本屋探訪記:東京吉祥寺にあるサブカル好きには堪らない古本屋「バサラブックス」

BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は吉祥寺といえばこの本屋、「バサラブックス」を紹介する。

» 2014年01月10日 12時30分 公開
[wakkyhr,eBook USER]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 今回の本屋探訪記は吉祥寺にある「バサラブックス」。吉祥寺といえばこの店だ(以下は2011年12月24日時点の記録だ)。


まとめ

 分かりやすいよう、始めにまとめを。

  1. 品ぞろえ:量はないが個人的にど真ん中の品ぞろえ。サブカル、幻想文学、文学、音楽、写真集、zine(ジン)
  2. 雰囲気:路面店。什器が木製なので手作り感が出ていて良い感じ
  3. 立地:JR中央線吉祥寺駅から徒歩3分。駅前とまではいえないが近い

外の安売りコーナー

 店内に入る前に外の安売りコーナーから紹介したい。

 入り口の両端には棚が設けられ、左は200〜500円コーナー、右は100円均一と3冊で200円のコーナー。このほか文庫を入れた木箱が置いてある。

 文庫、新書、マンガ、雑誌、単行本、大判本と他の古本屋の安売りコーナーと同様にバリエーションに富んでいる。『アジアの世界』『ダイホンヤとりみき』『ブレインルール』、雑誌『真夜中』『別冊太陽』『ブルータス』『スタジオボイス』、『隔月刊 風景写真』『存在の耐え難きサルサ』、マンガ『無限の住人』といった作品が並べられていた。

店内レイアウト

 店舗は奥に長い台形で短辺が左にあるレイアウトで、広さは6畳ほど。珍しい作りだが、入っていきなり目の前にレジカウンターである。もう本当に目の前だ。

 入って左側は、壁に大きい棚が1つ、窓沿いにも本が並べられている。くるりと振り返る途中で、幅30センチもないような細長い棚が2つ、入り口を挟むように配置されていることに気づく。

 店の右側からは店舗の奥に行けるようになっている。レジカウンターを囲むようにして通路があり、壁、道に面したガラス、レジ沿いにそれぞれ本棚がある。

入って左側の本棚3つ

入って左側の本棚3つ

 入り口から入って左側にある本棚3つを紹介する。まず入り口のすぐ左にある細幅の本棚。ここには渋い文庫が10冊ほどずつ並べられている。講談社学術文庫、角川の金色のヤツ、サンリオSF文庫の作品が中心で、書名でいえば『スモール・イズ・ビューティフル』『ガリア戦記』『ランボオの手紙』『砂漠の反乱』『テレポーテーション作戦』などだ。なぜか、お東陽先生のトートバッグも売られていた。

 一方、壁の棚は広めだ。主にマンガ、単行本、大判本が上段から順に並べられ、単行本と大判本は映画ものが多い。具体的には以下のような本だ。

  1. マンガ:『サイバラ茸』『大島弓子選集』『主に泣いてます』『敷居の住人』『星座の女』
  2. 単行本:中沢新一の『東方的』『アースダイバー』『安藤忠雄建築を語る』『連戦連敗』『ブガシャの時代』『野生のブッダ』『世界屠畜紀行』『梅原猛京都発見』
  3. 大判本:『眼球譚』『運命の女優』『遊学の話』『大映映画III』

 3つ目の棚は、1つ目の細い棚と2つ目の広い棚に囲まれるように外に面した窓沿いにある。ここでは「鳥取が生んだ妖怪 水木しげるコーナー」が小さいながらも展開されていた。『妖怪大戦争』や『悪魔くん』『死神大戦記』などが並べられ、「こんな端っこでやることないのに」と思いながらも、古本屋でこういうコーナーをつくろうという気概に思わずウキウキしてした。

レジカウンターのCDと本

 振り向いて進もうとすると、レジカウンターの下部にはCDと本がある。CDは『赤い疑惑』や『東京ファミリーストーリー』『凍る炎』『ラムヒー』など。本は雑誌『本とコンピューター』、トマスピンチョン『V.』などだ。CDの品ぞろえマニアックで幾つかほしくなってしまった。いや、金欠気味だったので買わなかったけど……。

レジカウンター沿いに奥まで

 そのままレジカウンター沿いに折れ曲がって店の奥に通じる道に行く。するとレジ沿いに木製の本棚が2つある。ここは文庫を中心とした文学、SF、幻想文学といったジャンルの棚だ。

 向かって左の棚では『ポケットに名作文庫コーナー』が棚の一部を使って行われていた。そのコーナーを含めて品ぞろえは、上段2段にセット本として『アンダー・ザ・ドーム』の上下巻、ちくま文庫の『内田百間全24巻セット』(2万1000円)。内田百間『阿防列車』『第二阿防列車』『ゾクレンシャー』『マークスの山』『重力ピエロ』、講談社文芸文庫が3段分と少しあり、ほかに『ラヴクラフト全集』が少々、コリン・ウィルソン『オカルト』上下巻、『大いなる遺産』上下巻などだ。

 右側の棚では特にコーナーはない。一番上に洋書の大判本。以下、セット本として『富士に立つ影』6巻セット1200円、『20世紀SF』5巻セット2500円、『シンセミア4巻』セット1000円など。セット本以外では幻想小説とSFがメインだ。ヴォネガット、バロウズ、ブコウスキー、中島らも、久世光彦、ドストエフスキー、町田康、澁澤龍彦、江戸川乱歩などの本が並んでいる。

 また、足元の平台には単行本や大判本がある。『ボブディラン全詩302篇』『郵便少年 横尾忠則』『神様は本を読まない』『少年十字軍』などだ。

店舗奥の暗がり

店に入って右に曲がり、奥を観た絵。奥の棚にはにはなぜかアダルトグッズ

 レジ沿いに進むと奥に進むことができる。レジの裏を使ったちょっとしたスペースだ。壁沿いに4つある棚をレジ裏沿いの棚と平台から紹介していく。ここにあるのはマイナーだが知る人ぞ知るマンガだ。『劇画漂流』『怪傑ハリマオ』『刑務所の前』『山上たつひこ選集』『月刊おゆき』『乱歩パノラマ 丸尾末広画集』などである。

 そのまま右を見るとそこも棚。なぜかアダルトグッズが置かれた棚だ。古本屋でラブグッズ。おかしな取り合わせである。アダルトな本が置かれている店は多いがグッズが置いてあるのは初めてである(といっても幾つかが上段に置いてあるだけだが)。そのほかは『夢の終わりに』『舞姫タイス』『エンジェル・アト・マイテーブル』といった単行本のほか、フリスビーやバッグ、Tシャツなど雑貨が並ぶ。

 ここが終わるとレジ裏の左奥の隅にある細い棚に至る。ここは幻想文学の単行本と大判本だ。コリンウィルソン『現代殺人百科』『陳列棚のフリークス』『オカルト生理学』。ほか澁澤龍彦、中井英夫などの本が並べられている。きっと店主が幻想文学を好きなのだろうな、と思わせる品ぞろえである。

 その隣がレジ裏に入ったときに一番初めに正面に見える棚だ。広い棚で映画・音楽・演劇の棚となっている。『ゾンビサーガ』『ロシアアヴァンギャルド』『興行師たちの映画史』『ヒッチコック万歳!』『ソヴェート映画史』『ジョン・コルトレーン』『カールリヒター論』『芸術家起業論』『芸術闘争論』など。

店舗の台形底辺の壁棚(入り口入って右側)

奥から入口側に向けて

 正面棚が終わると店舗台形底辺の壁(入り口入って右側)に至る。ここの壁棚は外に面した窓まで一直線だ。店舗奥側から順番に見ていこう。

 まず、ビニールに吊るされたCD。内容はカウンターと同じだが遊び心を感じさせる。棚には順番に本の本、思想、文学、幻想文学で思想で一列半、幻想文学、文学で一列半、ちくま文庫、ちくま学芸文庫、講談社学術文庫、岩波文庫、岩波現代文庫、平凡社ライブラリー、新書で1列、マンガで2列で最後の棚はミニコミコーナーとなっている。足元には平台がありこちらの並びは積み上げたり並べたりテキトーだ。それぞれジャンルごとに目立った書名を挙げていくと以下の通り。


  1. 本の本:『地獄の読書録』『古本暮らし』『編集狂時代』
  2. 文学:『SFに何ができるか』『小島信夫批評集成』、トマスピンチョン、稲垣足穂、松岡正剛『遊学』、J・G・バラード、ル・クレジオ、バタイユ『眼球譚』、ガルシア・マルケス『族長の秋』、『百年の孤独』『トゥルゲーネフ伝』
  3. 思想:法政大学出版が20冊くらい、雑誌『ユリイカ』10冊、『思想地図β』vol.1、フーコー、バシュラール
  4. マンガ:『センセイの鞄』『アンラッキーヤングメン』『とらわれペンギン』、山本直樹『レッド』3巻セット、手塚治虫、つげ義春、
  5. その他:雑誌『真夜中』、雑誌『風の旅人』
  6. ミニコミ:『雲遊天下』『野宿野郎』『映画時代』『トラッシュアップ』『プロジェクトフクシマ!』

 関西だとガケ書房やスタンダードブックストアにあるようなミニコミがあるのが嬉しい。特にトラッシュアップ。日本唯一のトラッシュカルチャーマガジンらしい。立ち読みしてみたがこれはヒドイ! ゾンビやらグロ系である。でもなぜだか最後まで読んでしまった。あまりお勧めはしないが、怖いもの好きな人は読んでみてもいいかも……。

入り口すぐ右側の棚とCDコーナー

 店舗右の壁棚を見終わり、突き当たって入り口脇の窓沿いには腰くらいまでの本棚とその上にCD視聴コーナーがある。内容はカウンターと同じだが、これをミニコミコーナーのすぐ隣に持ってくる辺りが、筆者がこのお店を好きな理由でもある。客との距離が近いような感じがするのだ。何よりトクマルシューゴがあるしね。本棚は大判本と新入荷コーナーとなっていた。

  1. 新入荷コーナー(2011年12月23日時点):『評価経済社会』『ファイナルクラッシュ』『どうすれば人を創れるか』など。
  2. 大判本:『鈴木いづみ セカンドコレクション』や『東京ロンダリング』『竹久夢二コレクション』『写真 都市風景図鑑』『木村伊兵衛の秋田』『この写真がすごい2008』など。

入り口すぐ横の細い棚

 これで店舗をほぼ一周したことになる。最後に、入口を挟んで対に配置されている細い棚の片方をみてみよう。

 中は「品切れ文庫コーナー」らしい。古本好きには必見のコーナーだ。「気づいて良かった」と胸を撫で下ろしつつ品ぞろえをチェックする。福武文庫、講談社学芸文庫、新潮文庫、ちくま学芸文庫、ちくま文庫、平凡社ライブラリーなどの絶版文庫だ。『日本のアウトサイダー』『ナボコフの一ダース』『落日のモンマルトル』『映画の神話学』など。今回欲しいものはなかったが小まめにチェックしたい棚である。

サブカル好きには堪らない!

 いかがだっただろうか。吉祥寺はほかにも古本屋や面白い新刊書店があるようだが、実はまだここと駅前の古本センターしか知らず。ほかにも行ってみたいと常々思いながらなぜか足はバサラブックスに向かってしまうという……。サブカル好きにはたまらない本屋である。吉祥寺にお寄りの際はぜひ行ってみてほしい。

著者プロフィール:wakkyhr

本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。このほか、電子雑誌「トルタル」や本と本屋とつながるWebラジオ「最初のブックエンド」、本を贈る文化をつくる活動「贈本計画」に参加。「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。ネット書店を近日中に開店予定。

 TwitterのアカウントはこちらFacebookページはこちら


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.