本屋探訪記:大阪茨木のデザインオフィス&ギャラリー&カフェ「グランファブリック」はコミュニティーをつくる

BOOKSHOP LOVER=本屋好きがお届けする詳細な本屋レポ。本屋が好きならここに行け! 今回は大阪・茨木駅近くにある音楽と本のコラボショップ「グランファブリック」を紹介する。

» 2013年12月12日 14時30分 公開
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 今回の本屋探訪記は「グランファブリック」。以前レザーワークショップ@スタンダードブックストアで中川オーナーから教えてもらったので早速行ってみた(以下は2012年1月22日の記録だ)。

まとめ

 分かりやすいよう、始めにまとめを。

  1. 品ぞろえ:「百花の百本。」(books+コトバノイエによる選書)。アーティスト雑貨。zineもある
  2. 雰囲気:アットホームな雰囲気。木造住宅を改装したものなのでくつろげる
  3. 立地:茨木駅東口から徒歩約5分。住宅街の真ん中。知らないと行けない場所

グランファブリック関連のリンク


店まで〜玄関

 JR茨木駅東口から、特に商店街ではない通りを5分ほど歩くと住宅街の真ん中に雰囲気のある町家が見えてくる。そこが、空間デザインオフィス兼ギャラリー兼ブックカフェのある複合施設「グランファブリック」。1階には「cafe百花moka」がある。

 店内に入る前に驚くのが敷地の広さ。駐車場が広く、奥を見てみるとなんと庭がある。訪れたときは冬だったので誰もいなかったが、春や夏にオープンカフェにしたら気持ちが良さそうな場所だ。

 入り口がまた雰囲気がある作りで、どう考えても料亭のようだ。驚きながら中に入るとまず玄関。玄関すぐにはフライヤーと有名クリエイターたちが選書した本。

 クラフトエヴィング商会の『ないもの、あります』やデザイン書、あとなぜか『ロボット三等兵』が置かれていた。

ギャラリー“la galerie”

 玄関すぐの空間を突っ切って真っ直ぐ行くとギャラリー“la galerie”(この日はインドの写真展をしていた)がある。カフェの席が空くのを待つ間にのぞいてみると、作家さんが座って編み物をしていた。この展示は作家さんがインドのラダックという地方を旅したときの記録らしい。そのときに役立ったのが編み物だったようなのだ。人生、何が役に立つか分からないものである。

カフェ“cafe百花moka”

 待つこと15分。やっと席が空いた。案内されて玄関右手の通路を行くとすぐcafe百花mokaだ。

 カフェはテーブル席が4セットで8席。奥にはソファ席があって4席。さらに奥に部屋があり、そちらも8席ほどで大体20席ほどのカフェだ。席と席の間を広めにとってあるのが心地好い。

 席の周囲にはいくつか棚があり、雑貨置き場となっている。もちろん売り物だ。しかもほかのお客さんが店員さんに聞いていたところによると(決して盗み聞きではありません!)、すべてアーティストさんの手作りらしい。

 ネックレスやピアス、革製品、キャンドルなんかもあった。珍しいプレゼントを探しているのなら訪ねてみるのも手かもしれない。

ソファー席と横の壁棚

 奥のソファ席にはすぐ横にオーディオセットとCD。そして壁棚がある。見てみると「百花の百本。」という企画だった。説明書きによると、売上の一部を日本赤十字社に寄付するようだ。百本と言っても壁一面に本があるわけでなく、取り付けた切りっぱなしの木の棚1段分のみだ。

 全部で4段の棚には、最上段がキャンドルや陶器の置物(人体の頭部でした……謎だ)が、2段目は本棚、3段目と4段目は3分の1が本。3分の1がオーディオセットとCD。最後の3分の1がカップやガラス、キーホルダーなどである。

本などの品ぞろえ

 順番に本の品ぞろえを挙げていこう。

 本はアート、デザイン、小説などがメインとなっている。すべて売り物で古本。「books+コトバノイエ」による選書だという。具体的には『定本 ヒッチコック映画術』、植草甚一『知らない本屋を捜したり読んだり』、『茶の湯名言集』『クレーの絵本』『物語ソウル』『生物としての静物』『風の又三郎』、『月刊ビル』、『けもじ写真集home』など。

 このほか、CDが少し置いてあるが、杉瀬陽子「音画」、asana「kupu kupu」など不勉強ながらまったく知らない。オーダーメイドミュージックという面白そうな試みのフライヤーもあった。雑貨の方と同様、作家の説明がいちいち横に書いてある。インデペンデントな作家ばかりであろうこういうお店において、こうした演出は素晴らしいことだと思った。

メニュー

 メニューは席の目の前の厨房の上にある黒板にオススメが、渡されるメニューには定番が書いてある。

 月替りのスペシャリティコーヒーが500円。ブレンドコーヒーが480円。ケーキセットだと100円引きされて大体1000円くらいの値段設定だ。僕はホットゆずティーを注文。480円。寒い冬にはちょうど良い。甘くて暖かくて美味しかった。

全体の感想

 このお店を一言で表すなら「DIYブックカフェ」だと僕は言いたい。木造住宅というローカルな舞台設定に、小さなギャラリーと雑貨売り場で発表の場を用意する。しかも作家さんがいたのでお話することもできる。

 カフェはゆったりとした席配置でソファ席もあり、リラックスできる。横にある本は他のブックカフェと違い、購入が可能だ。僕が行ったときは満席だったが、きっと地元の人に愛されるお店なのだろう。

 ローカルとかインデペンデントといった僕が注目する言葉のイメージに当てはまるような素敵なブックカフェだった。こんなお店。近くにないかなー。

著者プロフィール:wakkyhr

本屋開業を目指す本屋好きサラリーマン。ブログ「BOOKSHOP LOVER」を中心に活動。このほか、電子雑誌「トルタル」や本と本屋とつながるWebラジオ「最初のブックエンド」、本を贈る文化をつくる活動「贈本計画」に参加。「Cannes Lions 2013 Book Project」ではプロデューサーを務める。理想の本屋さんを開くべく本の世界で縦横無尽に活動中。好きな作家はクラフト・エヴィング商会。一番好きな本屋は秘密。ネット書店を近日中に開店予定。

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