動かした心の量と収入のバランスを――これからの編集者に求められること堀江信彦×佐渡島庸平対談(2/2 ページ)

» 2014年03月05日 11時00分 公開
[渡辺まりか,eBook USER]
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海外に輸出したい「日本のマンガ文法」

「サイレントマンガオーディション」 「サイレントマンガオーディション」応募状況

堀江 といっても、クールジャパン戦略が掲げているような、日本のマンガを翻訳を輸出することではなく、日本の“マンガ文法”を輸出することを考えないといけないと思うんだよね。文化の違いがあるから

 僕らの会社で、言葉の壁を取り払った「サイレントマンガオーディション」というのを、「ラブレター」というテーマで開催したら、わずか半年で53の国の地域から514作品もの応募があって、どれも立派なジャパニーズ漫画だった。そしてどの国の人が描いたものでも僕たちは理解できた。かつて、手塚治虫さんが「マンガはエスペラント語だ」と語ったのを思い出すね。

 なぜ日本のマンガがこんなに分かりやすいかというと、日本のマンガは映画の絵コンテをそのまま紙に流し込んだもの。紙に描かれた映画だから、世界中、誰が読んでも動画を脳内再生できて理解できる。

 日本のマンガ文法で、その国の文化に根ざしたマンガを描けるように教える場があればいいと思うんだけど、海外でマンガ専門の編集者がいるのはインドネシアで1人だけ。全然足りない。

 まず、日本でマンガ編集者の講習を開いて、どうすればマンガ家たちが幸せに食べていけるか、どのように産業化できるか、うまくマネタイズできるか勉強する。そして、成長したら、国外に飛び出して、日本のマンガ文法で、かつその国の文化や風習に則したマンガを描けるようにマンガ家を育てていく。技術を輸出してその国でマンガ産業が根付けば、日本のコンテンツも輸出できるから。

佐渡島庸平氏 佐渡島庸平氏

佐渡島 外国でも活躍できるようになると、マンガに対する見方も変わってきますよね。野球やサッカー選手が海外で活躍して、「かっこいいなぁ」って憧れるように、「海外で活躍する編集者やマンガ家かっこいいなぁ」みたいな。

堀江 そうそう。一昔前の日本のサッカーのレベルは、そんな大したものじゃなかったけど、活躍する選手が増えて、それに憧れて、裾野が広がって、それでボトムアップが図られてきた。心が動くとそういう効果があるんだよね。

 同じように、マンガを描けば人の心を動かせて儲かる。そんな風にカッコよいと認識されれば、もっとマンガ家を目指す人が増え、裾野が広がる。自然とボトムアップが図られ、ますます良いコンテンツになっていく。それを海外に輸出できるようにする。それがあるべき編集者の姿じゃないのかなあって僕なんか思うんだよね。

佐渡島 僕らもそれを目指して「作家エージェント集団」を立ち上げたので、マンガ家さんたちが幸せになれるように、世界中の人たちに作品を届け、みんなが憧れるようなそういう職業にしていきたいですよね。

堀江 そのためにも、マンガ専門編集者の教育をしていきたいよね。



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