなのです。後者はブランドの権利を借りるような形で、ブランドのデザインや風合いなどはこちらで日本向けに企画しますというものです。やはり海外と日本では、消費者の好みが違いますし、そもそもサイズが全然違うので日本向けにアレンジする必要があるんです。

 うちで扱っている一番大きなブランドが「オムニピース」というロサンゼルスのブランドなんですけど、これなどはほとんど「ライセンス」でやっています。だから、仕入れという意味でいえば、「インポート」と「ライセンス」の二種類があるということですね。これを日本で販売していきます。

―― 販売方法はどうなっていますか?

大澤 まず、卸販売があり、これは、ユナイテッドアローズ、ベイクルーズ、アーバン・リサーチ、エリオポールといったセレクトショップに商品を卸して売り上・利益を得るという形。次に、委託販売というのがあって、これは主にデパートなんですけど、端的にいえば「場所貸し」ですね。売り場の一区画を貸しますから好きに使ってください、というものです。売り上げの一部をデパートに場所借り料金として支払い、残りを頂く仕組みです。卸にしろ、委託販売にしろ、売り上げの一定%を寄付します。これらの売り方と、後は通販もやっています。

 もう1つは「サブライセンス」です。さっき言ったように「ライセンス」というのはあるブランドの権利を有料で借りるものなんですが、「サブライセンス」はその権利をさらにほかの会社に売ることです。

 例えばうちは「オムニピース」の権利を借りて主にTシャツを作って販売しているんですけど、別の会社が「オムニピース」の帽子を作りたいといってきた場合に、その帽子をデザインして売る権利を、その会社に売るわけです。その売り上の幾らかを「オムニピースに戻して、さらに幾らかが寄付される、ということもやっています。

―― なるほど。

大澤 だから、企画会社という側面が強いんです。例えば「TABLE FOR TWO」というNPOがあって、そこもアパレルの物販をやっていて、その製造企画をうちでやっていたんです。それで、以前にセレクトショップの「JOURNAL STANDARD」と組んで「TABLE FOR TWO×JOURNAL STANDARD」ということで、専用の商品を作って販売したことがあります。それが1つ売れるごとに20円が寄付に回る。

 このように、世の中のためになることを、一般的なビジネスのスキームを使ってやっています。

―― 消費者の方は単純に格好いいから買うわけですが、それが社会貢献に結びつくというのは素晴らしいですね。

大澤 そうですね。ただ、若干の問題として、こちらの思いが届かないというのがあります。商品を卸した先のお店では「社会貢献」とか「寄付」をうたわないで売るので、消費者の方はそういったことを知らないままなんですよ。

―― 確かに、売り場で大っぴらにそういったことをうたうのも、ちょっと違和感があります。

大澤 そうなんですよ。そういうことを「イヤらしい」と感じる日本人の気質もありますし、純粋にファッションを売っているのであって「寄付」や「社会貢献」と売りものにしたくないというお店の思いもあります。うちとしても、そこまで押しつけがましいやり方はしたくありませんしね。

 だから、「社会貢献」ということでいうと、モノを売るだけでは全然足りないんですよね。多少の寄付はできるでしょうけど、もっと「コト」を広めないといけない。

 それで、個人であれ会社であれ「良いコト」を広めるプラットフォームとして考えついたのが、「人生のヒケツを教え合う場所 shAIR (シェア)」です。今は、何か(成功体験やスキルなど)を伝えたい、教えたいという個人に、何かを教えたいときのプラットフォームとしてご利用頂いていて、既に参加者数も合計数千人になっています。

 モノだけでなく、こうした「コト」があると、消費者は参加しやすいし、良いことは広まりやすいと感じています。

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