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» 2014年01月30日 12時38分 UPDATE

日本の成長を左右する“コンベンション産業”の行方

人々のネットワークを創出する場として注目されるコンベンション。コンベンション産業の現在と今後の課題を分析・解説する書籍を紹介する。

[新刊JP]
新刊JP

 今、世界で成長を続けている産業がある。それが、コンベンション産業だ。コンベンションという言葉は一般的にはあまりなじみがないかもしれないが、国際政治やビジネス、学術の世界でも必要不可欠なものとなっており、「コンベンション」にかかわったり、その様子を見たりする機会は多い。

 例えばプロ野球ファンであれば、毎年12月にタイトルを獲得した選手たちを表彰する「プロ野球コンベンション」が身近だろう。また、出版業界関係者や本好きの人であれば、毎年7月に開催される本の見本市「東京国際ブックフェア」をチェックするはずだが、これもコンベンションの一つである。より近いところでいえば、「街コン」も実はコンベンションの一つであるし、東京ゲームショウなどが開催される幕張メッセの正式施設名は「千葉県日本コンベンションセンター国際展示場」という。

fhfig893.jpg 日本の成長を左右する“コンベンション産業”の行方

 国際会議や見本市、学術会議、イベント、ミーティングなど、主催者がおり、人々が集まり、顔を突き合わせてコミュニケーションする場を「コンベンション」と呼ぶ。

 時に国家間を結びつける重要な機会となり、時に人々のネットワークを創出する場となるコンベンションは今や多様化しており、21世紀の経済成長のカギを握る産業の1つであるといっても過言ではないはずだ。

 では、今の日本のコンベンション産業はどうなっているのか。そして、今後の課題は何か。『コンベンションビジネス―――未来を拓くナレッジパワー』(萩原誠司/著、ダイヤモンド社/刊)は、世界と日本のコンベンション産業を“成長ビジネス”としてはじめて分析した画期的な一冊だ。

 本書によれば、今後のコンベンション産業の成長は「PCO」にかかっているという。PCOとはProfessional ConventionまたはCongress Organizerの頭文字をとったもので、国際会議や国内会議を運営する事業者を示す用語である。イベントの企画・運営を任される民間事業者であり、コンベンションのノウハウを持っている専門家集団と理解するといい。

 基本的にPCOは主催者に寄り添うコンサルタント的役割を担い、数万人規模の大国際会議からテーマに特化した見本市まで、マネジメント、プロデュースを行うのだが、近年の展示会を含むコンベンションの中には、専門的なPCOが自らのリスクにおいて、最初から最後まで一貫して主催をする形も増えているという。

 日本のコンベンション産業は欧米諸国と比べて、遅い立ち上がりだった。1998年にPCOを中心とする日本コンベンション事業協会が設立されたが、これは欧米からは50年ほど開きがあり、アジアの中でも遅い方だった。

 その後、コンベンション産業の主役は欧米からアジアへと移る。2010年の国別国際会議開催の総件数は、米国がシェアを低下させながらも1位(936件)、他方、日本が2位(741件)、シンガポールが3位(725件)など、推移が如実に現れている。

 アジア勢躍進の背景の一つはアジアの経済成長だが、ほかにも積極的なコンベンション政策(MICE政策)の貢献も見逃せない。

 しかし、現在の日本のコンベンション産業は伸び悩みを見せている側面もあると著者は指摘する。日本の市場規模はおよそ3兆円といわれているが、これからさらに成長するにはどうすればいいのだろうか?

 その1つが、開催場所の問題の解決である。コミックマーケットや東京国際ブックフェアなどで使われる東京ビッグサイト(東京国際展示場)は、「5年はおろか10年近く先まで予約がいっぱいの状況」なのだそうだ。ちなみに、2008年度の東京ビッグサイト展示ホールの稼働率は75.9%で、2〜4日間開催して、搬入搬出に1日を費やすと考えれば納得のいく数字だ。

 こうした背景があるため、どうしても新規の展示会に支障が出てくることになる。

 著者は、展示会場の稼働率よりも、展示会でもたらされる経済効果の大きさに注目すべきだと指摘する。会場が予約いっぱいで展示会が開催できないのは、巨大な経済効果を失う「機会損失」に当たる。そういった理由から、海外では積極的に増設と新設を進めているといい、地方自治体も展示会重視の方向を打ち出し始めているそうだ。

 本書ではコンベンション産業の現在と今後の課題が、世界と日本双方の視点で分析・解説されている。

 2020年の東京オリンピック開催が決まり、日本もさらなる国際化が進んでいく中、コンベンションビジネスを通して自国をアピールする余地は十分にあるはずだ。また、アニメやマンガなどのカルチャー発信の場所としても、コンベンションは大いに活躍できる。

 なかなか分かりにくい部分も多いコンベンション産業を知りたい人、または、コンベンション産業の中にいる人にとって、本書は大きな助けになるはずだ。

(新刊JP編集部)

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