ソニーとKoboの電子書籍取引がユーザーにとって意味するところとは何か

北米市場での電子書籍ビジネスから撤退するReader Store。Koboと契約を結び移管を図る考えだが、これが読者、あるいはReader Storeでも作品を販売していた自主出版著者にはどういった影響があるだろか。

» 2014年02月26日 12時30分 公開
[Michael Kozlowski,Good e-Reader Blog]
Good E-Reader

 2014年2月上旬、ソニーとKoboは米国とカナダのユーザーに影響する歴史的な契約にサインした。ソニーは今年3月からReader Storeを通じて購入された電子書籍はすべてKoboに移管されると表明。また、契約上、Xperiaスマートフォンやタブレットからソニーブランドのストアが除去され、Koboアプリがデフォルトでインストールされるようになる。

 ソニーのReader Storeは米国とカナダで2009年以来営業してきた。その間、英国・ドイツ・オーストラリアとほかの欧州市場にも事業を拡大している(編注;日本は2010年オープン)が、同社は主要市場でのシェアを一けたまで下げ続けてきた。2013年末、ソニーは電子書籍端末「PRS-T3」を米国ではリリースせず、カナダと欧州市場に継続的に集中すると発表していた。Koboとソニーの契約の金銭面は不明確で、両者はいずれもその財務上のインパクトは開示しないだろう。

 この取引が読者にとって意味するところは何か。ソニーはGood e-Readerに「一部の例外をのぞいて、顧客がReader Storeから購入した電子書籍はKoboに移行されます。雑誌と新聞は移行されませんが、Kobo.comで最も人気のあるファッション・ポップカルチャー・ヘルス・スポーツ関連雑誌にアクセスできます。Reader Storeのラインアップのほとんどは現在Kobo Storeで入手できるので、顧客の電子書籍のほとんどが移行されるのは良いニュースです。以前にReader Storeで購入した本をすべて再ダウンロードでき、Readerやほかの登録デバイス上で保管できます。顧客がライブラリーをKoboに移行した場合、どのタイトルが移行されどのタイトルがされなかったのか詳細情報を受け取れるので、それに応じて適切な措置を講じることができます」と語った。

 2013年、ソニーはReader Store上で児童書セクションを設け、EPUB3形式のエンハンスド電子書籍を取り扱うようになったが、これらのタイトルはKoboのエコシステムに存在しない。こうした移行できない限定タイトルはどうなるのだろうか。

 ソニーによると「幾つかの例外的なケースで、Reader Storeで購入した電子書籍がKoboで入手できない可能性があります。この場合、ユーザーは2014年4月30日までにReader Storeからこれらのタイトルをダウンロードするように推奨されています」という。

 この契約が北米にのみ適用されるのは重要な点だ。ソニーは欧州のReader Storeとほかの市場は従来通りの営業を継続することを明確にしておきたかった。

 Smashwordsの配信プラットフォームを利用する自主出版著者はReader Store経由で自分の電子書籍の販売を行うことをオプトインしていた。書籍がKoboに移動することが著者にとって何を意味するのか。Smashwordsのマーク・コーカーCEOは「ソニーに配信されたSmashwordsのEPUBファイルは移行されませんが、ISBNや恐らくそのほかのメタデータなどの電子IDは移行され、それによりKoboはソニーの顧客に自社ライブラリー内でのアクセスを提供することができます。Koboがその本を所有していなければ、移送は行われません。すべての著者に自分のライブラリーをKoboに移動することに加えて、書籍を自分のSony Readerにダウンロードするよう推奨します」という。

 コーカーCEOはさらに「ソニーに配信されている(がKoboに配信されていない)Smashwords書籍の商品リストは移管されません。Smashwordsの著者がソニーにオプトインしてもKoboにオプトインしない場合、販売と商品取引においてKoboからは引き続きオプトアウトされます。SmashwordsとKoboは、Koboで入手できないSmashwords・ソニーの書籍を識別すべくこの発表前に舞台裏での調整を続けてきました。われわれは引き続き密に調整を行っていく予定で、ソニーの顧客に生じる不便さを軽減すべく著者と協力していきます。著者はSmashwordsですべての著書を入手可能にすることでサポートできます」という。

 コーカーCEOはSmashwordsの公式ブログで非常に説得力のある投稿を行っており、契約がどのように受け入れられたか、そして自主出版著者への主要な影響について自身の考えの概要をつづっている。

 著者についての会話に関連し、さらに考えることがあるか、コーカーCEOに尋ねてみた。コーカーCEOは「全般的にはこのようなことが起こって悲しいです。すべての小売企業が成功してほしいと思っています。より多くの書店が世界にあった方が世界はより良くなります。あらゆる電子書籍の読者と著者はソニーが米国で電子書籍市場の立ち上げを支援するに当たって演じた重要な触媒としての役割に恩を受けています。あれこれとソニーをすぐに批判する向きがあるのを知っていますが、そのような批判はフェアでないと思います」とまとめた。

 「ここ5年、ソニーと協業して、わたしは彼らがストアに注いだ、あるいは著者を支援するためのすべての努力に心から感謝しています。同社には本を愛する情熱的な一群の人々がいて、初期のSmashwordsとインディー著者のコミュニティーへのサポートにも非常に感謝しています。ソニーは2009年にわれわれの本の取り扱いをはじめた2番目の大手小売企業でした。その点で、同社は時代の先を行っていました」。

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