非透明性:なぜ、電子書籍の売り上げ情報は秘密にされるのか?

電子書籍の領域では、部数が喧伝されることはほとんどない。利用規約などで制限されていることなどによるものだが、オープンな透明性は業界にとって不要なのだろうか。

» 2014年03月05日 13時00分 公開
[Mercy Pilkington,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 出版に関する著者の満足度調査のデータにより、出版業界は確実に2014年初頭から圧倒されているようだ。

 Digital Book WorldとWriter's Digestmagazineが実施した最初の調査は、何千もの調査回答者が明らかに従来の業界を支持する出版物の購読者だったことを考慮すると、穏やかな偏向を示していた。Author Earningsが公表した2回目の調査は、900人の著者が著作の公開方法・出版された著作数・昨年の「概算」収入・将来の出版判断について回答したものだ。

 しかし、われわれが知りたいこと――何冊の書籍を販売したか――を誰も語らないのはなぜなのだろう。

 それは著者が回答できないからだ。AmazonやBarnes & Nobleの利用規約が自主出版作家であっても正確な売上高を公然と議論することを禁止しているのはあまり知られていない事実だ。Kobo Writing Lifeの利用規約は、利用規約自体に何が記載されているかさえ開示を禁じている。だから、例えば自主出版著者が自著の通算100部販売を祝っているのをフォロワーと共有するようなことすらできず、ブログやFacebookへの投稿に至るまでその範囲が拡大されている。

 作家のスーザン・ウィンゲート氏は、AmazonよりもBarnes & Nobleでより多くのタイトル(部数)を販売していたことを2013年6月に自身のブログに掲載したが、その後Amazonは同氏のアカウントをブロックした。その理由は、特にKDP Selectに関連して利用規約に違反したためだ。AmazonはKDP Selectに含まれていた氏の著作3作品へのアクセスをブロックするのではなく、氏が執筆したKDP Selectの対象でないほかの21冊の書籍も含め、著者がアカウントにアクセスできないようにした。

 この事態は次の問いを呼び起こす。なぜ業界は書籍の販売に関して、オープンな透明性を非常に恐れているのだろうか。出版社間の競争に何らかの恐怖があるのだろうか。売り上げが一般的な期待に沿わない場合、多額の投資が行われ、業界にサポートされているタイトルがそれほど良質ではないに違いないという認識だろうか。それとも単にデータのコントロールが、これらの企業の生命線であるという信念だろうか?

 J・K・ローリング氏が、最初にロバート・ガルブレイス名義で小説を出版したとき、初月の売り上げはわずか1500部に留まり、お世辞にも印象的とはいえなかった。もちろん、作者の正体が明らかにされると、販売部数は急増、本は書店で完売し、増刷が必要となった。明らかに、印刷代を支払うのにすら十分な部数を販売していなかった本の発見は、人気作家による別タイトルを望んでいた読者には抑止力とはならず、売り上げ情報を守ることは読者の考えとしては問題ではなかった。

 こうした調査は、J・A・コンラス氏、H・M・ウォード氏、ヒュー・ハウイー氏のような著者がしばらく前から喚起してきた議論の口火を切るのには依然として有用なデータである。

 透明性は、著者にとっても、出版業界の誰にとっても脅威ではない。それは出版に関するどの決断が著者にとって正しいかの理解を助けるのに役立つものだ。データにきっちりと蓋をして恩恵を受けるのは、何かを隠したい人、あるいはさらに、全情報を持ちあわせない人たちから金を搾取する手段とする人だけだ。

Copyright© 2015 Good E-Reader. All rights reserved.

(翻訳責任について)
この記事はGood E-Readerとの合意の下でアイティメディアが翻訳したものです。翻訳責任はアイティメディアにあります。記事内容に関するお問い合わせは、アイティメディアまでお願いいたします。